AR/VR/MRに関する開発者会議XRDCは、年次の「AR/VRイノベーションレポート」を発行した。調査対象はAR/VR/MRの開発関係者650人。
ゲーム・エンタメが圧倒的多数
注力するコンテンツの種類は、2017年同様ゲーム・エンターテインメントが70%を占め1位だった。2017年の78%と比較すると減少傾向にある。一方で、2位の研修・教育は27%→37%、3位のブランド向けコンテンツ(バーチャル家具展示場など)は19%→25%と、2017年から割合を伸ばしている。
HTC VIVEとOculus Riftが人気
コンテンツ制作時にどのデバイスをターゲットとしているか聞くと、HTC VIVEは45%、Oculus Riftは41%。2017年から順位は変動がなかった。
しかし、Gear VRを抜き、ARCore搭載のAndroidデバイスが3位におどり出た。また、ARプラットフォームの隆盛を考慮して2018年から選択肢を追加したところ、グーグルのARCoreは30%、ARKit対応のiOSデバイスは24%、HoloLensなどのマイクロソフトのAR/MRデバイスは17%と、VR以外のデバイスが存在感を示している。2018年夏に出荷したMagic Leapのデバイスも3%から8%へと飛躍的に上昇した。
今度のデバイス市場はHTC VIVEが独占?
次のプロジェクトをどのデバイスに向けてリリースするかを聞くと、Oculus Riftは41%、HTC VIVEは39%、Androidデバイスは24%。2017年の調査では、現在、将来のターゲットデバイスともにHTC VIVEが1位を占めており、今回の変化からは近い将来のデバイス市場の動向が垣間見える。
ターゲットは1種類?
プロジェクトがターゲットとするデバイスが1種類か否か聞くと、2017年に続きおよそ3分の1の回答者が「1種類」と回答。2年前の調査では同割合は21%だったが、2017年に顕著な増加を見せた後は変化していない。
一方で、その対象とするデバイスは、HTC VIVEは16%、Oculus Riftは15%、その他のデバイスは13%。多くの選択肢があるにもかかわらず、その他のデバイスが3位なのは注目すべきだろう。
企業提供の資金は45%
開発資金の出処に関する調査では、企業提供の資金が45%、デベロッパー自身の資金が27%、顧客の資金提供が21%と2017年とほぼ同じ結果に収まった。しかし、比較してみると、2017年よりも企業、デベロッパー自身と回答した割合は増加傾向にある。この結果からは、より多くの企業がVR/AR/MRの開発を継続的な事業であると判断し、自社での資金投入を増加しているとうかがえる。
今回の調査結果では、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの投資は限定的だという事実も示されている(共に約9%)。前年の結果と比較すると、産業の成熟にともない、より外部資金から内部資金へと依存先が変化している傾向がある。
事業が継続するは95%
本事業は継続的に利益を生み出すのかと聞くと、長期的に継続する事業だと考えているのは95%。しかし、現時点ですでに自社や顧客に利益がもたらされていると回答したのは、15%に過ぎない。今後どの程度で収益化するかについての見解は、以下の表のとおり。
2017年の調査では、短期的に収益化するは16%、中期的は39%、長期的は38%。「既に収益化」の選択肢は前回設けていなかったが、回答を比較すると、より「長期的」から「中・短期的」へのシフトが見受けられる。回答者がより市場の健全な成長に確信を持ち、今後短い期間での収益化を予測していると考えられる。「今後全く収益が上がらない」という回答が、2017年の8%からわずか1%へと減少したのも大きな変化だ。
VRとAR、どちらが今後より大きな市場になるかと聞くと、「AR」は75%。長期的な視点で見て、ARのアクセスのしやすさ、利用ケースの多様さ、現実の世界との融合、という点が有利に働くというのが主な理由とのこと。対象者は「ARはリアルタイムに我々の世界と融合できる」や「VRは興味深いものの、形式的で、なじみにくい。大勢が楽しめるようになるには、まだ多くの改良が必要」と回答している。
VR成長しない理由は、盛り上がり過ぎたから?
では、今日にいたるまで、本市場の成長の妨げになっているものは何だろうか。回答からは、今回も多くの示唆を得られた。デバイス価格の高さを指摘する声は、相変わらず一部の回答者から寄せられている。が、その割合は減り、代わりに指摘されたのが、期待が盛り上がりすぎたことや、凝った内容や短命なコンテンツが多すぎることだ。
対象者は「VRの最大の過ちは、魅力的なコンテンツの作り方がわかってくる前に盛り上がりすぎたことです。しかも当時入手できるデバイスは高すぎました」や「安価なカードボード型のヘッドセットでは大したコンテンツをプレイできませんでした。このためにVR技術はひどいものだという意見が出てしまったのです」、「VRの盛り上がりが最高潮に達していた頃に、Oculus Goのような(比較的安価で使いやすいながらも、質の高い体験を実現する)デバイスが必要でした」、「VR/ARデバイスの開発への注力はバランスを欠き、多くのハードウェアが登場したにもかかわらずコンテンツへの注力は貧弱でした」と回答している。
同様に、現在も残る技術的・設計的な課題についての回答からも、多くの気付きが得られる。回答は多岐にわたったが、なかでも体を動かす際のVR酔い、ヘッドセットが重いこと、コストが高いこと、退屈でも凝りすぎてもいないコンテンツの不足などは共通して挙げられた課題だ。
対象者は「VRの中での移動が最大の課題です。手と頭のトラッキング技術は改善しています。しかしVRの中で、没入感をそがれず、かつVR酔いもせず歩き回るのは依然として難しい」や「VR映画製作者としては、最大の問題点はカメラのハード技術、スティッチングソフトウェア技術、ヘッドセットの解像度、これらの技術的な限界だ」と回答。
専門家は「Beat Saber」をイチオシ
専門家らは、どのようなコンテンツに魅力を感じているのか。2017年出たゲームやアプリのなかから、専門家らが最新技術を使い傑出した作品と考えるものを調査した。大ヒットVRリズムゲーム「Beat Saber」などの意見が寄せられる一方で、無重力VRアドベンチャー「Lone Echo」、「BBCのW杯中継」ほか、さまざまなコンテンツが挙げられた。また、ARを使ったゲームとして「ポケモンGO」やVR体験施設「The Void」を推す声もある。
ARデバイス「Magic Leap One」にワクワク
最後の質問では将来への期待を込めて、今後12ヵ月間にかけて最もワクワクしている事項を尋ねた。回答の中で目立ったのは、ARデバイス「Magic Leap One」の動向だ。また一般論として、ハードウェアの一体型化、小型化、そしてより魅力的なコンテンツの登場にも期待が寄せられている。
対象者は「6DoF(位置トラッキングを含む前後左右上下)のトラッキングが可能な一体型ヘッドセットの登場です。これはすべてを変える可能性を持っている」や「技術の進歩によって、どのようにデバイスを小型化し、ワイヤレス化するか。なおかつユーザーを魅了するほどのバッテリー寿命、解像度を備えているデバイスの登場」、「Magic Leapの最近の公表はあまりパッとしていないが、成功すれば市場の流れを大きく変えるだろう」と回答。
XRDC 2018は10月28日~29日、サンフランシスコで開催される。現在公式ウェブサイトで参加登録を受け付けている。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります