先週開催された「Interop Tokyo 2018」の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)のブースでは、IoT通信規格であるSigfoxを用いたパートナーの製品やサービスが披露された。スポーツバイクの盗難防止のほか、鉄道沿線の落石管理やトラクターの横転防止、IoTゴミ箱など地味ながらこれぞIoTという用途で実証実験も進みつつある。
スポーツバイクの盗難防止・追跡をBluetoothとSigfoxの組み合わせで
SigfoxはIoTの通信で注目を集めるLPWAの1方式で、免許不要な920MHz帯を用いて、低価格、省電力、長距離の通信を実現する。日本では、KCCSがSigfoxのオペレーターとして2017年2月からサービスを開始し、2020年3月までには全国展開される予定になっている。年額100円~という料金体系のインパクトもあり、2018年2月には100万回線を突破したという。
こうした好調な導入に拍車をかけるのが、300社を超えるパートナーだ。Interop Tokyo 2018では、こうしたSigfoxのパートナーたちがさまざまなソリューションを展示し、Sigfoxならではの使い方を提案していた。
目立っていたのは、会場中央で展示されていたスポーツバイク専用の盗難防止サービス「Alterlock」。BluetoothとSigfoxの通信が可能な専用デバイスをスポーツバイクに取り付けておくと、スマホのアプリと連動し、自転車から離れると自動的に見守りモードに移行。自転車が振動すると、アラート音が鳴り、盗難を未然に検知できるほか、盗難された場合でもGPSで自動車の位置を追跡できるという。
デバイスもフレームとボトルケージの間に目立たず装着でき、一般的な工具で外すのは難しいとのこと。スポーツバイクの盗難防止に特化したサービスということで、開発したネクストスケープのメンバーもサイクリング好きだという。サービスは2018年10月にリリースされる予定となっている。
トラクターの転倒防止や鉄道沿線の落石管理、IoTゴミ箱まで
青森のジョイ・ワールド・パシフィックが展示していたのは、年間100件近くは起こるというトラクターの転倒を事前に防止するための通報デバイス。トラクターの傾斜角がオーバーし、転倒しそうになっただけではなく、左右独立したブレーキーが連結していない場合にも、Sigfoxで通知を行なえる。また、作業記録としてトラクターの位置情報を取得したり、盗難防止を実現することも可能で、さまざまな利用方法が期待できる。
ジェイアール西日本コンサルタンツと岡本無線電機は、鉄道沿線にある落石を遠隔管理するシステムを披露した。仕組みはシンプルで、あらかじめ管理対象となる岩石に加速度センサーとSigfoxモジュールを搭載したデバイスを取り付け、データを収集するというもの。過去Zigbeeをはじめ、さまざまな技術で試してきたが、低価格・低消費電力なSigfoxの登場で、ようやく現実的になってきたとのこと。
センサーによって岩石の姿勢を定期的に知ることができるほか、衝撃を受けた場合も即時検知できる。実際、実証実験では、管理対象の石が野生動物によって動いたことをきちんと検知できたという。
さらに積水マテリアルソリューションズは、Sigfox搭載のセンサーを設置したIoTゴミ箱を披露した。同社のゴミ箱にセンサーを取り付けて、ゴミの量がどの程度かを調べるというシンプルな製品だが、人手不足に悩む業界での回収の効率化は意味も大きい。今後はコンテナやパレットなどの同社の「モノ」にSigfoxを搭載することで、物流のIoT化を推進していくという。
どのパートナーからもメリットとして共通に聞かれたのは、やはり年額100円~というSigfoxの低料金と電池1つで数年持つという消費電力の低さだ。まさに「モノをインターネットにつなぐ」というIoT本来の利用形態に、低価格・省電力・長距離というSigfoxの特徴がうまくはまっていると言えるだろう。カバレッジを拡大するとともに、今後ともさまざまな業界で利用されるに違いない。
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