自宅内のスマートスピーカー同士のイス取り合戦
素晴らしいHomePod。しかしながら我が家に居場所がないとはどういうことか。単純に、置く場所がなかったということです。 我が家のリビング、書斎、ベッドルームには、それぞれWi-Fiに対応するSONOSのスピーカー3種類が設置されています。リビングではテレビにつながっており、その他は独立しておかれ、iPhoneアプリからApple Musicなどのストリーミングサービスを直接再生できます。
BluetoothスピーカーとiPhoneは相性が悪く、音楽を再生しているiPhoneに着信があったり、カメラが起動したりすると、音楽が途切れてしまいます。そのため、Apple Musicに入ると決めた2年前から、Wi-Fiで直接ストリーミングできるスピーカーとして唯一の選択肢だったSONOSに切り替えました。
その結果、HomePodを置く部屋がもう残されていなかったのです。
ケータイ世代的には、よりパーソナルなスペース、つまりケータイの待受画面を思い出します。コンテンツプロバイダは、ケータイの顔とも言える待ち受け画面という特等席を奪い合うべく競争してきました。アプリになってホーム画面に入るかどうかの競争へと緩和された感があり、その感覚を少し忘れていました。
ところが今度は、テクノロジーが住んでいる空間に拡がるようになり、リアルな場所で同じような「特等席の取り合い」が繰り広げられ始めたのです。
ケータイの待受画面はデジタルながら物理的な領域という、なんとも面白い場所でしたが、今度は完全に物理的な領域を、さまざまなデバイスが奪い合うのです。
スピーカーは部屋に2つも3つも必要ありません。というと、ステレオスピーカーやサラウンドスピーカーがあるので語弊がありますね。また電球だって、いくらでも増やせるわけではありません。玄関のドアも1つだし、スマートキーやドアベルがそこに3つも4つもついていたら、正直なところ自分の家に「罠」が仕掛けられているような感覚に陥ります。
それを言ったら家電は一家に1台が基本なわけで、それ以外に居住空間に設置しうるモノは何か? というのがスマートホームのデバイス販売の面から見たアイディアです。際限なく広い家がない限り、増やせる量は決まっているし、リプレイスするとしても数が限られます。これは、スマートホーム普及に速度がつかない理由そのものかもしれません。
Appleは最良な製品に仕上げるために、他社が取り組む何年も前から開発をはじめ、性急なリリースを延期してHomePodを送り出しました。もちろん、まだスマートスピーカーを設置していなかったiPhoneユーザーにとっては、最適な選択肢と言えます。
でも、やっぱりアーリーアダプターを意識して、2年早く出してほしかったというのが、非常に個人的なHomePodに関するすべての感想です。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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