「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)」(以下、「サージェント・ペパーズ」)は、ビートルズの8作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム。イギリスにおいては1967年6月1日に発売されました。
言わずと知れた、などという表現さえ陳腐に感じられるほど、ロック、そしてポピュラー音楽の金字塔であり、全世界では3200万枚以上のセールスを記録しているそうです。
アルバムを架空のブラス・バンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のショーに仕立てるコンセプトから、「世界初のコンセプト・アルバム」といわれています。もちろん、これについては諸説あるので、そのような通説があります、といったところで留めておきましょう。
■Amazon.co.jpで購入
メイキング・オブ・サージェント・ペパージョージ マーティン(著)キネマ旬報社
アルバム発売50周年にあたる2017年、ついにハイレゾ版が配信開始となりました。もちろん、ビートルズ初のハイレゾ音源。オリジナルの13曲に、新たにステレオミックスされた13曲のオルタネイト・テイクス、「Penny Lane」の2017年ステレオミックス、インストゥルメンタル・テイク、「Strawberry Fields Forever」の2015年ステレオミックス、2つのオルタネイトテイクスを追加していること。要するに、本編+未発表テイク18曲となっています。
品質は92kHz/24bitのFLAC音源で、ビートルズのプロデューサーを務めたジョージ・マーティンの息子ジャイルズ・ マーティンと、共同作業者のサム・オケルがオリジナルのマスターテープから、新たにミキシングした2017年版の音源です。
当時のイギリス盤はモノラル版とステレオ版の2種類が発売されていました。とはいえ、1967年当時のステレオミックスですから、楽器が妙に片側に寄っていたりする、今の水準でいうと不自然にも感じられるものでした。今回は、マスターテープから、新しく「モノラルミックスをベースにステレオ化」したそう。
もちろん、存在は知っていました。ところが先日、編集部のAV担当・フィアット小林さんに、とつぜん記事にしてみないかと言われたのです。えっ、ビートルズでしょう。そしてハイレゾでしょう。自分みたいな素人の意見なんて……。 いやいや小嶋くん、等身大のハイレゾレビューが読みたいんだよ。そういうものですか? 詳しい分析は、ほかの記事でやってるから。うーん、それじゃあ、ビートルズが好きな人間として、ハイレゾを聴きましたという話を……。
「サージェント・ペパーズ」って怖くないですか
1986年生まれの筆者が初めてCDで「サージェント・ペパーズ」を聴いたのは……中学生の頃ですから、2000年前後だったと思います。「若すぎるだろ」と思われそうですが、ご容赦ください。そういう記事ですから。
ともかく、最初に聴いたとき、「怖いなあ」と感じたことは鮮明に覚えています。単純に奇妙なだけの音楽ではないのに、随所に見られる偏執的なこだわり。そして「Being for the Benefit of Mr. Kite!」「A Day in the Life」の、音の洪水のような瞬間……。実験的なサウンドが、良質なメロディーの中からふっと顔を出す、当時のロックをめぐる「進歩」と「混沌」をそのままパッケージしたような世界がありました。
本作はビートルズ中期の実験的なサウンドの集大成ともいわれますし、実際、時代はサイケデリックなムーブメントの真っ最中でした。しかし、色鮮やかな絵の具もすべて混ぜれば真っ黒になってしまうように、ただサイケデリックというには、何やらどす黒いものがうごめいているような。
「サージェント・ペパーズ」は、カラフルが行き過ぎて、真っ黒に感じる瞬間さえある。まぎれもない傑作であることは、10代前半の自分にもおぼろげながらわかりましたが、しかし第一印象となると「怖い」になる。
1968年にビートルズはシンプルなバンドサウンドに回帰した(と、されている)「The Beatles」を発表しますが、白一色のアルバムジャケットから「ホワイト・アルバム」と呼ばれているのは、何やら示唆的にも思えます。
Image from Amazon.co.jp |
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム) |
筆者の感想はこのぐらいにして、さっそく聴いていきましょう。その前に……最初は「せっかくのハイレゾだから、すばらしいオーディオで聴きたい!」と考えたものの、フィアット小林さんから「等身大の話をしてね」と言われたことを思い出しました。たしかに、普段とまったく異なる環境で聴いたら、ハイレゾ以前に「オーディオ装置がいつもよりすぐれているから、よく聴こえました」なんてことになりかねない。
そこで、iPhone 7をハイレゾ対応DAC搭載ヘッドフォンアンプのOPPO「HA-2」に接続し、「mora player」アプリを使って、筆者が普段使いしているソニー「EX-750」で聴くことにしました。オーディオにこだわる人からすると「もう少し……」かもしれませんが、いつもと似た環境のほうが違いがわかるという判断です。では、いよいよ、ハイレゾで聴く「サージェント・ペパーズ」の世界に行きましょう。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります