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PR TIMESがメディア「THE BRIDGE」の事業譲受を発表

2018年04月19日 11時35分更新

 プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営するPR TIMESは2018年4月19日、THE BRIDGE運営のITスタートアップメディア「THE BRIDGE」を事業譲受したことを発表した。「THE BRIDGE」の運営はTHE BRIDGE共同創業者の平野武士氏が続投し、スタートアップの最新ニュース配信、コミュニティーイベント「Lab.」の開催はこれまでどおり継続する。さらに「PR TIMES」との連携企画など、新たなスタートアップ支援サービスを展開していく予定だ。

 これまでもPR TIMESとTHE BRIDGEは、2015年2月に業務提携、2016年1月には資本業務提携し、協働関係を築いてきた。そこから業務譲受にいたった経緯、PR TIMESが目指すPR・メディアのカタチについて、PR TIMESの山口拓己代表取締役社長と「THE BRIDGE」の平野武士氏の両者に話を伺った。

THE BRIDGE共同創業者の平野武士氏(左)とPR TIMES 山口拓己代表取締役社長

「THE BRIDGE」のメディア価値の拡大へアクセルを踏み込む

「THE BRIDGE」は、2010年6月に起業家と投資家をつなぐスタートアップ向けのコミュニティーイベントからスタートしたブログメディアだ。しかし今日、ブログだけでなくメディアを事業として運営していくのは難しい。情報配信の仕組みは大きく変わってきており、従来型のメディアやライターのビジネスモデルは通用しなくなりつつある。

「私自身が起業家を取材して書くことは変わらず続けていくことはできるが、経済的な合理性をなかなか見出せなかった。その答えをもっていたのがPR TIMESさんでした。2016年1月に資本参画していただき、いっしょに答えを見つけようと取り組んでいましたが、中に入ったほうがもっとスピーディーにできるだろう、と今回の事業譲渡のカタチとなりました」(平野氏)

平野武士氏。TechCrunch Japan、CNET Japanなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年に「THE BRIDGE」を共同創業。株式会社THE BRIDGE代表取締役を務めた

 PR TIMESは、2007年の4月からプレスリリースの配信サービスとして事業を開始した。当時はプレスリリース配信サービスの利用者は、大企業が中心。メディアが記事として取り上げる対象は、大企業、もしくは人気がある企業に限られていたからだ。それは、新聞やテレビなどスペースの限られるメディアだけでなく、ネットメディアも同じ。労働集約型のビジネスモデルであったため、大企業が優先され、ベンチャーが取り上げられることは少なかった。

「私たちのビジネスモデルでは、大企業だけではなく、スタートアップをはじめとする、いろいろな会社にPRの機会を提供することが事業の拡大につながると考えています。プレスリリースをメディアが活用しやすくする仕組みをつくり、さらに一般の生活者にも新しい興味を発見する機会としてコンテンツを公開し、より多くの人に情報をシェアしてもらうことが大事です」(山口氏)

 PR TIMESはスタートアップの支援策として、設立2年未満のスタートアップ向けに無償でプレスリリース配信を利用できるプログラム「スタートアップチャレンジ」を2015年から提供している。この過程でTHE BRIDGEと業務資本提携し、プレスリリースの転載、THE BRIDGEのイベント協業などを行なってきた。現在、設立2年未満の企業の登録が累計3200社以上にのぼり、全体の利用企業数2万2000社のうち、スタートアップの利用は順調に伸びている。また、2017年に国内の証券取引所で上場した企業90社のうち40社がPR TIMESを利用していたそうだ。

「会社設立から上場に至るまでの過程にPR TIMESが貢献できたのは、THE BRIDGEとの業務資本提携が背景にあったからだと実感しています。そこで、この先さらにTHE BRIDGEを社会に役立てるためには、アクセルが必要と考えました。私たちが一緒にやることで、THE BRIDGEのメディア価値の拡大に踏み込みやすくなる。それは、我々の事業の遠い要因として、シナジーがあると考えています」(山口氏)

山口拓己氏。東京理科大卒業後、山一証券に入社。アビームコンサルティングなどを経て、株式会社ベクトルに入社し、取締役に就任。2007年にプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を立ち上げ、2009年に株式会社PR TIMESの代表取締役社長に就任

 山口氏のいう”遠い要因”は、直接的にはわかりづらいが、スタートアップメディアの活躍とプレスリリースの相乗効果は、いくつかの事象から見てとれるという。

「たとえば、数年前からスタートアップのプロダクトのローンチに、プレスリリースが使われるようになってきました。また、資金調達のプレスリリースが行なわれるようになったのもここ数年のこと。THE BRIDGEをはじめとするスタートアップメディアが取材することで、新しい読者のニーズが生まれる。すると、発信するニーズが高まり、その発信手段としてPR TIMESを選んでもらえればいい」(山口氏)

THE BRIDGEの読者層を広げ、新たな起業家創出へ

 今回の事業譲受を機に、THE BRIDGEは従来のスタートアップ企業の調達速報やコラム配信などに加えて、いままで記事として取り上げきれなかったストレートニュースを「PR TIMES編集部」として配信していくという。

「THE BRIDGEには約1万4000本の記事があるが、じつは検索が弱く、過去のコンテンツが埋もれてしまっている状態。これらをきちんと整理していきたい。PR TIMESのもつ配信ツールを活用して、的確に相手のニーズに合った情報を提供し、いままでTHE BRIDGEを読んだことがない、起業を考えていなかった方にも広く届けて、気づきを与えられるようにチャレンジしていきたい」(平野氏)

スタートアップの牽引役になるメディアとしての役割

 平野氏は、2010年のTHE BRIDGEの創刊以前より、長くIT系スタートアップに注目してきた。スタートアップとそれを取り巻く業界の変化をどう見ているのだろうか。

「スタートアップのトレンドとしては、2010年にDGインキュベーションが開催したアクセラレーションプログラム「Open Network lab」が登場したのが大きい。それから8年のあいだに起業するための方法がフレームワーク化された。結果として、多数の企業が誕生し、スタートアップという言葉も認知されていった。その一方で、起業することが形式的になり、新しいチャレンジがなくなってきたように思います。そこに必要となるのが新しい情報であり、それを提供する我々の責任。視点を変えた情報を提供しきれていないことが、一番の問題と考えています」

 いまは、すべての人がスマホを手にあらゆる情報を操る時代だ。世の中の環境は大きく変わったのに、メディアや書き手側の環境だけが何も変わっていない。テクノロジーに順応した人は、情報をビジネスに変える方法を考えている。いまだにメディアが取り残されているのは、つくる側の怠慢かもしれない。

「投資する側も起業する側も成功すれば儲かる。しかし、媒介する側は儲からない。とはいえ、このままメディアが衰退し、ライターがいなくなってしまうと、彼らは知ることができなくなってしまう。伝える側の役割やビジネスモデルはあまり考えてこられなかったが、書く側がメリットをもち、継続できる環境づくりは必要です。みんなが読む大きなニュースだけが大切なわけじゃない。ニッチであっても、必要とされる人に質の高い情報が適切に伝わる仕組みをつくっていきたい」(平野氏)

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