最新のAndroid 9 Pie対応のSIMフリースマートフォン「Essential Phone PH-1」がIIJmioと楽天モバイルから発売されました。Androidの父とも呼ばれるアンディ・ルービン氏が立ち上げた米Essential Products製のスマートフォンです。
日本での販売価格は実売5万円前後で、ノッチ付き5.71型液晶、デュアルカメラ、SoCにオクタコアのSnapdragon 835搭載と比較的リーズナブルな印象。ただし、Essential Phone PH-1はほぼカスタムなしのAndroid OSを搭載したシンプルな端末で、どちらかといえば開発者やガジェット好き向けの製品です。そこで今回は、買う前に知っておきたい実際の使い勝手と、発売の経緯を紹介していきます。
なお、記事中の画像は国内販売のブラックムーン(黒)ではなく、海外向けのハローグレイ(黒×シルバー)となります。
海外では2017年8月発売
ノッチ付き液晶と最新Android 対応が魅力
Essential Phone PH-1は、米国で約1年前となる2017年8月に発売されたスマホです。当時は「iPhone X」も未発表で、ノッチ付きのベゼルレス5.71型QHD(1312×2560ドット)液晶を搭載したモデルとして話題になりました。現在では、ハイエンドから低価格モデルまで、数多くのスマホがベゼルレスのデザインを採用していますが、当時はかなり珍しいものでした。今でもEssential Phone PH-1の液晶は高解像度で、ミドルクラスの製品としては標準的な鮮やかさと明るさです。
もうひとつ、日本の開発者やガジェット好きが注目したのが、グーグルのAndroidのベータ版テストに対応し、最新OSをいち早く体験できるうえ、日本で自由に通信できる技適(技術基準適合証明)を取得した唯一のスマホという点です。ここ2年ほど、グーグルはAndroidのリファレンス機である「Pixel」シリーズを日本で発売しませんでした。このため、開発者がAndroidのベータ版や最新版を日本で自由に使うには、日本の技適を取得したEssential Phone PH-1しか選択肢がなかったわけです。
Essential社は製品の発売に合わせて日本の技適を取得しており、2018年4月より直販ストアから日本向け発送に対応しました。2018年7月にVoLTE利用も含めた技適を再度取得したのち、この2018年9月にIIJmioと楽天モバイルから日本国内での発売が開始されたのが今までの流れです。
ただし、この期間内に米BloombergがEssential社のスマートフォン開発が打ち切られたと報道しています。Essential社からは他社製品と連携するIoT機器や、Essential Phone PH-1の周辺機器のアナウンスはありますが、次期スマホがどうなるかについては不透明な状況です。
また、Essential Phone PH-1のAndroidのソフトウェアアップデートは発売時から2年、セキュリティパッチの提供は3年とアナウンスしていますが、これは米国で発売された2017年8月が基準です。これから買う場合は、ソフトウェアアップデートの期間があと1年という点にも注意しましょう。
高い質感と処理性能の高さは魅力
ただし、完成度不足の面もあり
パッケージには本体のほか、USB Type-C用のデジタルオーディオアダプター、USB PD(27W)対応ACアダプター、USB 2.0のUSB Type-Cケーブル、SIMトレー用のピンが付属します。
バッテリー容量は3040mAhで、USB PDによる急速充電に対応しています。付属のUSB PD対応ACアダプターでバッテリー残量0%の状態から充電したところ、1時間で約83%、2時間でフル充電とかなり速く充電できました。また、USB Type-CはPCとのUSB 3.0接続に対応しており、別途USB 3.1/3.0対応ケーブルを用意するとファイルを高速転送できます。
SIMはnanoSIMのシングルスロットで、microSDカードスロットはありません。IIJmioはドコモ回線のSIMでのみ動作確認しています。なお無保証ですが、実際に試したところUQ mobileのマルチSIM(VoLTE)でも通話・通信が可能でした。
Essential Phone PH-1を実際に手に取ると、チタンフレームと背面セラミックパネルの上品な質感が好印象です。横幅71.1mmと、親指フリック入力も可能なサイズ。重量は185gとやや重ためです。水しぶきなどに対応するIP54の防水防じん性能もあります。
