メーカー、製造業の日本企業の中でIoTを活用した取組みをしていない企業はもうほぼいないのではないでしょうか? 実際に日常生活の中であらゆるものがインターネットと接続される未来は近くに来ている感じがしますし、製造業においても工場やプラントなどの生産性向上や故障、ダウンタイムの事前検知などを目的にIoT化を進める動きを目や耳にする機会も増えてきたように感じます。
また一方で、IoTに限らず新規のビジネスを開始、加速する際に、自社だけではなく他社や研究者などと連携をすることによって取り組みのスピードアップを図るオープンイノベーションの手法が、2017年を通して一般的になってきました。
そこで今回は、日本企業とイスラエルIoTスタートアップの連携可能性について、2018年1月末に弊社Aniwo主催で開催したイスラエルのIoTスタートアップイベントの開催模様を交えてお伝えできればと思います。
イスラエルスタートアップからの日本市場への期待
2017年のイスラエルスタートアップのEXITの総額は230億ドル(うちIntelによるMobileyeの買収が15.30億ドル)で、そのうち大半がM&Aなので引き続き世界中の投資家、グローバル企業の注目を集めている状況に変わりはないと言っていいでしょう。
またイスラエルのスタートアップへの注目は日本国内でも徐々に高まっており、IoT領域でいえばソニーによるイスラエルの半導体メーカーAltair Semiconductorの買収や、ソフトバンクとイスラエルの3DイメージングセンサースタートアップのVayyarの協業などが発表されています。
その背景には「B2Bのビジネスモデル中心で高い技術を保有していることが多い」、「国内マーケットが小さく、グローバル展開のために他社との連携に積極的であること」などといったイスラエルのスタートアップの特徴があります。イスラエル企業の日本市場に対する期待や優先順位は、欧米中国に比べると一般的には低いですが、IoTやインダストリアルIoT(IIoT)の領域では、日本をものづくりの国だと認識し、連携に積極的な姿勢を見せるイスラエルのスタートアップが多いです。
私が昨年クライアントと訪問したイスラエル企業の中でも、たとえば、超音波センサーとAI技術を用いて産業機械の故障の事前検知ソリューションをワンストップで提供する3DSignalは、日本の製造業への導入や連携に期待をしていました。
3D Signalsの公式ページより
イスラエルIoTスタートアップと日本企業の連携可能性
イベントは、オープンイノベーションプラットフォームを運営するcrewwのコミュニティースペース「dock-Toranomon」をお借りして開催し、大手企業の方を中心に80名を超える方にご参加いただきました。イスラエルのIoTスタートアップについて私からの簡単な講義と、現地で撮影したスタートアップのピッチを放映したあとは、イスラエルのIIoT領域で活動するシードスタートアップへの投資に特化したVCファンドを運営するGiTV代表の安達氏、電子部品メーカー大手のSMKで欧米、イスラエルを含むスタートアップとの連携によるIoT推進を務める井川氏、イスラエル発のスタートアップで昨年7月にGEデジタルに買収されたIQPの石井氏(現GEデジタル所属)を迎え、「イスラエルIoTスタートアップの特徴と日本企業の連携可能性」と題したパネルディスカッションを開催、イスラエルのスタートアップの魅力や課題、日本企業との連携時に必要なことなどについてお話をいただきました。
投資家、メーカー、スタートアップのそれぞれの視点とご経験から、「日本とイスラエルのスピード感は大きく異なるので素早い意思決定が求められる」、「とがった技術を開発しているが荒削りなため完璧であることは期待できない」、「日本企業のイスラエル進出は遅れているので視察フェーズを飛ばして最初は失敗してもいいからお金を使っていくべき」、「現地のスタートアップのソーシングや事業、技術開発をスムーズに進めるには小さくてもいいから拠点を置くべき」といった具体的なアドバイスなどもあり、会場からも多くの質問が飛び交いました。
イベント内で紹介した非接触睡眠モニタリングデバイス「Live」
イスラエルのスタートアップは、大手企業の新規事業担当者やオープンイノベーション担当者、CVC担当者などを中心に徐々に注目を浴びてきているのは、4年前にイスラエルに移住して事業を始めた弊社としては非常に嬉しいことではあるのですが、この流れをブームで終わらせずに成果を上げていくために今後も活動を続けていこうと思います。
植野力(COO & Co-Founder/Aniwo)
2014年にイスラエルに渡り、独自のアルゴリズムでイスラエルのスタートアップと世界の投資家をつなぐ。マッチングプラットフォーム「Million Times」を運営するAniwo社を共同創業。2015年末より日本支社を担当。
●お知らせ
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