「RETISSA Display」は、QDレーザの開発した新しいタイプのディスプレーデバイス。アスキーストアでは、7月31日より予約販売を開始している。三原色からなるレーザー光源の微弱な光と、高速振動する微小な鏡(MEMSミラー)を組み合わせ、網膜上に映像を直接照射する、特許技術のレーザー網膜走査技術「VISIRIUMテクノロジ」を採用している点がRETISSA Displaの特徴。
一般的なアイウェア型デバイスでは、メガネの「レンズ」にあたる部分にディスプレーを組み込んでいる。小型のディスプレーを近距離で見るのと同じ原理だ。このため、ユーザーの視力によっては、使用できないことがある。
RETISSA Displayの場合、フレームに内蔵した小型プロジェクターから、デジタル映像を網膜に直接投影して、その光を直接見ることになる。また、視力や眼のピント調節の機能の影響を受けにくい特徴があり、くっきりとした像をとらえられる点も特徴だ。
社長にインタビュー! QDレーザーの今後の展開は?
本稿では、同社の代表取締役社長である菅原充氏にインタビュー。RETISSA Display開発の経緯や、今後の展望などをきいた。まだまだ新しいデバイスであるRETISSA Displayの、知られざる情報をたくさんお話いただけたので、ぜひチェックしてほしい。
ーーRETISSA Displayの、開発の経緯を教えてください。
「もともと弊社は、『どんなレーザーでも作れる会社』という姿勢でやってきたんですね。用途によって、必要とされるレーザーの色や波長は異なりますが、応用や組み合わせによって、どんなものでも作れる。これを活用して、新しい市場を作っていこう。こういう考えで、半導体レーザーを開発してきました。
その過程で、レーザーを使ったディスプレーを開発していました。レーザーを使ったディスプレーは非常に綺麗ですが、明るいところでは見えにくい。そこで、網膜に直接、映像を投影できないかと考えました」
※視機能が弱く、矯正も不可だが、全盲ではない視覚障害の総称1991年に生まれた技術を応用
ーーアイディアが先にあったんですね。実用化が大変だったのでは?
「低出力のレーザーを網膜に投影して映像を見せる技術は、意外にも古く、1991年にワシントン大学で開発されています。ただ、当時はRGBの半導体レーザーは、当時存在していませんでした。また、装置自体もいまよりずっと大きく、一般利用はむずかしい状況でした。
ところが、2010年代になると、半導体レーザーの分野が急激に発展します。このレーザー技術の発展と、RETISSA Displayー正確には、医療向けにも同じ技術を使っているのですが、メガネ型のレーザーアイウェアを作りたいと考えたタイミングが、ちょうどガチッとハマったのがよかった。タイミングよく、昔からある技術を掘り起こして使ったようなイメージです」
ーーそこから、どのように製品化に至ったんでしょう?
「RETISSA Displayはアスキーストアさんで一般向けに販売していますが、ベースになっているのは、弊社の医療機器向けデバイスの技術なんですね。話が戻りますが、当時『網膜に直接、映像を投影するデバイス』というところから、『ロービジョン(※)の方を救うような機器を作ろう』という方向へコンセプトが進んだんです。
医療向けデバイスとしては、2015年にドイツで医療機器認証を取得の準備をはじめ、国内では厚生労働省とも話し、2016年、2017年とその準備を続け、今年、臨床試験が始まったところです。こちらは現在進行中で開発中です。つまり、RETISSA Displayは、医療機器の開発の過程で生まれた技術を、一般向けに転用したデバイスということになります」
将来はエンタメ分野への進出も?
ーーRetissa Displayの見え方は非常に面白いので、医療以外の分野でも活用できそうに思います。今回は映画の鑑賞会に利用しましたが、現在開発されているというデバイスも、将来的にはエンタメの分野へも進んでいくのでしょうか?
「もちろん想定していますが、まずは医療機器としての開発をこのまま進め、その後は福祉の分野や、企業での作業支援という分野、そして最後にエンターテインメントへ……と考えています」
ーー具体的には、ARなどですか?
「そうですね、いまはディスプレー機能に特化したシンプルなデバイスですが、他の技術と組み合わせたり、デバイス自体もブラッシュアップを重ねていくことで、幅を広げていけると思いますね。より、スマートグラスに近づけたり、通信機能を持たせてみたり……その段階になれば、ソフトウェアを作れる企業とも連携していきたいですね」
ーー今後の展開も楽しみなデバイスですね。本日はありがとうございました。
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