【対談】振付師 MAYU × 剣士 竹田秀玄
──時田麻衣がVRタレントとしてリアルを再現する中で、必要なことってなんでしょう?
竹田:ヴァーチャルが実在に近づくためには、「ナチュラル」とか「自然に」といった部分が必要でしょう。パフォーマンスに引かれるときは、「うまい」よりも「あの子いいな」と感じることが多いと思うんです。ナチュラルさを出すことで、「なんかいいな」っていう感覚を作り出せるといいですね。
MAYU:ダンスの視点からいえば、お金も時間がかからないというのはヴァーチャルならではのすごい利点ですよね。例えば、海外にダンスのレッスンを受けに行くっていうことも、すぐにできてしまうのでうらやましいです(笑)。そして、すぐにそれらの技術を取り込んで、うまくなることもできます。
仁平:そうなんです。すぐに上達できるんです。ただ、その半面、らしさが出せないんですよね。竹田さんがおっしゃった「なんかいいな」に通じるものかもしれません。ダンスにも癖ってありますよね? ヴァーチャルだと、そうした癖ができにくいと思います。MAYUさんに教えてもらえれば、そのままMAYUさんの癖がダンスに反映されますけど、いろんな人が教えていくとフラットになってしまいます。きっと「味」っていうのは練習の積み重ねから生まれるもので、そうした部分が欠落してしまうかなと思っています。
MAYU:そうですよね。きっと、その「味」が愛される部分になるんでしょうね。ダンスも、正確にリズムをとると機械的になってしまうので、音どりをちょっと早めにしてわざと早どりにするとか、こちらで癖を作る必要があるかもしれないですね。
──リアルを求めるためには、リアルを作り出す作業が必要ってことですね。
MAYU:はい。それが共感を生み出すものになると思います。
仁平:ダンスや剣舞のように体を動かすものは、その人の個性がより出やすいものですからね。
MAYU:そうですね。ダンスは完璧だとロボットみたいになってしまいます。その人の体の特徴や柔軟性などが加わることで、その人らしさになります。
竹田:剣舞も、腰が高いとか剣の振り甘いとか、そうした癖があります。そして、そういう特徴がある人のほうが目がいってしまうこともあります。だからと言って、「わざと癖を付けてくれ」っていうのは難しいですからね……。
仁平:誰にでもなれるっていうのはヴァーチャルのすごい部分ですけど、人間味という点ではかけ離れてしまいます。個性を出すというのは大きな課題になりそうです。
竹田:その道の方の、癖とかちょっとした所作を取り入れると個性が出るかもしれないです。例えば、私はグラスの持ち方が剣の柄を持つときと同じかたちになってしまうんですよ。そういう「あるある」は共感を生むかもしれないです。
MAYU:ダンサーなら、歩きながら踊っちゃうとか、電車の窓に映ると踊っちゃうとかありますね(笑)。
──あるあるなどのリアルをヴァーチャルで伝えることが、リアリティーにつながるのかもしれないですね。
MAYU:私はダンスだけじゃなくて、動きをアドバイスすることがあります。例えば、PVなどの映像の中で「歩く」という動作があったとき、「自然に歩く」ってとても難しくてできない子もいるんです。だから、そういうときはリアルをヴァーチャルとして伝えているのかもしれないです。
仁平:確かにそうですね。そして、動きだけじゃなくて、そうしたアドバイスのように、知識の部分もヴァーチャルなら反映できるんです。例えば普段できないことを、時田麻衣が実践してできるようになる方法を教えることで、それを「やってみよう!」と思えるような、そんなハードルを下げるものにもなれるかもしれません。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります