連載のタイトルは“西海岸”ですが、今回は米国中部にある大都市、イリノイ州シカゴからお届けします。Appleは3月27日、教育向けのイベント「Let’s take a field trip」をこの地で開催し、Googleに対抗する教育向けのデバイスとサービスを披露しました。
発表された内容を簡単に振り返ると、新型iPadの発表、iWorkアプリのペン対応、学習管理システム「Schoolwork」発表、クリエイティブを日々の学習に取り入れるカリキュラム「Everyone Can Create」の4点に絞られます。
新型iPadについては、教育市場に限らず、大ヒットするでしょう。2010年に登場し、2012年にRetinaディスプレイ化を果たした9.7インチiPadのユーザーに与えられた、初めての「買い換え動機」となり得る製品だからです。
またEveryone Can Createは、パワフルに生まれ変わったiPadを教室で選ぶ理由と結びつくカリキュラムです。クリエイティブを「美術」の授業に押しつけるのではなく、道具として身につけるべきで、これをストレスなく学べるデバイスとしてiPadの価値を高めていくことになります。
今回最も注目すべきはSchoolwork
教育市場で優勢のグーグルに対し、セキュリティ面に強み
またSchoolworkは、メールを介さず、先生と生徒が教材や課題、レポートなどをやりとりすることができる学習管理アプリで、いわば教室向けのグループウェアといえるでしょう。
生徒にアプリの特定のセクションをやるよう課題を出したり、その進捗を先生が一覧することができます。また生徒がレポートをPagesなどで作成していれば、作成中の課題を先生が見て、Apple Pencilを使って、リアルタイムでコメントを書き入れることもできます。
教室内で進行する授業でのライブなやりとりを前提とした仕組みと見ることができますが、Schoolworkの最大の特徴は、メールを使わず実現できるところです。つまり学校向けに無料でメールアカウントを配っているGoogleの「G Suite for Education」を利用しなくても良くなります。
FacebookやGoogleなど、ユーザーの行動やデータを広告価値に変えて成長している企業に対して、アメリカではプライバシー保護の側面からネガティブな反応が巻き起こっています。それに対してAppleは、できるだけデータを自分の端末に保ち、先生との間でしかやりとりをしない仕組みを提供することで、セキュリティ面を懸念する学校や保護者にとっても、選びやすくなったのではないでしょうか。
今回の発表会は高校で開催
Appleはカリフォルニア州クパティーノにApple Parkを開き、昨年のiPhone発表イベントは、その中にあるSteve Jobs Theaterで開催しました。しかし今回は、シカゴの、しかも高校で開催するという予想外のイベントとなりました。
Lane Tech Collage High Schoolは、4年制の高校で、古い建物が印象的です。まず校長室の前に設けられたエリアに通され、スポーツ大会のトロフィーも多数展示されているのを見ましたが、中には戦前のものまでありました。ちなみにそのロビーで音楽を鳴らしていたのはスペースグレイのHomePodです。
廊下では、当日のスタッフがずらっと一列に並んでいる様子に出くわしました。グリーンのパーカーやトレーナーに黄色の帽子をかぶっています。これらはLane Techの学校のカラーだそうで、この日のためのコスチュームでした。
基調講演が行なわれたのは講堂です。ステージにはオーケストラピットがあり、また2階席やバルコニーまである立派な場所でした。そして製品のハンズオンは用意されず、音楽室でのクリエイティブアプリのデモと、理科室での1時間の授業、というアクティビティが用意されていました。
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