サンフランシスコで最低時給だけだと
そもそもまともに生活できない?
さて、別の統計も見てみましょう。サンフランシスコで、2LDK(2ベッドルーム)の部屋に住むのに必要な時給は、60ドル/時間とされていました。最低賃金の4倍です。
たとえば週8時間、5日勤務だとして、月給9600ドル。毎月108万円の収入で、サンフランシスコで不自由なく暮らせるというデータが出てきます。
この統計はThe National Low Income Housing Coalitionによる2018年の数字。よく日本でも、家賃は月給の1/3程度などと言いますが、その数字に当てはめた結果、ということになります。つまり2LDKの部屋の家賃の平均は月36万なのです(http://nlihc.org/oor/california)。
では、前述の最低時給と照らし合わせて見ると、15ドルの最低時給の人がサンフランシスコで家族と2LDKで過ごすには、160時間働かなければなりません。平日の5日間で割ると、1日あたり32時間仕事をしなければならない計算になります。つまり成立しえないのです。
そこで登場したのがUberやLyftといったライドシェアサービスです。ユーザーにとってはアプリでクルマを呼んで移動できる自由さをもたらしてくれましたが、働き手にとっては、比較的高収入を確保できる仕事を、今の仕事とは別に追加できるようになったわけです。
以前、Teslaの工場に見学に行った際、「帰りはどうするの?」と聞かれて、「Uberで」と言ったら、「工場で働いている人は結構Uberやってるからすぐ捕まると思うよ」と。クルマでの通勤の帰り道を営業運転に変えて、稼ぎを増やそうという人は少なくないそうです。
ところが、そのライドシェアサービスも、必ずしも稼げる仕事ではなくなっているようです。
The Guardianによると、UberやLyftのドライバーの時給は税引前で8.55ドルが中央値だったとしており、車のリースや長距離を走る車のメンテナンスコストなどを考えると54%のドライバーが最低時給を下回り、8%はむしろ足が出ていると答えていたのです(https://www.theguardian.com/technology/2018/mar/01/uber-lyft-driver-wages-median-report)。
これはいよいよ、人がライドシェアのドライバーをやりたがらず、電気自動車化してメンテナンスコストを下げ、同時に自動運転化する流れが、コストの面からも加速していきそうですね。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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