――もう一度、モデリングの話に戻りたいと思います。TSUKUMOとかこみきさんと言えば、「つくもたん」のMMD対応3Dモデルを作られたご縁もありますね。モデル製作に至るきっかけはどのようなものだったんでしょうか。
かこみき まったくの偶然です(笑)。雑誌にMMDの講座記事があって、その付録につく3Dモデルの製作を何度か依頼されたことがあるんですが、つくもたんはその中の一体です。TSUKUMOさんのPCを買っていることは特に公言していたわけではないので、たまたまお話をいただいた、という感じです。
――モデリングをする際、ここが難しいというところはありますか?
かこみき つくる対象によるところが大きいですね。たとえばMMDだったら、物理演算で動くようなパーツを最終的にきちんと再現できるかなというところとか。納期が1ヵ月あったとして、形状のモデリング自体は最初の2週間程で終わるんですよ。あとの2週間はボーンを入れて、実際にモーションをあてて動かしてみての細かい調整にあてます。依頼をいただいたときも、頭の中で製作をシミュレーションしてみて、自分ではできないな、と思ったときは、悔しいですが素直にお断りすることにしています。あとは、一番大事ですが単純に似せられるかどうか(笑)。
――モデリングをして、テクスチャーを描いて、ボーンを入れてきっちり動かすことまで考えると、相当苦労しそうです。個人的には、テクスチャーを描くのが大変そうだなと思うんですが……。
かこみき テクスチャーは正直あまり得意じゃないのですが、ばれないように努力しています(笑)。個人的には、テクスチャーに頼るんじゃなくて、モデリングの段階で色がなくても質感がわかるようなものを目標に作っています。そこでテクスチャーの技術不足を補えたらいいなと思ってやっています。
――最近はVRも流行していますが、VR用のモデルを作る際、作業に何か違いはありますか?
かこみき 自分としては何も変えていません。ただ、VRになると、本当に立体としてのクオリティーが重要視されます。MMDなどでは平面っぽい顔とかも問題ないと思うのですが、VRだと通用しなくなると思うんです。いかに立体としてできているか、立体として見るに堪えうるものになっているかは、VRコンテンツとして必須の要件ではないかと思います。以前、VRソフトのキャラクターを作ったことがあって、そのときに「Oculus Rift DK2」を3ヵ月くらいお借りして触ったので、自分としてもVRにはすごく興味はあります。なかなか注力する余裕はないですが……。
――いま、VRコミュニケーションアプリやバーチャルYouTuberの流行などもあって、モデリングに手を出す人がすこしずつ増えてきている印象です。現状について、どう思われますか。
かこみき やっぱり、3DCG人口は増えてくれた方が面白いかなと思います。ただ、一般の人達がCGをはじめるには、いろいろな意味でまだまだモデリングソフトのしきいが高い。本格的なCGモデリングソフトって、10万円を超えてくるようなものが多いので、「真剣にやるかわからないものにそこまで投資できない」という人はいると思うんですね。そうなると無料の「Blender」か、安価に手に入る「Zbrush Core」あたりが選択肢になってきます。このあたりで既存のソフトに分かりやすいアップデートがあったり、安価な新しいソフトが出てきたりすると、一気に盛り上がるでしょうね。
私が3DCGモデリングをはじめた頃は、それこそ3DCGブームとでも言えるものがあったんですが、ここ数年はモデリングを扱う雑誌が少なくなってきたり、業界全体としては新規に入ってくる人が少なくなっているのかな、という印象があります。いまのVRブームでどれだけ新しい人を取りこめるのかはまだ未知数ですが、「バーチャルキャスト」のようなソフトが人の集まる空間になっているのは事実ですよね。「知識がゼロの人をどうやってクリエイターにするか」という道筋をわかりやすくするのが大事なのかな、と思っています。「自分のアバターも自分で作るか!」ということがみんな気軽にできるようになるといいですよね。
――今後VR対応のアプリがさらに普及してくることを考えれば、これからモデリングを始めるという人も増えるのではないかと思います。モデリング初心者、MMDやVRなどのコンテンツを始めたいという人に、何かメッセージをお願いいたします。
かこみき MMDに関しては間口が広く、初心者の方にもとっつきやすいと思いますので「どんどん新しく入って来てね」ということは伝えたいです。自分も初心者の方にもやさしいシンプルな構造のMMDモデルを作るように心がけています。MMDもいまは全盛期とは言い難いですけど、完全な初心者の方が入ってこようとするならばMMDが一番いい。普段ゲームで3DCGキャラを動かしている皆さんでも、公開されているモデルとモーションデータを読み込んで躍らせれば、最初はゲームとは違った感動があると思いますし、楽しめると思うんですよ。そこからハマってしまえば、一歩進んでモデル制作をはじめてみたり、モーションを制作してみたり、動画編集にこだわってみたり。いろいろな楽しみ方があると思います。3DCGに慣れてきたら、いずれはVRだとか3Dプリンター出力とかにステップアップしていくことも可能だと思います。
究極的には「作る喜び」みたいなものをいろんな人に感じてもらいたいんです。いまはPCを持ってない方もすごく多くなってますけど、それは非常にもったいないことだなとは常々感じています。スマホだけではできない、PCで何かものづくりをするということはとてもエキサイティングで、楽しいことです。その際は、TSUKUMOさんのPCを買っていただくのがいいんじゃないかなと思います(笑)
――本日はありがとうございました!
提供:Project White
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