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HUAWEI Mate 20に搭載のKirin 980 スナドラ845を上回る性能をアピール

2018年09月05日 17時00分更新

 ファーウェイのコンシューマーグループCEO、リチャード・ユー氏はIFA 2018のキーノートスピーチに登壇。10月発売が噂されてきたフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 20」の発表日を10月16日とアナウンス。同機に搭載される新チップセット「Kirin 980」について説明した。

IFA 2018のファーウェイの目玉がこのKirin 980だ

ファーウェイの目玉は新SoC
AIに特化したNPUは2機搭載でさらに性能アップ

 IFA2018のキーノートスピーチに昨年に引き続き登壇したリチャード・ユー氏。2017年は世界初というAIプロセッサ搭載SoC、「Kirin 970」を発表した。今年のキーノートスピーチではモバイル向けチップセットとしては初となる7nmプロセスを採用。デュアルAI(NPU)搭載となる「Kirin 980」を公開した。

Kirin 980を発表するリチャード・ユーCEO

 このKirin 980は10月16日にロンドンで発表が予定されている「HUAWEI Mate 20」に搭載される。なお、HUAWEI Mate 20の詳細スペックに関しての発表は今回はなかった。

HUAWEI Mate 20の発表会はロンドンで10月16日に開催される

 ファーウェイ傘下のハイシリコン製チップセットであるKirin 980は「AIスマートフォンをさらに進化させるSoC(System on a chip)」といえる製品だろう。昨年発表したKirin 970はAI処理を行うNPU(Neural-network Processor Unit)を搭載することで、クラウド側のAIだけではなく端末内でのAI処理が可能となり、端末のパフォーマンスが著しく向上した。Kirin 980はそのNPUを2つ搭載することで、AI処理速度をさらに高めている。

 また、7nmプロセスの採用により、最大20%の高速化、最大40%の省電力化などが図られているという。またベースにCortex-A76コアを採用したことで、Kirin 970(Coretex-A73)と比べても、75%のパフォーマンスアップと58%の電力効率力化を実現する。モバイル向けチップセットということで、速度アップだけではなく消費電力の低減にも注力して開発が進められている。

7nmプロセスによる改善効果

Cortex-A76採用の効果

高性能×2+中性能×2+省電力×4の組み合わせ
Snapdragon 845より37%上回る性能と主張

 CPUの構成は、高パフォーマンスのCPU(Big)と低消費電力のCPU(Little)を組み合わせる、いわゆるBig-Littleアーキテクチャに変わり、さらに中間的な作業に向いたMiddleを組み合わせた、「2 Big - 2 Middle - 4 Little」となっている。

 アプリケーションや作業ごとにより細かくCPUを組み合わせることで、最適なパフォーマンスを提供しながら消費電力を抑える効果をもたらしている。ユー氏はここでクアルコムのSnapdragon 845とのパフォーマンス比較も提示。Kirin 980はSnapdragon 845よりパフォーマンスで37%、電力効率は32%も上回っているとアピールする。

2 Big - 2 Middle - 4 Littleの新しいCPU構造

Snapdragon 845との比較。Kirin 980がパフォーマンスも省電力化でも優れている

 Kirin 980にはGPUを一時的に高速化する「GPU Turbo」も搭載。さらにはカメラの画像処理エンジンであるISPも2つ搭載している。ISPはKirin 970のものより高速化されており、低消費電力化と暗所での性能が高まった。ここでもSnapdragon 845との比較があったが、ゲームでは高いフレームレートでの表示が可能であり、カメラは夜景撮影時の細かい部分の描写性能でKirin 980が上回っていた。

高速なゲームでの性能差

夜景時のネオンサインもしっかり写っている

 NPUを2つ搭載した効果は特に画像処理周りで優れた性能を示す。NPUが1つのKirin 970では静止画のイメージ処理しかできなかったが、Kirin 980では動画の処理にも対応。

 プレゼンでは公園を走っているジョギングシーンの動画から人物を切り出し、それを都市の街中の風景に貼り合わせるデモも披露された。静止画は500枚の画像識別に要する時間が6秒で、Snapdragon 845の12秒の半分。ここではアップルのA11とも比較されたが、こちらは25秒と両プロセッサからさらに時間がかかっていた。

動画をリアルタイムで切り出して背景を合成できる

500枚の画像の識別時間

 Kirin 980の特徴はプロセッサ部分だけではない。モデムも高速化されている。現在、各社のチップセット内蔵モデムはLTEで1Gbpsを実現しているものが増えている。Kirin 970や各社のモデムは3CC CA(3バンドキャリアアグリゲーション)に4x4 MIMOと256QAMを組み合わせCat.18、下り最大1.2Gbpsとなっています。

 Kirin 980はこれにもう1バンドのCAと2x2分のMIMO、256QAMを追加することで最大速度は下り1.4Gpbsと200Mbps高速化され た。このCat.21モデム搭載はKirin 980が世界初とのこと。またWi-Fiも高速化されシームレスなハイスピード環境を提供する。さらには5Gモデム「Balong 5000」との連携が可能で、Kirin 980に後から5G機能を追加することも可能。

世界初の1.4Gbps、Cat.21モデムを搭載

5Gモデムの追加も可能

HUAWEI P20 Proには新色と本革仕様を追加
LTE機能内蔵のAIスピーカーや活動量計も

 このように今後出てくる製品に搭載される新型チップセットの話をした後には、“今”の製品ラインナップの強化についても語られました。まずフラッグシップモデルの「HUAWEI P20」シリーズはDxOMarkでいまだにトップを維持しており、発表から数ヵ月たった今でもスマートフォンとして最高のカメラ性能を誇っている。

 この優れたカメラフォンをさらに多くの消費者に使ってもらうために、HUAWEI P20 ProとHUAWEI P20には新たな本体カラーを追加。大自然とオーロラにインスパイアされたというグラデーションカラーの「Morpho Aurora」と、真珠のイメージという「Pearl White」。

 さらには本革を背面に仕上げた「Golden Brown」と「Elegant Black」の2モデルも用意。こちらはHUAWEI P20 Proの高級版という位置づけで、8GBメモリーに256GBストレージとスペック自体もアップ。価格はオーロラとホワイトが現行モデルと変わらず、本革版が999ユーロ(約13万円)となっている。

Morpho AuroraとPearl Whiteのカラバリを追加、価格は据え置き

Golden BrownとElegant Blackは高級モデルで999ユーロ

 最後にファーウェイ初となるスマートスピーカー「Huawei AI Cube」とGPS搭載のトラッキングデバイス「Huawei Locator」も発表。

 Huawei AI CubeはアマゾンのAlexaに対応し、本体にはLTE機能も搭載。Wi-Fiの無い環境でもAIスピーカー機能を利用できる。Huawei Locatorは一般的なGPSトラッカーとは異なり、低消費電力のNB-IoT方式にも対応する。これにより長時間のバッテリー駆動が可能で、充電切れの心配がない。この2つの製品は発売時期と価格は未定とのことだ。

ファーウェイもAIスピーカーに参入、Alexaをエンジンに選んだ

GSMとNB-IoT対応のHuawei Locator。スマホアプリで位置を確認できる

 リチャード・ユーCEOのキーノートスピーチは一見すると新製品の発表にも見えた。しかし、これからのモバイルデバイスに求められる機能や性能の方向性を、紹介されたそれぞれの製品の中に見ることができたと感じられた内容と言える。


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