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mineoによる「通信の最適化」はユーザーを納得させられるか

2018年05月08日 16時00分更新

 ゴールデンウィークを挟んで、mineoが通信の最適化問題で「炎上」しています。これまでファンを中心に「なぜかススメたくなる」MVNOとして口コミで拡大してきたmineoが、大きくつまづく形となりました。

mineoはCMだけでなく実際の満足度やNPSスコアも非常に高いことで知られている。

 一方で、その「最適化」の中身はMVNO各社を悩ませる動画トラフィック対策となっており、mineoだけにとどまらない問題という印象です。

増え続ける動画対策としての「トラフィック最適化」

 5月7日にはmineo責任者の上田晃穂氏が謝罪し、技術的な説明が公式ブログに投稿されました。

 この中で注目したいのが、HTTPS通信も対象にできるというトラフィック制御技術です。HTTPS通信は暗号化されており、その中身を見ることは(企業が社内で導入するSSLプロキシなどを除いて)通信事業者でさえ不可能です。

ASCII.jpからHTTPで画像を取得した例。ヘッダーやファイル内容が見えており、通信事業者が手を加えようと思えば技術的には可能だ。

HTTPSになると、鍵交換後のやりとりがすべて暗号化されるため、なにをやっているのか一切分からなくなる。

 この中身が見えないHTTPS通信も含めて制御しようというのが、「トラフィックコントロール装置」です。他社の例では、2017年9月にNTTコミュニケーションズが「OCNモバイルONE」に導入。2018年3月の報道関係者向け勉強会で、その詳細が語られました。

NTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」におけるHTTPSペーシングの説明。

 OCNモバイルONEの場合、HTTPSは通信全体の5割を占め、YouTubeなどが使うUDPベースのQUICも全体の2割に達しているとのこと。その大半は格安のモバイル通信で需要の高い、動画のトラフィックとみられています。

 そこでトラフィックコントロール装置は、暗号化されたHTTPS通信のサイズや流量のパターンから動画かどうかを判定し、パケットの送信ペースを調整する「ペーシング」機能を備えています。

 ペーシングが有効な状態では、動画の先読み(バッファリング)がほどよい速さになり、途中で再生をやめたときに破棄される無駄なバッファが減ることになります。ユーザー視点では容量の節約につながり、MVNO全体では限られた帯域を分け合うことで、より多くの人がそれなりの速度で同時に通信できるものと期待できます。

 一方、HTTPSのスピードテストでは2Mbps前後に制限されているとの指摘も出ています。局所的に帯域を大きく使いたい場合でも速度が出ないことや、mineoの説明のように動画かどうかの判定を装置が誤る可能性などが、デメリットとして存在するようです。

 通信の秘密との兼ね合いについては、mineoは弁護士と相談しているとしており、OCNモバイルONEでも総務省と相談しながら慎重に進めていると説明しています。

ユーザーが納得する「最適化」に期待

 最近のMVNOを取り巻く環境はますます厳しくなっています。大手キャリアが低料金プランで反撃に出たことで、MVNOにはさらなる「格安」が期待される一方、経営面ではMVNOにも黒字化が求められる時期に来ています。

 こうした状況の中、増え続けるモバイルの動画需要をいかに捌いていくかがMVNOの生命線になっており、そこで編み出された施策がトラフィック最適化といえます。

 ただ、今回の騒ぎが大きくなった背景には、通信の秘密の侵害という観点もさることながら、ユーザーが「最適化」の中身をよく知らされていなかったことにも原因があります。メリットとデメリットの分かりやすい説明があれば、大多数のユーザーが最適化を受け入れるのではないでしょうか。

 逆に、モバイル回線ではほとんど動画を見ないという人も一定数いるはずです。暗号化されているため困難とは思われるものの、動画が見られない代わりに安くて速い回線が実現すれば、面白い差別化になるのではないかとも思います。

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