新事業創出カンファレンス & Connect!
始動、飛躍 経産省のベンチャー、オープンイノベーション支援の成果
グローバルで勝つためのベンチャー支援策をさらに強化
経済産業省は、オープンイノベーションの推進とベンチャーエコシステムの確立を目指すイベント「新事業創造カンファレンス&Connetct!」を2018年2月22日に開催した。
グローバルで勝てるベンチャーの起業と育成には、支援環境の整備が重要だ。経済産業省では、既存の大手企業とベンチャー企業の提携やM&Aなどオープンイノベーションを促進し、新事業の創出を図るために「ベンチャー創造協議会」を2014年9月に設立。「新事業創造カンファレンス&Connetct!」は、その活動の一環として2015年1月に初開催され、今年で4回目となる。
カンファレンスでは、経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 室長補佐 羽端大氏より、「日本のベンチャーエコシステム構築加速化に向け」と題した講演を実施。最新のベンチャー政策の動向と今後の取り組みについて語った。
ベンチャー企業はここ4年間で急増 集中支援で成長をさらに加速
最初に、経済産業省の進めるベンチャー政策の全体像について紹介された。
経済産業省のベンチャー政策の全体像として、1・意識改革、2・スキル向上、3・事業化、4・成長促進――の4つのフェーズがある。
第1フェーズの意識改革としては、挑戦をたたえる社会意識を形成するための表彰制度「日本ベンチャー大賞」の設立や、文科省と連携した起業家教育などに力を入れている。「日本ベンチャー大賞」は、日本を代表するスタートアップのロールモデルを作っていくことを目的に、ベンチャー関係の表彰制度では初めての内閣総理大臣賞として2014年度より創設されたものだ。受賞企業以外にも、さまざまなスタープレーヤーと呼べる多数のスタートアップ企業が育ち、2013年以降、国内の上場ベンチャー企業の時価総額は、右肩上がりに上昇している。
これに連動し、国内だけでなく、グローバルで勝てるようなスタートアップ企業の育成をさらに加速するものが、第2フェーズ「スキルの向上」の「人材の架け橋」プログラムだ。これは、2015年に安倍総理が現職の総理大臣として初めてシリコンバレーを訪問した際に、シリコンバレーのエコシステムと日本のエコシステムをつなぐことで、イノベーションを持続的に創造する仕組みを形成する「シリコンバレーと日本の架け橋」プロジェクトの一環としてスタートした。
第3フェーズでは、育ったイノベーターが事業展開する際にかかる資金・税制面でのサポート、第4フェーズでは、既存企業とベンチャーとの連携を促進する「企業の架け橋」など事業を成長促進するためのさまざまな取り組みをしている。
「人材の架け橋」と「企業の架け橋」
2つのプログラムで起業家を育て、大手・中堅企業とつなぐ
続いて、人材の架け橋、企業の架け橋について、具体的なプログラムの内容が紹介された。
人材の架け橋プログラム「始動 Next Innovator」では、全国の優秀なイントレプレナー、大企業の私企業担当者、社内起業家を全国から募集し、国内のVC、先輩起業家が講師・メンターとなり、徹底的にトレーニングを積む。国内での5ヵ月間のトレーニングを経たのち、特に優秀なビジネスモデルをもつ20名を選抜し、シリコンバレーに派遣。現地のVC、起業家との面談、あるいは大学での2週間のプログラムを通じて、グローバル目線でのビジネスを創出できるイノベーターを育成する。2015年にこのプログラムをスタートして、これまで360名強の卒業生を輩出している。
企業の架け橋プログラム「飛躍 Next Enterprise」では、技術力・ビジネスモデルの優れたベンチャー企業を募集し、シリコンバレーをはじめとした世界のイノベーション拠点へ選抜・派遣していくプログラムだ。2017年度は、シリコンバレー、シンガポールのキープレイヤーとのマッチング、オースティンのSXSW、ドイツ・ベルリンのDisrupt、フィンランドのSLUSHへの出展支援、イスラエルのエコシステムプログラム(YLP)の体験提供など、さまざまな分野へ企業を派遣している。
始動の参加者は、15年度・16年度の2年間を合わせて400名弱の雇用、80億超の事業予算を獲得。16年度に開始した飛躍では、資金調達は51億円、海外での法人設立や販路の開拓が進んでいる。
なお、来年度の始動&飛躍プログラムは、夏頃の開始を予定している。
新しい経済政策パッケージでは量産化、海外展開の支援、海外ベンチャーの呼び込みを強化
来年度は、これまで集中的にしてきたプログラムをさらに加速するため、新しい経済政策パッケージが閣議決定されている。
具体的な取り組みとしては、1・優秀な起業家から「特待生」を選び、官民で集中支援し、2・大企業・サポーターのリソースをつなぎ、3・グローバル展開を支援するとともに、4・世界のイノベーターの国内への呼び込みを強化し、エコシステム構築の加速化を進めていく予定だ。
企業のもつデータをつなぎ、多分野に応用できるAIシステムを共同開発
続いて、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 雨宮大地氏が登壇し、「Connected Industries実現に向けたAIシステム共同開発の推進」をテーマに講演を行なった。Connected Industriesは、2017年3月に経済産業省が発表した、日本の産業が目指す新コンセプトだ。
Connected Industries実現のカギとして注目されているのが、AIシステムの開発だ。個々の企業やのもつさまざまなデータをつなぎ、ビッグデータとして有効活用することで、技術革新、生産性向上、技能伝承など、あらゆる課題の解決が期待できる。
具体的な取り組みとして、2017年10月に開催された「東京イニシアティブ2017」にて、集中取り組み5分野についての方針が発表されており、今年度の補正予算では、24億円規模の大型の事業となる予定だ。
【参考:「Connected Industries」東京イニシアティブ2017】
AIシステム開発支援としては、これまでのコンセプト検証や実証実験にとどまらず、ビジネスとしての本格導入まで支援していく。事業拡大のカギとなるのが、多くのデータを有する大手・中堅企業とAI技術をもつベンチャーとの連携だ。
この際、AIシステムが従来のような請負・受託型で個別カスタマイズした場合、ほかの企業や分野への転用できなくなることが危惧される。これを避けるため、AIベンチャー側に資金を提供することで、システム開発や知財の取り扱いの主導権をベンチャー側にもたせられるような支援を検討していく、とのこと。
AIシステムで業務を改善したい大手・中堅企業、AI技術をもつベンチャーは、ぜひConnected Industriesにまつわる取組を活用してほしい。
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