日本時間2018年6月8日16時1分、インテルはCoffee Lake-Sベースの限定CPU「Core i7-8086K Limited Edition」(以降Limited Editionは省略)の販売を開始した。国内での販売価格は5万1800円前後になる見込みだ。
このCPUがいきなり出てきた背景は、現在のPC用CPUの基礎となる“x86アーキテクチャー”の「Intel 8086」を世に出してから今年で40周年だからだ。この40年前のCPUの成功が、現行PCの下地になっているのだ。8086Kという型番はこれにあやかったものであることは言うまでもない。
Core i7-8086Kはすでに発売済みのCoffee Lake-SベースのCPUだが、特別限定モデルだけに動作クロックはTurbo Boost 2.0発動時最大という制限付きながら5GHzを謳っている。Intel 8086のクロックは5MHz、そしてCore i7-8086Kは5GHz、40年でメガ→ギガと単位がひとつ(桁数で言えば3つ)繰り上がったのだ。これを聞いて胸が熱くならない自作erはいないだろう。
今回はこのCore i7-8086Kを短期間ながらテストする機会に恵まれた。電光石火の勢いで発表から発売に至ったこのCPUは、果たして現行のマザーボードで正常に動作するのか、そして気になる性能はいかほどか? ベンチマークを交えて検証する。
TB最大5GHzに到達!パッケージも豪華!
Core i7-8086Kは記念モデルだけあって、パッケージからして豪華だ。Core i9-7980XEと同じ、上下に分離するタイプの箱に入れられており、さらには現インテルCEOであるBrian Krzanich(ブライアン・クルザニッチ)氏のメッセージカードなどが同梱されている。また、Core i7-8700Kと同様にCPUクーラーは別売だ。
では改めてCore i7-8086Kのスペックを確認しよう。一番のウリである“最大5GHz”というスペックは、負荷が1コアに集中した時にのみ発動する極めて限定的な条件下でのもの、という点は非常に重要だ。シングルスレッド性能はゲームなどで非常に重要視されるものの、最近はマルチスレッド処理のほうに傾きつつあるので、いかなるシチュエーションでも5GHzが出るとは限らない。
コア数もTDPもCore i7-8700Kと同じ。さらに内蔵GPUの型番も同一。唯一違うのは定格4GHz、TB2.0時最大5GHzという部分のみとなる。つまり、Core i7-8700Kを製造する過程で見つかった超良品が選別され、Core i7-8086Kとしてリブランドされたもの、といって差し支えない。
そのため、Core i7-8086Kは既存のIntel 300シリーズチップセット搭載マザーボードでそのまま利用できる。ただし、新CPUを使うにはそれに対応したマイクロコードがBIOS側に必要になるため、現段階では“どのIntel 300シリーズチップセット搭載マザーボードでも使える”と断言はできない。筆者が今回検証に用いたマザーボード(GIGABYTE製「Z370 AORUS Gaming 7」)で試した範囲では、今年4月10日付のBIOSバージョン“F6”での動作を確認した。しかし、Devil's Canyonの時もそうだったように、現行BIOSはCore i7-8086Kの電圧などの設定に最適化されていない可能性も十分考えられる。
なぜBIOSの話をしたかと言うと、今回筆者が準備した検証環境では、通常の利用状況下では5GHzという値を確認することはできなかったからだ。マザーボードのBIOS上でもTB時の1コア時倍率は「50」倍と認識されているものの、CINEBENCH R15のシングルスレッドテストや、強引に1コアのみで実行させたPrime 95でも5GHzの値は確認できなかった。マザーボードのBIOSがCore i7-8086Kに最適化されていないなどの原因が考えられるが、原稿執筆時点でメーカー側からの情報は得られていない。
ただ、BIOS上でCPUの物理コアをいくつか無効化することで5GHz動作は確認できた。今回の検証環境の場合、1コア/2スレッド設定にするとほぼ確実に5GHzに張り付けた。それ以上だと急激にクロックが下がり、2コア/4スレッド~4コア/8スレッド設定までは5GHzに“一瞬だけ”到達するという具合。3コア以上の設定では5GHzにギアが入る頻度が急激に低くなるため、CPU全体の電力制限などが足を引っ張っていると推測できる。
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