櫻木:人材育成事業とは具体的に何をおこなっているのか?
次世代を担う人材の育成を目的に、昨年度は佐賀県伊万里市にあるPORTO3316というスペースで、現地の方に向けてさまざまなセミナーを開催してきました。
ライティング(文章)、カメラ、動画、デザイン、女性起業、シェアエコ、インバウンドといった内容です。
また、2年前から福岡市内の企業を中心に、長期インターンシップのコーディネーターを担当させていただいています。
6ヵ月間のフォローアップと研修が特徴で、これまでに大学生は40名、リピーターも含めると累計15社の企業さんに導入していただいております。
また、弊社のメンバーは、大学を卒業するとそのまま他社に就職していきますが、非常に優秀な卒業生も多く輩出しています。
大学生のうちから、しっかり社会を知る、ビジネスを経験するという意味では、弊社で働くこと自体が人材育成になっているとも言えます。
仕事の王道を自分に落とし込め【元津瑞来】~卒業生がビジップで学んだこと~
櫻木:地方の会社だからこそできるビジネスという点でなにがあるか?
首都圏の企業さんが手をつけられない領域にチャンスがあると思っています。
まず考えれられるのは、地方に詳しく、地場企業とのコネクションを生かした、東京のベンチャー企業やスタートアップの地方進出のご支援です。
地方進出となると営業拠点の設立や人員配置などリソースを割くことになり、企業としても地方でのマーケット開拓に関してリスクを減らして進められるメリットがあります。
具体的には営業代行が考えられ、弊社で何社かお手伝いさせていただいたことがあります。
営業以外にも、あえてリモートワークで地方のいる学生をインターン生を採用してみるなど、話題性を生む広報や採用の支援なども今後手がけていきたいですね。
櫻木:学生の会社というと採用支援ビジネスが思いつくが、やらないのか?
採用支援としては、長期インターンシップのコーディネーターを挙げることもできますが、単なる職業体験・会社説明会に終わることがないよう、”長期”のインターンシップにしています。
日頃から社員さんが取り組まれている業務の一旦を担う内容にするのではなく、大学生が関わるからこそできる事業にチャレンジしてもらうことがしばしばです。
先ほどもご説明しましたが、弊社の社員自身が次世代人材として働くという点を踏まえると、今の自分たちにできる採用支援だけをやるというのではなく、新しいビジネスにどんどんチャレンジすることを大切にしています。
櫻木:地方でビジネスを展開する上で気をつけていることは?
弊社は福岡の会社ですが、福岡以外の会社や地域の支援をしております。その時に意識しているのが現地の方との信頼関係の構築です。
地方でなくとももちろん大事なことですが、私たちはヨソ者なので、より一層気をつけて活動しています。
当たり前ですが、本気になって取り組むこと、本気でやってることをしっかりと伝えること、これもまた大切だと思います。
また、その地域のキーパーソンを抑えることも重要です。推進力のあるリーダー的存在、旗振りができる存在というのが非常に大切になってきます。
多くの人を巻き込める人がたくさんいればいるほど、その力が大きくなりますし、できることの幅も広がります。
櫻木:ビジップの活動通して地域に対する愛着というのは増えるものか?
私自身の話ですと、出身地、居住地の他に、第3の故郷のような愛着が湧いています。
やはり、地域の方との交流を通して仲良くなりますし、常に現地のことを発信しているので、かなり詳しくなります。
詳しくなると、当然、愛着が湧いてきますし、人に話していくうちにさらに愛着が湧いてきます。
我々はビジップという会社に所属していますが、大学生という側面も持っていますので、大学生と何かコラボしたい、大学生の知見が欲しい、大学生の活力が欲しいという企業さんや自治体さんのお力になれたらと思っています。
櫻木:地方発のビジネスでどういった領域に可能性があると思うか?
我々も取り組んでいますが、やはりドローンやシェアリングエコノミーは可能性があると思っています。
特に交通弱者や空き家・廃校の問題など、本来地方にこそシェアリングエコノミーのサービスが必要です。
ドローンの場合は、廃校になった小学校でドローンスクールを実施するなどしています。遊休資産(使われなくなった小学校)×最新テクノロジー(ドローン)の組み合わせです。
実際に地方に行くと見えてくるものがたくさんあります。
素晴らしい伝統や文化、資源があるので、それと新しいもの(考え方やテクノロジー)をどう組み合わせるかが重要になってくると思います。
まとめ
ビジップ社のビジネスというのは、「組み合わせ」で成り立っている点に注目です。ドローンだけの事業、シェアリングエコノミーだけの事業、ウェブだけの事業という部分では顧客への付加価値がつけられない、または地域で十分なマーケットがないという可能性があります。組み合わせることによって地域にありそうでなかったサポートができたり、地域の方から信頼されるパートナーとして相談されるというポジションを確立しようとする点がわかります。
また、ある意味大人と同じスタート地点ではじめることができる新産業に特化取り組み学生でも活躍ができる場を用意している点は地域×若者という視点でビジネスを考える際に参考にしたい点です。
最近では都内のベンチャー企業も東京の拠点以外に、札幌・名古屋・大阪・福岡と地方への営業所も持つところも増えてきました。しかしながら、営業所をつくり人員を配置できる企業がすべてではありません。東京以外のマーケットを広げたいベンチャー企業の地方進出をサポートするというドメインでのビジネスという可能性もあります。実際にビジップ社はペライチの福岡のサポーターでもあり、地域の企業が使いやすい安価で良いツールを広める取り組みをしています。
こうやって東京のベンチャー企業と一緒に仕事をすることで、福岡にいてもベンチャー・スタートアップの企業で働くことができる場というのをビジップ社は作っており、ベンチャー・スタートアップで働くなら「東京」という学生を福岡で受け入れる場ともなっているようです。
地域を成長させていくための人材輩出機能、新産業創造の機能や、東京と地方をつなぎ経営の手法をアップデートさせるサポーターとしての機能など、地域ならではの役割やビジネスの作り方があるということを今回はビジップ社の事例を元にお届けいたしました。
櫻木諒太(一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会(JASISA)事務局長)
2010年に公的機関で中小企業支援に従事したのちに、2015年にJASISAにジョイン。2017年4月から同団体の事務局長をつとめ、「地域の新陳代謝を活性化させる」をテーマに地方創生、クラウド経営、地方発ベンチャー、女性起業家支援など年間10本以上のプロジェクトを立ち上げる。好きなことは、知らない土地に行くことと、違うコミュニティーをつなげ新しい価値を生み出すこと、好きなサッカーチーム(アビスパ福岡)のアウェイ観戦。
●お知らせ
JASISAでは、地域での新しい取り組みをする人たちを応援するために47都道府県事業スタートプロジェクトを進めています。
2018年1月22日に「九州ベンチャー・スタートアップミートアップ」を福岡で開催いたしました。ゲストには「0 to 100 会社を育てる戦略地図」の著者で株式会社54山口豪志さん、日本/韓国/台湾/バングラデシュ/ミャンマー/トルコ/グアテマラでソーシャルビジネスを手がけ売上30億円の社会人起業家田口一成さん、佐賀県で地方創生に特化した会社を立ち上げたPORTO株式会社森戸 裕一さんをお迎えし、地域で活躍するためのノウハウと出会いを提供いたします。
プロジェクトページURL:http://www.biz-solution.org/projects/47
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