ハイエンドモデルはモニター指向から音楽指向へ
4月28日と29日の2日間、中野サンプラザで開催された「春のヘッドフォン祭2018」。試聴して印象に残る製品を紹介していきたい。
ヘッドフォン全体の動向としては、ハイエンドの主流が、定番であるゼンハイザー「HD800」とbeyerdynamic「T1」のようなスタジオモニター系の音から少しシフトしていることを感じた。
モニター系のヘッドフォンは固有の音色を排して、録音された音楽を忠実に再現することを目標に設計されていた。これが第二世代になると、やや音楽性が取り入れられるようになった。モニター指向であってもコンシューマ用なので、音楽のアラを暴き出すよりも、音楽を楽しめるエッセンスが加わってきた。
その結果がゼンハイザー「HD800S」であり、beyerdynamic「T1 2nd Generation」である。最新モデルの「HD820」がどうなったか気になるところだ。
この傾向は平面駆動型に及んでおり、Meze Audio「EMPYREAN」やMrspeakers「VOCE」の登場により、平面駆動の新製品だから音場感重視でフラットで、見晴らしが良くて、スッキリした音とは限らず、設計者の個性が反映される製品が増えつつある。
ミッドレンジでは、ヘッドフォンもイヤフォンもBluetooth対応のモデルが増加中である。対応コーデックがAACとaptXだけでなく、aptX HDとLDACの両方に対応するモデルも登場。今後、上級機はこの両対応が増えるに違いない。aptX HDとLDAC両対応のエレコムのMMCX端子対応Bluetoothケーブル「LBT-HPC1000RC」の登場はタイムリーであり注目すべき製品である。この高音質化の流れはBluetooth対応スピーカーにも派生していくと私は予想する。
耳の個性に合った音を
これとは別の試みで、スマホのアプリと連携し、自分の左右の耳の特性を厳密に測定して周波数特性をフラット化するヘッドフォンも登場した。
Audeara「A-01」とbeyerdynamic「Amiron wireless JP」である。ヘッドフォン祭には出品されなかったがCESに登場したnura「Nuraphone」という製品もある。また有線モデルにはDAC内蔵でデジタル接続のAKG「N90Q」があり、デジタル信号とDSPを利用した新たな高音質化が試みられている。今後、ハイテクが得意な日本メーカーの参入に期待したい。
イヤフォンに関してはハイエンド機が多ドライバー化するのに対して、2Way2ドライバーでもいいじゃないかというアンチテーゼとなるJH-AudioとAstell&Kernの「BillieJean」。あるいは2Wayハイブリッドで充分という製品がミッドレンジに増えてきた。
ダイナミック型ならシングルドライバーが当然なので、このような現象はおこらないが、現在、流行中のユニバーサル型のイヤモニはBAドライバーを採用するため、平面駆動型も含めてマルチドライバーやハイブリッド構成など多種多様だ。バリエーションが増えて、ユ-ザーは選び放題なのだが、その反面、どれを選べばいいのか判断が難しくなってきている。
また、近年、BAドライバーの小型化が進みハウジングも小さくなって、ユニバーサル型でカスタムイヤモニに迫る装着性を実現している。音質的な優位性を別にすれば、わざわざカスタムを作らなくてもいいかと思わせるほど快適に装着できる。今後、イヤフォンはさらなる快適性を追求して、完全独立型Bluetoothモデルとユニバーサル型イヤモニが主流になると思う。
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