パイロットウォッチに求められる「厳しい環境」とはどんな意味?
自動車をはじめ、鉄道や船舶など乗り物には「計器」が不可欠といえる。操縦者は各種計器からの情報を元に、安全かつ正確なコントロールをする。その意味でもっとも計器が重要となる乗り物のひとつが航空機。パイロットの判断ミスで大きな事故を引き起こしかねない航空機には大型の旅客機からセスナのような小型機まで、数多くの計器が搭載され、パイロットの操縦をサポートしている。
機体に搭載されている計器と同じように、飛行機のパイロットからひとつの「計器」として認識されているのが腕時計。「パイロットウォッチ」というジャンルにもなっており、なかでもブライトリングのパイロットウォッチは、世界各国の飛行機乗りから愛用されている。レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ(以下レッドブル・エアレース)に参戦し、アジア人初となる2017年の年間総合優勝を勝ち取った室屋義秀氏も、ブライトリングのパイロットウォッチの愛用者のひとりだ。
室屋氏がブライトリングと出会ったのはレッドブル・エアレース参戦前。すでに曲技飛行などの大会には出場していた室屋氏が「父親が持っていた『クロノスペース』を借りて装着していた」のが最初だ。その後、国内でアマチュアのための曲技飛行の大会を企画したときに、室屋氏のほうからブライトリングにスポンサーを依頼。以降、室屋氏の活動をブライトリングがサポートしている。
室屋氏はパイロットウォッチに求める性能や機能として「厳しい環境に耐えられること」を上げている。曲技飛行の場合、スピードは時速100kmから400kmにも達し、負荷は+10/−8にもおよぶ。「G(重力加速度)がかかると操縦桿をはじめすべてのものが重くなる。操縦中はずっと筋トレをしているような状態。心拍数も160から180で200を越えることも。さらにコックピット内は暑く、晴天下だと60度くらいになることもある」と室屋氏はコックピット内の厳しさを語る。
このような厳しい環境では、市販されている一般的な機器では正常に動作しないことも多い。室屋氏は「ビデオカメラがテープメディアだったころは、Gでモーターが動かなくなったり、熱で止まってしまうことも多かった」という。これは機械式時計も同じ。航空機の計器は、こういった環境でも針跳びや故障が起きないよう厳しい承認を受けないと使用できない。ブライトリングのパイロットウォッチも同じように、厳しい環境でも針ズレなどを起こさず正確に時を刻む精度になっている。
室屋氏は「実は曲技飛行中やレッドブル・エアレースのようなレース中は計器類をほとんど見ていない。計器類をチェックして情報を頭で処理するのでは時間がかかってしまう。それよりも周りの景色など、キャノピー越しから目に入ってくる情報を瞬時に処理して判断している」とのこと。確かに時速400kmで飛行していた場合、1秒間で約111mも移動してしまう。自分の脳内へ情報を入力して処理し反応としてアウトプットするまでをいかに短縮できるかが曲技飛行のポイントというわけだ。
とはいえ曲技飛行に計器はまったく不要なのかというとそうではなく、「飛んだあとのデータ収集に役立つ」(室屋氏)とのこと。実際に曲技飛行をする時間は長くても15分くらい。レッドブル・エアレースも、1レース1分ほど。しかし競技会場へは空港から離陸して向かうので、その際に計器の情報から機体におかしいところがないかなどチェックできる。もちろんパイロットウォッチもフライト時間などをチェックする重要な計器。競技やレース中の厳しい環境で表示が狂ってしまえば大変なことになる。
ちなみにレッドブル・エアレースで使用されている機体の計器は、ほとんどがデジタル表示になっているとのこと。そこで室屋氏にアナログとデジタル、どちらの表示が好みか質問したところ「アナログ表示のほうが慣れ親しんでいるので、脳での処理を早くできるので好き」だそうだ。ただパイロットの中には、デジタルネイティブの世代も登場しているそうで「そういった世代はデジタル表示の方が早く処理できるのでは」と答えている。
さらにブライトリングのパイロットウォッチの利点について室屋氏は「手荒く使っても安心」という点をあげている。機体のコントロールは手での操縦桿操作に加え、両足もペダルを使って機体をコントロールする。しかも曲技飛行中はGがかかり、操縦桿もペダルも重くなり全力での操作となるため、時には腕をコックピット内にぶつけてしまうこともあるそうだ。そういった場合でも、傷が付かず壊れることのない堅牢さのため「ハードなフライト中も安心して、気にせずに使うことができる」という。
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