桐朋女子高等学校音楽科2年在学中、16歳でチェルニー=ステファンスカ国際ピアノコンクール第1位を獲得した須関裕子のデビュー作。昨年、寺下真理子のリサイタルで、伴奏を務めていた時の好演が記憶に残っている。
さすがは音にこだわるマイスターミュージックの制作だ。音場と音像のバランスがとてもよく、眼前にあるような臨場感で聴ける。第1曲「ラ・カンパネラ」は、音色的な華麗さと、ハイレゾ的なヌケの良さ、高解像感が素晴らしいが、加えて、それらがいかにもな人工色ではなく、とてもナチュラルであること、音場は深みがあるのに、鍵盤感や音の立ち上がり/下がりが明瞭で、音像が適切なサイズにまとまっていることなど、録音エンジニアの仕事にセンスの良さを感じる。須賀のピアノはレガートの優しさが心地良い。
FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit
WAV:96kHz/24bit、192kHz/24bit、DSF:5.6MHz/1bit
マイスターミュージック、e-onkyo music
『シューマン:交響曲全集』
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン
カラヤンがスタジオでセッション録音した唯一のシューマンの交響曲全集。さすが豊潤演出のカラヤンらしく、実に豪華な響きだ。第1番「春」の冒頭がまるでブルックナーのように大器量に始まり、フレーズごとに濃密な表情を付与していく。
まさにカラヤン節全開のこってりシューマン。
日本の春のごとく、ゆっくりとグラテーションを持って冬から春に変わるのではなく、ドイツの春のように五月に入って突然、すべての花が同時に咲き始め、あらゆる花の香りが濃密にミックスされるという衝撃的な春だ。第3番「ライン」も急流に次ぐ急流で、船は大揺れだ。1971年、ベルリン、イエス・キリスト教会で録音。
DSF:2.8MHz/1bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
『Debussy: Preludes II』
マウリツィオ・ポリーニ
今年はドビュッシー没後100年記念年だ。今後、ドビュシー関連の新録がぞくぞくと登場する予定だが、その先駆けが本アルバム。最新作だけあり、目が覚めるような超優秀録音だ。第1曲「霧」の低弦と高弦で同時に弾く旋律部分の音色的な分離と同時に、融合度も非常に高いことには、感動する。
ドビュシーの細やかな非和声的な独特の響きの世界をハイレゾはクリヤーに、感情豊かに描写する。ドビュシーの和声は、オーセンティックな周波数の倍音的整合性を無視した、独特の響きの不思議世界。ポリーニはそのレゾナンスの綾と記号性を非常に明晰に聴かせ、現代のハイレゾ録音がそれを見事に捉えている。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
ホリー・コールは私のオーディオ評論にはなくてはならない歌手だ。CD「『Don't Smoke In The Bed』の第1曲「アイ・キャン・シー・クリヤリー・ナウ」は、評論活動には必携。この曲でこの数十年、どれほどの機器を聴き、チェックしたか、計り知れない。
そんなホリー・コールの新作『NIGHT』がDSDとPCMのハイレゾで登場。
DSDを聴く。1曲目I'm Beginning to See the Lightは、DSDらしく丁寧で、人肌感覚で、グラテーションが豊かなサウンド。冒頭のトロンボーンの音からしてヒューマンタッチにしびれる。輪郭の鋭さで聴かせるのではなく、内実の階調的な充実が伝わってくる。ボーカルは突き放すような、けだるさの感情表現とニュアンスのテクニックがホリー・コールらしい。
音像は、適切なマウス(口の)サイズで、正確なセンター定位。バックとのバランスも良い。カナダのレーベル2xHDの現代的で、麗しい音作りにはいつも感心する。もともとは48kHz/24bitのデジタル音源をいったんアナログに変換し、次にデジタルに換え352kHz/24bit(DXD)でマスタリング。それをDSD2.8MHzに書き出した音源だ。複雑なプロセスを辿っていることが認識されない実にクリアなもの。
FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit
WAV:96kHz/24bit、192kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit、5.6MHz/1bit、11.2MHz/1bit
2xHD、e-onkyo music
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