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eiicon主催のJapan Open Innovation Fes 2017開催

「目的を明確に」トヨタ、KDDIも実践するオープンイノベーションの手引き

2017年11月16日 06時00分更新

イノベーションを起こそうと思ったら大量にやらなければダメ

 午前中の講義は、「リクルートのオープンイノベーションと新規事業の仕組み」と題し、リクルートホールディングスで新規事業開発部門を管轄し、この10月からリクルートホールディングス 戦略企画室へ異動した麻生要一氏が登壇しました。今回は、前職での話になります。

リクルートホールディングス 戦略企画室の麻生要一氏。前職の新規事業開発部門での話をした

 求人広告の企業として1960年にスタートしたリクルートは、「揺りかごから墓場まで」をモットーに、人生の分岐点でより多くの選択肢を提供してきました。その後、日本最大級のメディア企業へと成長し、昨今は分社化・上場し総従業員数は約4万5000人、グループ企業数は約380社となり(2017年3月時点)、時価総額は4.7兆円という日本有数の企業です。

 麻生氏「主戦略はグローバル展開でM&Aをやっていますが、リクルートの中から新規事業を生み出すことが、とても重要な活動になっています。ひとつの事業に特化しておらず、売上300億円規模の複合体。58年間ずっと新規事業を行なってきました。作っては育ての繰り返しで、大半は失敗しますが、 何年かにひとつは大きくなる事業が生まれてきました」

 オープンイノベーションに関しては、10年前から取り組んでおり、3年前からは「オープンイノベーション戦略」として、リクルートがいまだかつて組み合わさったことのない要素との接点を最大化し、その接点において事業開発を実行しているそうです。

 これまでに、三井不動産やソニーといった企業だけでなく、高知県の県庁や長野県塩尻市の市役所と連携した行政、信州大学といった大学などと一緒に取り組むこともしています。

写真はソニーとのプログラム。リクルートの人とソニーの人がごちゃまぜになって取り組むことが大事と語る

 地域とのオープンイノベーション。地域にリクルートの人がたくさん行ってたくさんやることで、確率的に何かが生まれる。とにかく大量の人やアイデアを、接点へ送り込んでいる

いろんなことをいろいろとやっている。上のほうが濃いイノベーション、下のほうが薄いイノベーション

 ほかにも、競争のための場作りも行なっている。場所を作っているだけで、リクルートにどんなメリットがあるのかわからないが、渋谷にオープンイノベーションスペース「TECH LAB PAAK」を開設。特に投資や提携もせず、とにかく起業家にとってオアシスのような場所を作りたいという思いだけで作ったという。

2年半で200チーム700人が利用し多くの起業家を排出してきました

 「3年間携わってきて痛感しているのが”オープンにしているだけではダメ”ということ。いろいろな企業から相談を受けていますが、イノベーションの要素がなくて、単にオープンにしているだけという活動が多いですね」(麻生氏)

 リクルートのやりたいことはオープンイノベーションではなく新規事業開発。そのひとつの手法がオープンイノベーション、というだけであると語る。

 リクルートの仕組みはかなり特殊で。社内新規事業開発はリクルートベンチャーズという名称で活動しています。この新規事業開発プログラムの半分は人事制度です。リクルートグループ全従業員が対象で、審査が通れば必ず異動でき、1次審査を通過すると20%ホールディングスづきに。最終審査を通過すれば100%ホールディングスへ異動して活動することになります。いつ誰がホールディングスへ異動するのか、人事も把握していないのが一般の企業と大きく違うところで、人事の最大特権を新規事業開発部が握っています。

新規事業開発部門は、事業案を人とセットで集め、資金投下。追加投資して伸ばしていき、一定規模になったら新規事業開発からは卒業する

 社内に新規事業特化型のポータルサイトがあり、ノウハウがたくさん詰まっています。エントリーフォームが用意されており、どんな事業をやりたいのかどうしてやりたいのかという思いを書き込んで送れば、エントリー完了します。

社内人材育成プログラムがしっかりしており、段階別に次のステップへ行けるノウハウを提供していく。これに則っていけば、ある程度上へ登っていける

 「お金をつけてベンチャーキャピタルのようにしています。バーチャル・カンパニーを起ち上げ、管理会計上でキャッシュを立てて、枯渇したら倒産、枯渇する前に資金調達するという考えで、擬似的に時価総額を上げていきます。スタートアップのように事業を起ち上げつつ、大企業なので丁寧なサポートも受けながら、育成されつつ、社長のように振る舞って業務ができるのが特徴です」(麻生氏)。いろいろなサービスが起ち上がっていますが、どれもスタートアップ企業のような事業とのことです。

 「オープンイノベーションで重要なのは、作った接点で事業開発できるかということ。これは自分でやらなければなりません。オープンイノベーションは、自分でできないから人にやってもらおうという感覚があります。それではまったく意味がありません。リクルートの場合は、オープンかどうかは置いといて、とにかく自分で中から事業を生み出すということをやっています。そこに風として、外の血を取り入れることで、イノベーションが起きていくのです」(麻生氏)

 現在、スタートアップ企業の社長たちとリクルートの従業員が1:1の混成チームを作り、リクルートとの共同事業を作る「MEET SPAAC」ということをやっています。「自分で事業開発をやっていますか? その覚悟を持ってオープンにしていますか? 0から生まれるときに重要なのは熱量です。熱量をつくり出すには空気や場作り。高揚感のある空間だと思います。そのあたりも大事にして取り組んでほしい」(麻生氏)。リクルートのやり方を取り入れることはなかなか難しいかもしれませんが、オープンイノベーションに取り組む心構え、意気込みはとても勉強になる内容でした。

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