米国で暮らしていると、同じサービスや製品でも、マーケティングに用いられる広告やメッセージがまるっきり異なっていることが多々あります。多くの場合、メディアのアウトレット(広告出向先)でバッサリとターゲットを絞っているような印象を受けます。
ざっくりと言えば、テレビは40代以上、それ以下はモバイルという分類です。その理由は単純で、若い人たちはテレビとの接触時間が短いのです。
2018年第1四半期の「THE NIELSEN TOTAL AUDIENCE REPORT」という調査でも、その傾向ははっきりと現れました(http://www.nielsen.com/us/en/insights/reports/2018/q1-2018-total-audience-report.html)。
米国の成人全体の日々のメディア接触時間に占める割合は、43%がテレビ、16%がラジオ、7%がDVDやゲームなど、6%がコンピューターでのインターネット、21%がスマートフォン、7%がタブレットという結果でした。
しかし18~34歳の人たちは、テレビの割合が26%までぐっと落ち、スマートフォンが29%とトップのメディアになっています。意外とラジオやタブレットの割合は変わらないのですが、ゲームなどは14%に増えています。もはやパソコンもタブレットと同等で弱小勢力なんですね。
そうした結果を目の前にすれば、何かメッセージを伝えるにはモバイルがいいし、アプリがあるのでサービスを提供するにもモバイルがいいということになります。
テレビの場合、広告や情報を知ってから、店舗に出向いたりオンラインで商品を買う、という間接的な行動になりますが、モバイルは適切にリンクを張っていくことで、短時間で購買やサービス提供にこぎ着けることができます。
あらゆるサービスがモバイル化しなければ、相手にされなくなる。そんな時代を物語っているようです。
米大手銀行が仕掛ける「スマホ銀行」
さて8月14日から、シリコンバレーでは2回目となるFintech Week Silicon Valleyが開かれました。3日間にわたり、ブロックチェーン、ディスラプト、ピッチといったさまざまな内容のイベントがあります。ちなみに秋は、ほぼ毎月のようにFintechに関連するカンファレンスやミートアップが開催され、この分野の注目度の高さをうかがわせます。
そんなFintech Weekでも紹介されたのが、米国の大手銀行JP Morgan Chaseが仕掛けたスマホ銀行「Finn」です(https://www.chase.com/personal/finnbank)。2017年10月から米国の一部でサービスが始まっていましたが、2018年6月末から全米に拡大しました。
「All Mobile Bank」というタグラインがついたこのサービスは、すべてをスマートフォンのアプリの中で完結させる設計となっており、原稿執筆時点ではiPhone向けのアプリのみ提供されています。
オンラインから口座を開設しようとすると、App Storeへのアプリのダウンロードを促され、アプリの中で新規アカウントを作成します。そして5分程度で新規口座が設定され、5日程度でデビットカードが郵送されてきます。
とにかく窓口を介さず、すべての手続きをするためにさまざまな工夫がなされています。たとえば今のところは、チェッキングアカウントとセービングアカウントしか機能がなく、チェッキングアカウントで家賃などの支払いに使う際の小切手帳も発行されません。
そのかわり、アプリから直接小切手を発行し、受取人に郵送してくれるサービスが備わっています。それ以外の送金は、米国の大銀行の連合で作ったZelleという個人間送金サービスや、Apple Pay Cash、Venmo、Square Cashなどを使えば良いという考え方です。
銀行の機能としては制限されていますが、窓口に行くこともないので確かにこれで利にかなっている、といえるかもしれません。
ちなみに、Finnの口座はApple Pay、Apple Pay Cashなどに対応しており、Chaseの店舗にあるAMTにiPhoneをかざして現金を引き出せます。このあたりも、狙うモバイル世代を考えれば、当然の対応といったところでしょうか。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります