2018年3月7日、デジタルアーツは同社実施の「未成年者と保護者のスマートフォンやネットの利活用における意識調査」の結果を発表した。それによると、未成年者の携帯電話/スマートフォン所有率は90.8%で、うち小学生は74.3%と2年前から約2倍に増加。ネット上の知り合いと実際に会ってみたい、もしくは会ったことがあると回答した人は子ども全体で50.4%。一方で、ネット関連事件について、自分が当事者になると思ったことがあるかという質問では、親が52.3%、子どもが59.2%だった。
ネットの事件は増え続けているが、危機意識は薄い
同調査は、携帯電話やスマートフォンを所有する10~18歳の618名と、0~9歳の子どもがいる保護者618名、計1,236名を対象に、2018年1月に実施したもの。2011年11月から定期的に実施しており、今回が11回目になる。
携帯電話/スマートフォンの所有率が9割と高い一方で、購入時にフィルタリングの説明を受けたと回答した子どもは全体の37.5%と、前回調査から11.5%減少。ネット関連事件の当事者意識の低さ含め、「ネット上で知り合った人との間に起きた事件は他人事と捉え、危機意識が薄い」とデジタルアーツの吉田明子氏は分析する。
今回の調査で特に目立ったのは、利用者の低年齢化と女子高生の使いこなし方だ。
利用者の低年齢化について、兵庫県立大学の准教授、竹内和雄氏は2014年に兵庫県猪名川町で実施した携帯電話やタブレットの所有に関する調査を紹介。小学3年生で26.6%が携帯電話を所有、22.9%がタブレットを所有と回答したという。
「彼らの親は、中学生あたりから携帯電話を使っている携帯ネイティブ世代。同町は新興ベッドタウンで核家族が多く、固定電話を引いていない場合は連絡手段として子どもに携帯電話を早い時期から与える。そんな子どもたちは、いわば携帯ネイティブ2世。そんな世代の3年後と考えれば、今回のデジタルアーツの調査結果とリンクしているように見える」と述べた。
女子高生の使いこなし方については、今回の調査によると“本アカ”(表向きのアカウント)以外に趣味や愚痴など用途別の“裏アカ”を持っていると回答した子どもは全体で39.6%。一方の女子高生は68.9%で、39.8%が「2~5つ持っている」と回答。理由は、「趣味が合う仲間と深くつながれるから」が女子高生ではもっとも多く(53.5%)、「会ってみたい」または「会ったことがある」と“リアル化”を望むとしたのは67.6%。実際、ネット上の友達について知っていることは、「住んでいる地域」(73.0%)、「年齢・生い立ちや家族構成・家庭環境」(62.6%)、「顔・容姿」(58.6%)、「本名」(41.9%)と続いた。
大阪の女子中高生に利用実態を聞いてきた竹内氏は、裏アカの「死にたい」というつぶやきは「疲れた」という程度の意味を持つものから、かまってほしいという気持ちの両方があり、リアル化についても自分たちなりの基準で、怪しいと思ったら会わないなどの対策をとっていると述べる。しかし、昨年11月に神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件では、容疑者は被害者を物色する際にTwitterで「死にたい」といった投稿をしている人を標的にし、誘い出して殺害している。未だに「#死にたい」でつぶやけば、相談に乗るから会おうというリプライが即時につく状況。それなりに気をつけてはいるだろうが、危うさは残ると竹内氏は指摘する。
危険回避のヒントは“コミュニケーション”
対策はあるのか。ポイントは2種類の「コミュニケーション」だ。
1つは、親子のコミュニケーション。今回の調査で、困ったときの相談相手は誰かという質問に対して、子ども全体で1位だったのが「母親」(63.6%)で、3位に「父親」(33.7%)が挙がった。身近な相談相手として、友達よりも保護者が選ばれたことに竹内氏は驚きながらも、コミュニケーションは子供たちを危険から守る重要な要素と指摘。利用アプリのフィルタリングをする場合も、たとえばデジタルアーツの「i-フィルター for Android」や「i-フィルター for iOS」であれば、子どもがどうしても使いたいと思ったときは利用ブロック時に表示される画面でブロック解除申請を出し、保護者が判断することができ、関係作りの一端を担う機能のあるものを利用するのも手だとした。
もう1つのコミュニケーションは、先輩から後輩にリスクを伝える方法だ。竹内氏は、兵庫県立姫路飾西高等学校の学生が同校を受験する中学生とスマートフォンの使い方を話し合う取り組みや、関西学院中高等部の高校生が中学生にフィルタリングについて説明する取り組みなどを紹介。親よりも年齢の近い先輩の話の方が受け入れやすいこと。そして、ただ保護者に守られるのではなく、先輩と一緒に危険回避の方法を考えることで、自律して行動できるようになると竹内氏は推奨する。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります