以前、「LINEの利用者が高齢化する一方、“若者のLINE離れ”が進んでいるかのように見える」(大人も使うようになったことで、若い人たちがLINEから逃げている)とメディアで報じられ、一時期、ソーシャルメディア上で話題になりました。
LINE株式会社が公開している資料(「LINEアカウント 2018年7-9月期 媒体資料」)によれば、日本では、1ヵ月の間に1回以上LINEアプリを使う人が7500万人以上(2018年3月末時点)。そのうち、1日に1回以上使う人の割合は85%とされています。つまり、少なくとも「6375万人以上の人が毎日、LINEアプリに触れている」のだそうです。
LINEは中学生や高校生などの若い子どもたちだけでなく、大人たちも利用する日本で代表的するコミュニケーションアプリのひとつと言ってもいいぐらい、本当に幅広い世代の多くの人が使うようになったと実感します。
だからこそ、先のような“若者のLINE離れ”という言葉に、なんとなく違和感を覚えた人もいたのではないでしょうか。正直なところ、私は“若者のLINE離れ”をまだ実感できていません。
本当に「若者のLINE離れ」が進んでいるのでしょうか?
先日開催されたイベント「アドバタイジングウィーク」で、LINE株式会社(コンテンツサービス企画チーム)の松田涼花(りょかち)さんが「メディアが騒ぐ『若者のLINE離れ』は本当か?ミレニアル世代が語る若者のSNS事情」と題した講演で、“若者のLINE離れ”について触れています。
ここから、そのヒントを探ってみることにしましょう。
10〜20代のLINEの利用率は高いまま
りょかちさんによれば「“若者のLINE離れ”は2017年10月ぐらいから(ネット上で)言われ始めてきている」のだそうです。
「Snapchat(スナップチャット)が人気になった時に言われたのは『これからはエフェメラルSNS(=投稿した画像や動画が自動的に消える仕組みのSNS)の時代だから、LINEはもう時代遅れ、とか、インスタグラムのダイレクトメッセージ機能で十分じゃない? と言われたことも」(りょかちさん)
しかし、同氏は「統計を見ると若い人たちは普通に使っている」「10〜20代のLINEの利用率は高いまま」と話します。
この根拠のひとつに挙げたのは、総務省情報通信政策研究所が2017年7月に公表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の統計です。
この統計では、平成27年の10代のLINE利用率は77.0%、20代は92.2%、30代は77.8%であったのに対し、平成28年は10代が79.3%、20代は96.3%、30代は90.3%とそれぞれの年代でLINEの利用率は上がっていることを示しています。
さらに、上の年代を見ると、40代は74.5%から74.1%へ下がっているものの、50代は42.8%から53.8%へ、60代は15.0%から23.8%へと上がっています。
全体的にみれば、世代が上の大人たちがLINEを使い始めるようになったのは確かですが、10〜20代の人たちがLINEを使わなくなるような“若者のLINE離れ”となっているようには感じられません。
LINE“だけ”ではなく「LINE“も”使う」使う時代に
さらに、りょかちさんは「自分自身で若い世代の周りの人たちへ調査をしてみても『今もLINEを一番使っている』と答える人が多かった」と言います。
また、中学生の間では、Twitterによるコミュニケーションは使わず、どちらかというとLINEの「タイムライン」でやり取りするか、オフライン(リアルの世界)でのつながりがメイン。高校生になると、Twitterを始める人や、InstagramのStoriesでラフな投稿から友達とのコミュニケーションをするように使い方が変わっていくのだそうです。
おそらく、初めてスマートフォンを持つような中学生のほとんどが最初に始めるコミュニケーションツールはLINEでしょう。
使い始めたばかりのときは、特定の友達とコミュニケーションの手段としてLINEを使っていきます。そのうち、学年が上がり、高校生へ近づいていくと、LINEだけでなく、InstagramやTwitterのような学校内でのコミュニケーションを超えた、不特定の人ともつながることが可能なほかのソーシャルメディアも使うようになるのかもしれません。
だからと言って、InstagramやTwitterを使い始めたからLINEを使わなくなる、のではなく、InstagramもTwitterと同じようにLINEも合わせて毎日のように使うスタイルへと変化していくのでしょう。使い方は変わるからとはいえ、LINEがコミュニケーションの“メイン手段”であることは変わらないこともわかります。
「若者のLINE離れ」と言われる根拠となった理由
そもそも、以前報道があった「若者のLINE離れ」と言われたのは何故だったのでしょう。
その理由は、LINEを利用している世代毎の人数から、LINEを利用している人の総数を割って計算された「LINEユーザーの年代別割合」を前年と比較されたため、だと考えます。
もともと、10代や20代の若い世代の人たちに人気を集めたLINEは、主に同じ世代の友達同士でつながり合うプライベートなコミュニケーションツールとして発展してきました。
これに加え、30代や40代の大人たちもプライベートだけでなく、仕事をする上でも、会社やISP(インターネットサービスプロバイダー)、ドコモやau、ソフトバンクなどの携帯電話会社が提供しているメールやメッセージ機能よりもLINEを使うことが増えています。
さらに言えば、親と子どもだけでなく、祖父母も含めた「世代を超えた家族間の連絡手段」としてLINEを使うほど、いまでは一般的なメッセージツールとしてさまざまな世代の人たちが使うようになりました。
そうなれば、LINEを利用している人の全体的な総数は増えるものの、年代別のユーザー比率がそれぞれ変動します。つまり、前年と比べて必然的に「年代が上の人たちの比率が上がり、若い年代の人たちの比率が下がる」ことになります。
その結果、あたかも「利用者が高齢化」して「若者のLINE離れ」と見えてしまいます。
いまや、LINEは中学生や高校生などの若い世代だけでなく、世代が上の大人たちも利用する日本で代表的なコミュニケーションアプリとなりました。
ですが、どんなサービスでも「誰もが知る人気のサービスの時代」があれば、本当に「“若者の○○離れ”と言われてしまうような時代」を迎えるときは確かにあるのかもしれません。
そのようなことを言われてしまうのはどうしても避けることはできないのですが、LINEが「若者のLINE離れ」と本当に言われてしまうようになるのはまだもう少し先、であるように感じます。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
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