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iPhone X先行レビュー:Appleはいかにして、世界一の働き者のホームボタンを隠居させたか

2017年10月31日 19時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

iPhone X シルバー 256GBモデル。iPhone 8のシルバーモデルとは、背面の色味が若干異なる。また前面は黒い配色となっている

 AppleはiPhone Xを11月3日に発売します。9月12日にiPhone 8シリーズと同時に発表されましたが、9月22日に発売されたiPhone 8シリーズから遅れること1ヵ月半近く、満を持して発売されるのが、iPhoneの将来を示すスマートフォン、というわけです。

 今回は連載の通常回ですが、事前にAppleより借り受けたiPhone X シルバー256GBモデルを1週間使った感想を、特に「ボタン」にフォーカスしてお届けしたいと思います。若干細かすぎるこだわりなのかもしれませんが。

iPhone Xの第一印象、個人的に最重要なサイズの話

 10月27日から予約が開始されたiPhone Xですが、Facebookの友人は意外と発売日に手に入れられる人が多かった様子。新たに採用されるディスプレイや、赤外線を追加したTureDepthカメラシステムなど、新たにiPhoneに採用されるパーツも多く、製造数が厳しいと見られていましたが、感覚としてはiPhone 7 Plusのジェットブラックよりも予約状況は良かったのではないかと思いました。

 iPhone Xの位置づけを一言で言えば、iPhone 8の派生モデルです。

 iPhone 8 Plusの派生モデルではない点は意外に思われるかもしれませんが、大画面モデルで採用されるランドスケープモード時のメニューとコンテンツの同時表示などは、iPhone Xでは利用できず、iOS 11での扱いとしては「標準ディスプレイサイズ」と判断されているようです。実際にサイズはiPhone 8に近いので、その位置づけも納得ではあります。

iPhone 8にシリコンケースを装着し、ケースなしのiPhone Xに重ねると、幅や厚みはほぼ一致する。iPhone Xのほうが若干長い

 筆者は手が小さい、という話を本連載でも書いてきました。そのため、5.5インチモデルは、デュアルカメラの魅力もありながら、片手で軽快に使えないという理由から敬遠してきた経緯があります。

 そんな筆者でも、iPhone Xなら握れる、片手で使える。ちょうどiPhone 8に純正ケースを装着したようなサイズ感、と言うとわかりやすいかもしれません。もっとも、落としたことを考えるとiPhone Xにもケースを使うことになりますが。

 iPhone 8の不満な点は、当たり前ですが、iPhone 8 Plusよりも小さな画面サイズ。デバイスの前面のほとんどをディスプレイが覆う現在のスマートフォンのデザインにおいて、小さなデバイスに小さなディスプレイしか搭載できないのは当たり前です。

 しかし、iPhone Xには大きな5.8インチのディスプレイが、iPhone 8のケース付きと同じようなサイズの中に収められています。有機ELディスプレイを折り曲げて搭載することで、縁までいっぱいにディスプレイを敷き詰めることに成功したのです。

左から、iPhone 8 PlusとiPhone Xを最大輝度で表示させたところ。iPhone 8の黒い壁紙部分は、iPhone Xと比べ、白っぽくバックライトの光が見える。ちなみにこの環境でもFace IDの認証はきちんと行なわれた

 最近、スマートフォンで映像を見るチャンスも多いと思います。そのためには大画面が欲しい。しかし端末サイズはコンパクトに保ちたい。そんなニーズを叶えてくれるのが、iPhone Xの新しいデザインです。

 発色も良いし、黒もちゃんと黒く塗りつぶされる。正確には消灯しているから真っ黒になるわけですが。ボディサイズをできるだけ大きくせず、最大限にディスプレイを搭載するデザインを採用したiPhone X。

 そのデザインで最もチャレンジが大きかったのが、あのボタンの処遇でした。

ホームボタンに与えられていた役割

 iPhoneは登場以来、ホームボタンをディスプレイ下の中央部分に備えてきました。当初はボタン自体はプラスティックで、押し込めるタイプのものでした。

ホームボタンがなくなり、画面下部のジェスチャーとサイドボタンにその機能が振り分けられた

 iPhone 5sで指紋認証Touch IDのセンサーを兼ねるようになり、材質はサファイヤガラスに変更されました。ホームボタンに指を触れると、ロック解除やApple Payの支払いなどの認証が行なわれます。指は5本まで登録できました。

 iPhone 7になると、ホームボタンは物理的には押し込めない、感圧とフィードバックを組み合わせたものになりました。電源が入っているときはこれまでのようなボタンのように扱えますが、電源が入っていなければ上下に動かない単なるガラスの領域になります。“石化”とでも言うべきでしょうか。

 iPhone 7で押し込めなくなって、このボタンはなくなるんじゃないかと筆者は予測しましたが、iPhone 7の翌年に早速ホームボタンがないiPhone Xが登場するほど、変化が早いとは思いませんでした。

 ホームボタンには、iPhoneの操作の基本となるホーム画面を表示させる、画面を点灯させるといった機能のほかに、ダブルクリックでアプリ切り替え画面の表示、トリプルクリックでアクセシビリティのズーム機能の呼び出しが割り当てられていました。

 ズーム機能に「低照度」フィルタを選択肢、夜まぶしすぎるディスプレイの明るさを抑える裏技を使っている人も多いのではないでしょうか。

 でも、機能はまだまだあります。

 iPhone 4S以降、音声アシスタントSiriが搭載され、これを呼び出すためにホームボタンを長押しする動作が追加されました。こちらも、iPhone 8まで共通して利用できる操作です。

 ロック画面で2度押しすると、Apple Payの画面が現れ、店頭で支払う際には前述のTouch IDで指紋認証をします。Apple Payではホームボタンが大活躍していたのですね。

 さらに、iPhone 6シリーズ以降の大画面化で、画面上部に届きにくくなってしまったことから追加されたアクセシビリティの機能「簡易アクセス」は、ホームボタンを押し込まずに2度タップすると、画面全体がぐぐっと下に引き寄せられる仕組みでした。

 そして意外と便利に毎日活用しているのがスクリーンキャプチャ。ホームボタンとサイドボタンの同時押しを、メモ代わりに活用している人も少なくないのではないでしょうか。

 ここまで書いてくると、ホームボタンが、世界で最も多機能で、最も押されているボタンであるということに、大きな疑問を持たないのではないでしょうか。

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