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アニメ「第1話切り」の実態も“見える化”

レグザ視聴データとTwitter比較で見えた「アニメ視聴スタイル」

2017年10月22日 12時00分更新

第1話の重要性が高まっている

── 5冊本をやったので、1年3ヵ月の俯瞰の話をすると。

片岡 「2016年春からやってきた取り組みを、私なりに振り返ってみると、“第3話切り”が減っていて、“第1話切り”になってきました。グラフを見ていても、第3話まで観て、接触率が安定してきたなと感じることは減り、第1話でも落ちるものは落ちてしまっている。第3話で落ちることは少ない場合が多いです。

 第2の特徴として言えるのは、見始めて途中で落とす作品が減っていることです。過去には、明らかに合わないとか、クオリティーの問題などで視聴者が離れる作品もありましたが、作品の出来が全体的に上がっているので、途中で切る“明白な要因”がない。その一方で、放送している作品の数が明らかに増えたので、全部を見切れなくなってきている。その結果として、見る作品の総量が減っている感じがありますね。

 逆に言えば、第1話の重要性がより一層高くなっているとも言えます。

 たとえば『幼女戦記』の場合、第1話では現実社会との関連性をあまり見せなかったので、単なる“ロリバトル”に見えてしまい、それでバッサリ切ってしまった人がいるのではないでしょうか。第1話切りが多いということは、一番最初のタイミングで、視聴者を捕まえ損なうと、第2話以降でフォローしても手遅れになるというタイミングです。

 また放送が始まるタイミングもあります。『アトム ザ・ビギニング』はほかの作品に比べて1週遅いタイミングでのスタートでした。となると、クールのはじまりに「せーの」で予約するタイミングから漏れてしまいます。これは損しているのではないかと。初速が大事で、第1話から勝負していくのであれば、少しでも早いスタート地点に立って走り出さないと抜けられないぞと言うことかもしれませんね」

作品のグループ分けから、ヒットの要因を探る

── ファン層分析に関しては、非常に力が入っていますが、これによって何ができるようになるのでしょうか?

片岡 「ひとつは、各ジャンルにどのぐらいの支持層がいるかが分かります。これにツィート分析も加えると、ヒットの要因がある程度、切り分けられるのではないかと思っています。

 ブレイクする作品には、様々な要素が重なり合った発火点があります。このすば(「この素晴らしい世界に祝福を」)という作品の魅力は、演じる声優さんたちによってできた絶妙の空気が良かったと言われているようです。でもこれは“この声優ひとりを起用したから”できたのではなく、集団の相互作用あってのことだと思います。これが組み合わさったから当たった作品なんでしょうね。

 毎クール何本かある“すごく視聴される”作品は、放送時間の条件が良かったりとか、原作が超有名だったりする別格の作品です。アニメファンなら誰もが注目していているから、ある意味、人気が出て当たり前と言えます。

 関心はそこではなく、あるグループの中で、放映前に知名度があったわけではない作品が、どうしてブレイクしたり、浮上するのかではないでしょうか? 企画を走らせる前の分析に役立てたり、ヒントになればいいと考えています。その違いを踏まえて企画を考えたり、知ったうえでビジネスを組み立てたい。そういうニーズに役立つ情報を出していきたいと思います。

 ヒットの要因がいろいろな要素の複合だとしたら、ヒットを起こすための要因を増やしてみてはどうか? それが成功の確率を上げられるのではないか。そのいくつかの材料を提供できればと思っています。

 もちろん、このデータだけですべての問題を解決するのは難しいかもしれません。でも、少しずつ改善を重ねて、ヒットの可能性を高めていくことはできる。また、アニメとコラボしたマーケティングを検討している企業が、どの作品にどんなファンが付いているかを知る上でも役立つかもしれませんね」

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