個人的お気に入り楽曲
購入したら、ぜひじっくりと聴いてほしい音源は以下のふたつ。全曲すばらしい音質だが、この2曲は、ハイレゾならではの楽しさが存分に味わえると思う。
ゲッティング・ベター
この曲はレコーディングに、フェンダーのストラトキャスターを使用したらしい。ストラトキャスターというギターは構造に由来する歯切れのいい音が特有で、ロックには欠かせない楽器のひとつ。ザクザクと金属的な響きなのに、耳には痛くない心地よい音が冒頭から楽しめる。
ベースはリッケンバッカー「4001S」というモデルで、この時代はまだ低域を誇張するような処理が一般的ではなかったため、スタジオでベースを弾いている様子がよく伝わる。音圧が高くないので、弦の擦れる感じなどもリアルに収録されていて、当時のスタジオの様子を思い浮かべながら聴くのも楽しいだろう。
注目ポイントは「Getting so much better all the time!」というメンバーのコーラスが重なるところ。このように厚みのある音の重なりは、音圧が高すぎると音の塊のようになってしまう場合があるが、この音源ではばらつきがきちんと出ていて、メンバーの声の個性もじっくりと聴き比べられる。
ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー
このアルバムの制作時、メンバーが東洋の文化に傾倒していたことは有名だ。この楽曲には、インドの絃楽器であるシタールと、打楽器であるタブラーが使用されているほか、リズムもインド音楽に影響を受けたオリエンタルなパターンとなっていて、終始インド的な雰囲気が漂っている。
シタールのきらびやかな音は、これがいまから50年以上前のデータを元にしているとは信じがたいほどリアルで高音質。他の楽器にも言えることだが、楽器の個性をしっかりと収音し、かつオーガニックになりすぎない、録音環境のよさがすぐにわかるはずだ。特徴的な長い間奏では、こうした民族楽器同士のかけあいも楽しめる。
またこの楽曲は、ボーカルがよく前に出てくる印象があり、ブレスにともなって口を開けるときの、口の中のつばの表情もわかる。大昔に録音されたデータにこれほどの情報が残っているという、歴史的な面白みも感じられるだろう。
ヘッドフォンやイヤフォンで聴いても定位感や繊細な当時の空気感がよく聴き取れるし、スピーカーで聴いても明らかな質のよさが伝わってくる。当時の録音技術の味わいと、ジャイルズ・ マーティンの腕のよさも堪能でき、音楽としても、資料の意味でも、ぜひダウンロード購入して、プレイリストに加えたい作品だと思う。
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