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エストニア国家技術を使うスタートアップ

業界騒然! 一流企業9社プラネットウェイ発表会にずらり

2018年05月09日 22時00分更新

 欧州消費局長Meglena Kunevaいわく、個人情報はインターネット社会の原油だ。ならば原油の所有権は個人にあるはずだ。GoogleやFacebookなどが個人情報をごっそり抜いて大金を儲ける構造はいびつに見える。IT先進国エストニアの国家技術を日本に持ち込んだプラネットウェイの平尾憲映代表は、個人情報の扱いをまったくちがう形に変えたいと考え、新たな一手を打っている。

 プラネットウェイは9日、東京・虎ノ門ヒルズで新事業発表会を開催。オープンイノベーションプログラム事業、サイバーセキュリティ人材育成事業の2つを発表した。オープンイノベーション事業は本日から、人材育成事業は11月以降に開始する。2つの事業は「データの主権は個人に帰属すべき」という同社のビジョンに由来する。個人情報を便利・安全に使えるインターネット社会を実現するためデータ利活用の促進(便利)、個人情報の護衛者育成(安全)を事業にかかげた形だ。

 現在、企業や団体は保有する個人情報の漏えいリスクを恐れてデータの利活用に及び腰だ。一方インターネットの世界では、本人の知らないところで個人情報が広告やサービスに使われている。このいびつさを解消するのが新事業というわけだ。

新規に発表された2つの事業。オープンイノベーションプラットフォーム「Planet Eco」とホワイトハッカー育成プログラム「Planet Guardians」

 オープンイノベーションプログラム事業は「Planet Eco(プラネット・エコ)」。企業は同社のデータ連携基盤「Planet Cross」、個人認証基盤「Planet ID」を使い、自社と他社のデータを連携させた新サービスを開発できる。たとえば利用者が「医療情報を保険会社に公開してもいいですか?」というスマートフォンの通知を見て「はい・いいえ」を選択する。データをやりとりすることで、面倒な書類のやりとりを電子化できるようになるといったサービスだ。対象領域は以下の4分野。

●対象領域
・ヘルスケア、メディカル
・不動産、スマートシティ
・金融、フィンテック
・自動車、シェアリング

 サイバーセキュリティ人材育成事業は「Planet Guardians(プラネット・ガーディアンズ)」。ホワイトハッカーおよびセキュリティ人材の育成プログラムを提供する。プログラム作成にあたる同社の担当役職員には、NATO在籍者や、国際警察機関のセキュリティアドバイザーがいるという。

●カリキュラム(例)
・ウェブ
・ワイヤレス
・データマイニング
・ソーシャルエンジニアリング
・IoT
・ブロックチェーン
+サイバー空間における実地演習

 この発表会が大きく注目されたのは、同社のプロジェクトにパートナーとして、あるいは協賛として参画すると表明した9社の顔ぶれによるところも大きい。同社のパートナー企業/協賛企業は大手3銀行を含む9社。発表会では各社の取締役級役職員が登壇して同社を絶賛した。

●登壇者一覧
・三井不動産 北原義一 代表取締役
・東京海上日動火災保険 稲葉茂 常務取締役
・アクセンチュア 江川昌史 代表取締役社長
・三菱UFJ銀行 林尚見 常務執行役員
・三井住友銀行 谷崎勝教 取締役兼専務執行役員
・みずほ銀行 大櫃直人 執行役員
・日本ユニシス 小西宏和 常務執行役員
・大日本印刷株式会社 蟇田栄 専務執行役員
・凸版印刷株式会社 麿秀晴 専務取締役

「革命を起こすのは最初は常に少数派だ。そういう意味で平尾さんは世界の人々の未来、地球の未来まで考えてなんとか変えたいと本気で考えている人。いわば異端児といって過言ではない。異端の平尾さんのある種の狂気をもった理想主義を応援したい。オープンイノベーションなど、現代は“オープン”が合言葉になっているが、実態はまだまだ超クローズド。本日参列しているみなさまが、オープンマインドで新しい次の世界の幸せに向けてわれわれの時代ができることを行動していく時ではないかと思う」(三井不動産 北原義一代表)

「大切なお客様のデータを預かるのが金融機関の役目。そのためには競争と協業の両立をきっちり分けて考える必要がある。日本のITシステムはいろんな分野で勝手に発展してきた非常に複雑で難しいもの。これを変えていくのは非常にチャレンジング。本日登壇されているみなさんと一緒に日本の未来を変えていくためにやっていきたい」(三井住友銀行 谷崎勝教専務)

「これだけ同業や業種をはさんだコンペティターが壇上にいて、間違いなく1社だけではできないことなので、一緒になって知恵を出し合ってひとつのプラットフォームのようにつくりあげていって、グローバルな競争力をもった形にブラッシュアップしていけたらいい」(凸版印刷 麿秀晴常務)

 これだけ一流の異業種あるいは同業企業が、1社の新規事業発表会に顔を揃えるのもすごいことだが、それらの企業が足並みをそろえて1つのプロジェクトを推進していくという試みは日本では異例のことだ。

三井不動産 北原義一 代表取締役「革命を起こすのは常に少数派」

東京海上日動火災保険 稲葉茂 常務取締役「福岡での実証実験をご一緒して、それを発展させて2つの新規事業を発表したということで大きく期待している」

アクセンチュア 江川昌史 代表取締役社長「プラネットウェイのシステムをインフラとして、アプリをつくってデジタルトランスフォーメーションを進めていく」

三菱UFJ銀行 林尚見 常務執行役員「労働生産性あるいは諸課題の解決策をつくれればと思っていたところ、平尾さんのビジョンを熱く語る姿に感銘を受けた」

三井住友銀行 谷崎勝教 取締役兼専務執行役員「これからは個人がみずからのデータを信頼できる先に利活用を託してうまく利用することで便益を個人が享受する世界になると考えている」

みずほ銀行 大櫃直人 執行役員「数あるイノベーション企業の中、グローバルで戦えるのはほんのひとにぎり。プラネットウェイはそんな企業だと考えている」

日本ユニシス 小西宏和 常務執行役員「古来日本人のもっている、素敵な人と人が助け合う事業をやっていきたい」

大日本印刷株式会社 蟇田栄 専務執行役員「21世紀に入ったころより、安全性をどう保つかという心配はより増えている。有用な情報が個人に戻ってくる社会を一緒につくっていきたい」

凸版印刷株式会社 麿秀晴 専務取締役「情報発信、ビッグデータという話はよく聞くが、生活者が発信元でメリットを享受するのが本質」

 また、発表会ではエストニアIT・企業大臣Urve Palo氏も登壇。「エストニアと日本のハイブリッド企業であるプラネットウェイによってエストニアの国家技術を民間登用されることを嬉しく思う」と話し、システムが日本から世界に普及することへの期待を語った。同社のデータ連携基盤「Planet Cross」はエストニアの「X-Road」、同じく個人認証基盤「Planet ID」は「Citizen ID」を基に日本向けに作りかえたもの。平尾憲映代表は日本をショーケースとして新たなインターネットのしくみを世界に普及させたいと語った。

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