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Razer Core XとRADEON RX Vagaの強力タッグ

13インチMacBook ProがeGPUで未体験の爆速マシンに

2018年07月26日 12時00分更新

 macOS High Sierra 10.13. 4以降では、Thunderbolt 3ポートを備えたMacで外付けGPU(eGPU)を使えるようになった。もちろん第8世代Coreプロセッサーを搭載したMacBook Proシリーズでも利用可能だ。本記事では、そのパフォーマンスをチェックしていく。

Macユーザーからの注目を集める外付けGPUボックス

 iMac ProやMac Proを除き、Macに採用されるGPUはモバイル向けで、現状では高負荷時のグラフィックのパフォーマンスでWindowsマシンに大きく差を開けられている。とはいえ、GPUを酷使するような最新鋭の3DゲームはDirectXに最適化されており、macOSに移植されないことが多く、MacにハイエンドのGPUを搭載しても、一部の業務ユーザーを除き宝の持ち腐れだった。

 しかし最近では、Adobe Photoshopに代表される画像編集系のソフトウェアなどが、GPUを使ってパフォーマンスを向上させる仕組みを取り入れており、MacでもGPUを有効に活用する環境が整ってきた。

 そんな中、写真や映像を扱うMacユーザーから注目を集めているのが外付けGPUボックスだ。macOS側にドライバーがあらかじめ組み込まれているので、外付けGPUボックスに装着したビデオカードの多くは、ドライバーをインストールすることなくMacにつなぐだけで利用可能になる。

eGPUを接続するとメニューバーに専用メニューが現れる。ここからeGPUの取り外しが可能だ

Razer Core XでeGPUのパワーを実感

 今回はWindowsのほか、macOSを正式サポートしている外付けGPUボックス「Razer Core X」とAMDのビデオカード「RADEON RX580」「RADEON RX Vega 64」、新MacBook Proシリーズを使ってそのパフォーマンスを検証していく。

外付けGPUボックスの「Razer Core X」(税別3万2800円)。macOSで利用する場合の対応ビデオカードは、AMD Radeon RX 570/同RX580/同Pro WX 7100/同RX Vega 56/同RX Vega 64/同Frontier Edition Air/同Pro WX 9100の7種類

Razer Core Xの前面はスリット状のデザイン。背面には、電源ポートと電源スイッチ、Thunderbolt 3ポートが1基とシンプル

Core X本体の背面に備わっているレバーを起こして引き出すと、内部ユニットがスライドする

内部ユニットには空冷ファンが1基備わっている。内部電源 650Wで、GPUに最大で500Wを供給できる

 GPUボックスから電源も供給できるので、電源アダプターを別途接続する必要はない。

「システム情報」(システムレポート)アプリの「電源」の項目。上がMacBook Pro付属の電源アダプター、下がCore Xを接続したところ。Core Xからきちんと電源が供給されていることがわかる

13インチモデルが爆速マシンに変身

 外付けGPUボックスのパフォーマンスはMacユーザーからすると驚愕。実際に外付けGPUボックスの「Razer Core X」に「RADEON RX580」と「Radeon RX Vega64」を装着してテストした。

検証に使ったのは「RADEON RX580」(左)と「RADEON RX Vega 64」(右)

 「Geekbench 4」を使ったMetal(アップル独自の3D描画API)の描画性能を計測したところ、13インチモデルはCPU内蔵GPUの3.4倍超、15インチモデルでも内蔵の独立GPUの2.5倍超の性能を発揮した。これまでCPU内蔵GPUしか選択肢がなく、グラフィック性能を諦めるしかなかった13インチモデルのユーザーにとっては魅力的すぎる性能アップだ。

「Geekbench 4」で13インチMacBook ProのeGPUのMetal性能をチェック。MacBook Pro本体に備わるCPU内蔵GPUである「Intel Iris Plus Graphics 655」に比べて3.7倍以上の性能を発揮する

「Geekbench 4」で15インチMacBook ProのeGPUのMetal性能をチェック。MacBook Pro本体に備わるCPU内蔵GPUである「Intel UHD Graphics 630」に比べて5.4倍以上、同様に独立GPUである「Radeon Pro 560X」に比べて2.5倍以上の性能を発揮する

 「CINEBENCH R15」のOpenGL(汎用の3D描画API)のテストでも、Radeon RX Vega 64を使った場合、MacBook Pro本体に備わる独立GPUであるRadeon Pro 560Xに比べて最大で3倍超の性能アップとなった。

「CINEBENCH R15」で15インチMacBook ProのeGPUのOpenGL性能をチェック。Intel UHD Graphics 630に比べて5.4倍以上、Radeon Pro 560Xに比べて最大で3倍超の性能を発揮する。

 なお、MacBook Pro本体が内蔵する独立GPUのRadeon Pro 560Xより、eGPUのRADEON RX 580のスコアが低いのは、CINEBENCH R15が内蔵GPUとeGPUを切り替えられないことが原因と考えられる。前者が2880×1800ドットの内蔵ディスプレー、後者が4K解像度(3840×2160ドット)の外付けディスプレーで計測したため逆転現象が生じたのだろう。

 このように、注意したいのはグラフィック性能が向上するのは外付けGPUボックスに接続したディスプレー上に限定される点だ。

内蔵ディスプレーのみでeGPUを使うこともできるが、対応するソフトは少ない

外付けディスプレーを使う場合、MacBook Proの内蔵ディスプレーを閉じた状態でもOK

 現在のところ多くのアプリは外付けGPUボックスの利用を想定しておらず、内蔵ディスプレー上でeGPUを使ってグラフィック性能を高速化できるソフトは数えるほどしかない。ただし、アップルはeGPUを利用するためのAPIを公開済みなので、今後のアップデートによって内蔵ディスプレーでもGPUボックスのパワーを利用できるソフトの開発も可能になるだろう。

Adobe Photoshop CCの場合、内蔵ディスプレーのみではMacBook Proの内蔵GPUしか認識しない(上)。外付けGPUボックス+外付けモニターの組み合わせならeGPUを利用できる(下)

Adobe Lightroom CCも同様で、外付けディスプレー使用時のみeGPUを使える

eGPUをフル活用するには、外付けGPUボックスにDisplayPortなどを経由して外付けモニターを接続する必要がある

 Razer Core Xで気になったのは付属のThunderbolt 3ケーブルの短さ。かなり短いので設置場所は苦労するかもしれない。なお、コネクター形状は同じだがMacBook Proシリーズに付属するケーブルはUSB-Cなので、Core Xに接続してもeGPUは使えず充電しかできないので注意しよう。

Razer Core Xに付属するThunderbolt 3ケーブルは短いので取り回しには工夫が必要だ

 また、アップルは現在のところAMD Radeonシリーズのドライバーしか用意していないので、NVIDIA GeForceシリーズに正式対応していない点は残念。macOSでRazer Core Xを利用した場合の対応ビデオカードがAMD系に限られるのはこれが原因だ。

 eGPUにより、15インチモデルに負けないほど爆速化する13インチモデル。Razer Core Xとビデオカードの導入コストは10万円を下回るので、プロはもちろん普段から大量の写真を映像を扱うヘビーユーザーにとって、13インチモデルが魅力的なマシンに確実に変貌した。

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