AIの出番は?
シリコンバレーの技術開発の1つの柱となっている機械学習や人工知能は、気候変動への対処にどう働くのでしょうか。Colombia University Earth Instituteは、「人工知能は気候変動のゲームチェンジャーになる」との記事を発表しています(https://blogs.ei.columbia.edu/2018/06/05/artificial-intelligence-climate-environment/)。
2016年は世界で772の気象災害が観測されており、これは1980年の3倍に上るそうです。こうした状況に対して、AIによって気象現象の予測の正確性を高めることが可能だと主張しています。熱帯低気圧や前線の活動について、研究者は89%から99%へと予測の正確性を高めることができ、政府機関などの危機管理に役立てる事ができるとしています。
また、電力発電の効率性を高めたり、大気汚染の予測、温暖化による生物種の危機などの予測もなされており、短期長期双方の予測にAIが活躍するとしています。
しかし、予測は予測。じゃあ人間がどう行動するかは別の問題であり、AIはおすすめこそできますが、現状意志決定をするわけではありません。結果的には、AIの情報を行動に翻訳する人の役割が重要だということになります。
政治や行政の世界に対して、科学とテクノロジーを最大限に生かせる素質がある人を送り込めているのか。結局は、各国の有権者の問題に帰結していきそうです。
少なくともカリフォルニアの意志決定者には、テクノロジーを生かす対処を選択する人材が選ばれています。しかし現在の米国のトップは気候変動より自国の貿易赤字解消が優先事項であり、そうした大統領を米国民が選択していることもまた、事実として受け止める必要があります。
では、日本はどうでしょうか?
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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