筋電義手「handiii」で知られるexiiiは、VRのオブジェクトに”触れる”、“つかむ”感覚をリアルに再現する触覚ウェアラブルデバイス「EXOS」を開発。2018年2月28日より「EXOS Wrist DK1」、「EXOS Gripper DK1」の2製品を法人向けに受注販売を開始した。既存のVRデバイスやコントローラーと組み合わせられ、製造業の3D CADデータによるデザインレビュー、シミュレーション、VRゲームコンテンツなどへの応用が期待される。今回、現段階のデバイスとサンプルプログラムを体験させてもらった。
exiiiは、2016年に筋電義手の開発をNPOに移管し、現在はVR用の触覚デバイスの開発に取り組んでいる。Oculus RiftやHTC VIVEに代表されるヘッドセット型のVRデバイスは視聴覚の情報のみで操作するコントローラーは存在するが、触覚がないために体感シミュレーションとしてはもの足りなさがあった。「EXOS」は、今までは見ているだけだったVRに触れるようになるデバイスだ。
デバイスの中にはモーターが入っており、高速、精密に制御して力を加えることで、実際にモノを触った感覚が得られる仕組みだ。開発環境としてUnity用のSDKを提供し、既存のVRコンテンツに触感を追加できる。
オブジェクトを指でつかみ、動かせる
グローブ型の「EXOS Gripper DK1」は、握ると開く方向に力を加えられる。VR空間のモノをもった瞬間に力を加えることで、実際につかんだような感覚が得られる。
既存のVRコントローラーと同時に使える手首装着タイプ
手首装着型の「EXOS Wrist DK1」は、2つのモーターを内蔵し、前後、左右方向に力を加えることで、VRオブジェクトに触る感覚を再現する。モノに触れた(ぶつかった)ときの衝撃を手のひら全体で受け止めることで、存在感がしっかりと伝わるのが特徴だ。また、手首に装着するため手が自由に使え、アタッチメントの交換でVive Controller やOculus Touchなど既存のVR用コントローラーとの同時使用が可能だ。
開発中のCADデータに手で触れて確かめられる
この技術を製造業向けに活用したものが“CADデータに触れる”デザインレビューシステムだ。自動車業界では、デザイン検証にモックアップを製作するが、1台当たり数千万円かかるため、ごく限られた回数しかつくれない。そこで日産自動車では、2017年からVRを導入し、設計の早い段階での検証に活用している。VRを使うと、設計中のCADデータの中に自分が入り込み、運転席の目線でインテリアデザインを確認できる。さらに触感デバイスを使うことで、ハンドルやバックミラーの高さはちょうどいいか、ダッシュボードのボタンは押しやすい位置にあるか、といった検証がしやすくなる。
製造業のデザインレビューのほか、住宅の内装シミュレーション、バーチャルトレーニング、シューティングゲームなど、さまざまな分野への活用が考えられる。今回は法人向けの受注販売だが、一般向けの販売も視野に入れているとのことだ。
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