AppleのApp Storeは日本時間7月11日に10周年を迎えました。米国時間では7月10日なのですが、500本のアプリからスタートし、現在は200万本、そして開発者にはすでに約10兆円の収益を分配するプラットホームに成長しました。
Androidはスマートフォン市場で、85%を上回るシェアを獲得しており、AppleのiPhoneは15%に満たない規模です。しかしApp Storeの売上高はGoogle Playの約2倍で推移しており、アプリ開発者にとって、iPhoneがビジネスの場として重要であることをうかがわせます。
iOS向けApp Storeにラインアップされているアプリはすべて、Appleのデバイスでのみ動作します。iPhoneシリーズ、iPadシリーズともに、Appleが販売しており、Androidのようにさまざまなメーカーのデバイスが揃っているわけではありません。
そのため、iPhoneの仕様の変化とアプリの機能やデザインは密接にかかわっています。
そうした中で、最近、米国のApp Storeには「Does This App Come in Black?」という特集リストが用意されました。ここには、16本の定番アプリが並べられていますが、テーマは黒を基調とした画面デザインが用意されていることです。
リストに入っていて個人的に愛用しているのは、RSSニュースリーダーの「Reeder 3」に、説明不要な「Wikipedia」の2つだけでしたが、手元のアプリにも黒い背景が設定できるアプリはいくつもあります。この原稿を書くのにも使っているエディタアプリ「Ulysses」、Twitterクライアント「Tweetbot」「Twitter」、辞書アプリ「精選版日本語大辞典」、ソーシャルブックマーク「Pocket」(Read It Later)などでした。
液晶から有機ELに
ディスプレイテクノロジーの変化
AppleはiPhone Xで初めて、有機ELディスプレイを採用しました。これまでハイエンドAndroidスマートフォンに採用されてきたこのディスプレイは、薄型化、折曲げの自由度、低消費電力、高コントラストといったメリットがあります。
iPhone XにはSamsung製のパネルが用いられていますが、制御システムによって、画質の担保と弱点であった焼き付きの軽減を実現しました。また液晶から有機ELへと変化しても、これまでのiPhoneと違和感がないトーンを実現するよう努めています。
有機ELはドット自体が発光するため、鮮やかな色、引き締まった黒が特徴となります。液晶との差別化のため、色をよりビビッドに調整する向きもありますが、Appleはそうした派手さを求めなかったようです。
白と黒、どっちが正しい?
一般的に、液晶は白の表示の方が消費電力が小さいとされています。液晶の白はバックライトの光がそのまま通過してくる状態だからです。一方、有機ELディスプレイは黒の表示が小さいとされています。前述のようにドットそのものが発光仕組みで、黒は「消灯」だからです。
黒い画面に薄い文字で時計を常時表示させる有機ELディスプレイ搭載のAndroidスマートフォンも多いのですが、液晶のようにすべてを光らせる必要がないため、バッテリを多く食わないで実現できるわけです。またウェブやメールなどの様々なアプリも、黒背景にした方がバッテリを長持ちさせられるはず。
ところが、Appleは初期設定を、黒背景にはしませんでした。
iPhone Xが登場した際、Appleの担当者に話を聞いてみると、紙を読む体験と参照し、「黒い紙に白い文字で印刷された本や文書はないでしょう?」と説明していたのが印象的でした。確かに、雑誌のカラーページなど一部を除けば、基本的に紙は白、文字は黒です。
デジタルだからと言って、それを反転させる必要はないというのがAppleの主張です。しかも、iPadやiPhone、そして最新のMacBook Proには「TrueToneディスプレイ」という機能を導入しました。これは環境光のホワイトバランスを感知して、ディスプレイのホワイトバランスを自動的に調整する仕組み。例えば白熱球の温かみのある光の中では、ディスプレイの白も黄色っぽく調整されるわけです。
リアルな紙っぽさを再現するほど、白い紙の文字を読む体験を大切にしているなら、背景の標準色を白から黒に変える訳がありませんよね。
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