背面には指紋認証センサーとデュアルカメラ、本体下部にロゴはありませんがNFCを搭載しています。このほか、右上に周辺機器を磁力で装着して電源を供給するための端子があり、日本だとIIJmioが販売する360度カメラを装着できます。
そのほかの対応周辺機器として、Essential社は6月にESS Technology社のSABRE DACを採用したハイレゾクラスのアンプ「Audio Adapter HD」を発表し、夏以降に発売するとしています。その後のアナウンスはありませんが、期待したい周辺機器です。
サウンド周りの仕様はかなりクセがあります。内蔵スピーカーは響きが乏しく、高音がやや割れたような音で正直いい印象ではありません。USB Type-Cのオーディオアダプターは、本体とオーディオアダプター両方のソフトウェアを最新版にアップデートした状態だと、やや広がりのある音を楽しめます。Bluetoothオーディオは高品質なaptX HDコーデックにも対応しています。
ただし、どの再生方法を使っても、ゲームなどやや高負荷なアプリの操作中にときどきノイズが入ります。今どきのスマホとしてはかなり残念な仕様です。
高性能なSnapdragon 835で
Android 9 Pieがサクサク動く
Android 9 Pieの特徴として、新たに追加されたiPhone XライクなジェスチャーUIを利用できます。従来のタスクキーがない代わりに、アプリの操作中に画面下から上へスワイプするとタスク画面が表示されるほか、ホームボタンを右にスワイプしても操作中のアプリを切り替えられます。なお、「設定→システム→操作→ホームボタンを上にスワイプ」操作から、従来のAndroidのUIに戻すこともできます。
このほか、学習機能対応の明るさの自動設定や高効率なバッテリー管理、通知管理など、Android 9 Pieで追加された数多くの機能を利用できます。ですが、アプリなどの利用時間を管理するDigital Welbeingは、グーグルがまだ正式に提供しておらず利用できません。
処理性能は、SoCに高性能なSnapdragon 835と4GBメモリーを搭載。ストレージは高速なUFS 2.1対応の128GBを搭載しています。仕様やAnTuTuベンチマークなどのスコアは、2017年のハイエンドモデル「Xperia XZ1」「Galaxy S8」とほぼ同等です。最近の高画質3Dグラフィックのゲームも動作します。特にストレージが高速なので、現在のミドルクラスや低価格スマホと比べると、アプリのデータの読み込みやインストール、PCとのファイル転送などは体感できるレベルで高速です。
カメラは価格なりの性能
活用するなら積極的に手動補正しよう
デュアルカメラは1300万画素のカラー+モノクロで、インカメラは800万画素。発売当初の評価は低かったのですが、本体のアップデートやカメラアプリを最新のものに更新すると十分な品質の写真を撮影できるほか、背景ボケや高品質なモノクロ撮影も利用できます。
トレンドの撮影シーン認識や美肌撮影には非対応で、最新ハイエンドスマホのような微妙な光線下で理想的な明るさや鮮やかさに補正する機能はありません。特に、夜景は不必要に明るく撮ろうと感度を上げてしまい、ノイズや白飛びの多い写真になりがち。そういった場合は明るさ補正をやや下げて撮影すると、写真の見た目や画質が改善されます。幸いホワイトバランスはそこそこ正確なので、撮影時は明るさ補正のコントロールにうまくコントロールして撮影しましょう。
ガジェット好きや開発者なら買い
日常利用には不向きかも?
Essential Phone PH-1がおすすめのユーザーは、いち早く日本でAndroid 9 Pieを使いたいというガジェット好きや開発者でしょう。「Nexus 5X」「Nexus 6P」が好みのユーザーの乗り換え先にもオススメです。ただし、秋冬シーズンに入ると「Xperia XZ3」やグーグルが日本向けにも予告している新型Pixelなど、複数のAndroid 9搭載モデルが投入される見込みです。もしEssential Phone PH-1を買うなら、話題性のある今が旬ではないでしょうか。
一方、スマホ初心者向けには、サウンドやカメラ周りの仕様がやや微妙なこともありオススメしにくいです。Essential社にとって初のスマホということで、全体の完成度は決して高くありません。日常の利用よりは、開発用や最新機能を試すセカンドスマホと割り切って買うならアリだと思います。
※お詫びと訂正:記事初出時、背面素材の記述に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2018年10月5日)
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