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IoT&H/W BIZ DAY 5 by ASCII STARTUPレポート

CES・SXSWだけじゃない!海外スタートアップイベントが熱い

2018年04月09日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元、柳谷智宣

 2018年3月22日、IoTやハードウェアのブース展示&ビジネスカンファレンスイベント「IoT&H/W BIZ DAY 5 by ASCII STARTUP」が開催された。そのなかで実施したセッションB「海外イベントから見える2018年先端トレンド&日本発の海外挑戦動向」の様子をお伝えする。

CESのエウレカパークが熱い! 注目はスリープテック

 2018年のスタートとともに、世界中でさまざまなIoTやAIに関するイベントが開催されている。本セッションでは、ラスベガスを始め、バルセロナやオースティン、パリなどに参加・出展した日本企業のリアルな話が紹介された。

 登壇者は4名。きびだんご株式会社代表 松崎良太氏は、クラウドファンディングのプラットフォーム「Kibidango」を手がけ、日本の事業者の海外進出支援などをしている。日本貿易振興機構(ジェトロ)知的財産・イノベーション部 イノベーション促進課 課長 奈良弘之氏は、1年半前までのおよそ5年間、イスラエルでスタートアップの動向を見てきたそう。現在はスタートアップの海外展開支援を行なっている。

 FutuRocket株式会社 CEO & Founder 美谷広海氏は、以前cerevoで海外イベントに出展していた。半年前にスタートアップとして起業し、日本とフランスで活動中。アクアビットスパイラルズ 代表取締役CEO 萩原智啓氏は、海外でのピッチや出展の経験が豊富で、今回4YFNというイベントにジャパンパビリオンとして共同出展している。モデレーターはアスキーの北島幹雄氏が務めた。

きびだんご株式会社代表 松崎良太氏

 まずは、2018年のCESとSXSWのレポート。CES(Consumer Electronics Show)は世界最大級の家電見本市として有名だが、現在はコンシューマー向けだけでなく先進技術の見本市のようになっており、2018年のデジタル業界を占うイベントといって過言ではない。

 CESはとにかく規模が大きく、全体で3900社が出展している。会場も3つに分かれており、メイン会場はラスベガスコンベンションセンター。インテルやIBM、日本の大手メーカーなどが巨大なブースを出している。しかし今回、松崎氏はメイン会場に足を踏み入れてないという。

 「メイン会場には一切行きませんでした。今回お話しするのは、エウレカパークという第2会場についてです。ここには900社が所狭しとピッチをしていました。最近特に注目なのが、フランスの躍進です。フランス政府も後押しして、ハードウェアスタートアップがどんどん進出しています」(松崎氏)

 松崎氏は、CESに3回行っており、年々成長している企業が目に付くという。さらに、クラウドファンディングプラットフォームも盛り上がっているそう。昨年「Kickstarter」はブース案内しか出していなかったが、今年はスタジオを設けて色々なスタートアップに話を聞きながらライブストリームをするほどになった。

 「AIや自動運転もあるのですが、私が面白いなと思ったのはスリープテックという新しいカテゴリーです。センサーの価格が下がったので、脳波を測りながら、そこに対してtDCS(Transcranial Direct Current Stimulation)で微弱電流を脳に刺激を与えて、リラックスしたり集中できるようになりました」(松崎氏)

 エウレカパークに出展している企業の特徴として、大手企業だとリスクがあってできないことにチャレンジするスタートアップが多いとのこと。「これ面白いけど副作用ありそうだよね」というプロダクトがここで生まれ、3~4年後に大手が真似し始めるという流れがあるそうだ。

世界最大の家電見本市CESの様子をレポートしてくれた

第2会場となるエウレカパークの様子を紹介

一度はクラウドファンディングから撤退したプロダクトが、別の形で復活

イーロン・マスクへの生質問! 量子コンピュータが熱くなっていたSXSW

オースティンで開催されるSXSW。街全体がお祭り騒ぎになる大規模イベントだ

SXSW2018の見所

 SXSW(South by Southwest)は1987年に音楽祭としてスタートしたイベントだが、映画も扱い、1998年からはインタラクティブとしてネット技術も扱うようになり、2014年以降はゲームなども含まれるようになった。トレードショーでの出展ブース数などはCESと比べると少ないが、期間中はアメリカのテキサス州オースティンの街全体がお祭り騒ぎとなり、総セッション2000超、10日間で20万人以上を集める規模となっている。

 実は、SXSW2018ではIoT関連のネタは3~4件しかなかった。北島氏は、IoTはスマートホームやインダストリアルなところに吸収されたと見ている。

 「今年SXSWで個人的に気になったネタは、量子コンピューターへの注目、イーロン・マスク登壇、SXSWアクセラレータ、トレードショー展示などです。SXSW全体の規模も上がったこと、マーケティング系などより分野が増えて、一般の人も楽しめる形に広がっているように感じます。特にアメリカの文化と密接に絡んだイベントなので、マイノリティーについてのセッションなども増えた印象です」(北島氏)

 日本には量子コンピューターのスタートアップは少ないが、米国では多数あり盛り上がっているそう。

 「セッションとしては、『Science Fiction to Science Fact』で量子コンピューターがSFから現実になっているという話が紹介されました。IBM、テキサス大学、そして量子コンピュータのスタートアップ関係者によるセッションで、実証実験はすでに始まっていて、今はアルゴリズムの精度を上げたり、アプリを作ろうとしている話が語られていました。もう1つは、IEEEで量子コンピューターのチェアマンをしているWILLIAM HURLEY氏のキーノートです。こちらでは、AIの次のビックワードとして、量子コンピューターが取り上げられました。AI気象学や高分子解析、暗号理論なども含めて、これから世の中がドラスティックに変わっていくというネタがわかりやすく紹介されました」(北島氏)


 さらに、SXSWアクセラレータで注目のスタートアップとして、ICON社が紹介された。3Dプリンターで家を作るというものだ。12~24時間で完成し、コストは1万ドルと格安。来年にはエルサルバドルに実証実験として100軒建造される予定だという。


 イーロン・マスクが質問に直接答えてみたセッション。各種セッションはウェブで音声公開されているものもあるので、興味があればチェックを。

 気になる日本勢の様子はというと、例年と同様気合いの入ったブースが展示され、高い人気を集めていたという。このきっかけになった「飛躍 Next Enterprise」について奈良氏が解説してくれた。

 「『飛躍』プログラムは、2015年に安倍首相がシリコンバレーに行ったときに、日本のスタートアップを海外に送り込むことを目的としたものです。SXSW以外にも、シリコンバレー、シンガポール、イスラエル、欧州があります。日本でうまくやっているスタートアップが海外に進出しようとする際、背中を押すスキームとして位置づけています。SXSWでは、ジェトロがやっているビジネスマッチングとはまったく違って、まずはみなさん自信のあるものを出していただいて、反応をみてもらうという、いわゆる市場調査をしてもらいます。実は、イベントに出てから競合他社の製品がることに気がつくことも多いのです」(奈良氏)

日本貿易振興機構(ジェトロ)知的財産・イノベーション部 イノベーション促進課 課長 奈良弘之氏

例年通り、日本勢のブースは力が入っており、人気となっている

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