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知ってそうで知らないレーザー光源の話など、NECの最新技術を聴く

2017年09月25日 09時00分更新

サイネージで需要増える、カラーマネージメント

 カラーマネージメントについては、映像制作や写真、印刷業界などで使用するイメージが強い。しかし今後はサイネージ広告などで、クリエイターの意図した色を出す用途が増えていくと考えられている。

カラーマネージメントがないと色が合わない

 NECディスプレイソリューションズの取り組みは古く、液晶ディスプレーではLEDバックライトが使われ始めた、2006年の「MultiSync LCD2180WG LED」にさかのぼる。このタイミングから合わせて約466万台の出荷実績があり、約95%が海外向けだという。最初は98万円程度と高価な製品だったが、翌年から24万円程度に価格が下がり、一挙に普及した。

製品の歴史

 この分野で同社のコアとなるのが、Spectra Viewエンジン。2010年の「MultiSync LCD-PA241W」から載せ、進化させている機能だ。

ハードウェアキャリブレーションの概念

写真のような外付けのセンサーを利用する

 カラーマネージメントで現在主流の方式は、ハードウェアキャリブレーションと呼ばれるもの。あらかじめ設定した輝度・白色点・ガンマカーブなどのターゲット値をディスプレイ内部で調整して得る。ただし操作が難しく、調整に毎回5~10分程度かかるため、台数が増えると、管理工数が膨大になるといった課題も抱えている。

ハードウェアキャリブレーションには課題もある

SpectraViewエンジン

 そこで開発されたのがSpectraViewエンジンだ。センサーと色変換用のエンジンをディスプレー内部に持ち、リアルタイムのキャリブレーション処理が可能になる。またディスプレーに内蔵したことで、色ムラの補正やエミュレーション・エンジンといった一般的なハードウェアキャリブレーションがサポートできない機能も提供できる。

SpectraViewエンジンの概要

 例えば、輝度100カンデラ、色温度5000Kなどと指定するだけで自動的に色を合わせてくれる。これを自動車のオートクルーズ機能に例えて解説した。メニュー(OSD)操作だけで完結するため、プリセットと混同されるが、単に工場出荷時に設定した値にするだけでなく、実際に計測し反映した結果である。

 エミュレーションはSpectraViewならではの特徴だ。これはカラーマネージメントに対応しないディスプレーにコンテンツを出力する際に有効な機能だ。

印刷時の色合わせにも応用できる。写真では分かりにくいが、印刷したほうは、画面の青が印刷時に青紫になってしまったり、赤の彩度が画面上より低い

 出力するディスプレーのICCプロファイルをSpectra Viewエンジンを持つディスプレーに読み込んで、コンテンツがどのように表示されるかを確認しながら作業できる機能だ。ディスプレーだけでなく、プリンターのICCプロファイルを読み込むことも可能で、印刷してみたらディスプレーで表示した色と全然違っていたというトラブルを低減できる。

 このエミュレーション機能はサイネージ/パブリックディスプレーとの連携に非常に有効だ。

 またカラーユニバーサルデザインの支援ツールとしても利用できる。P型・T型・D型など、色弱の人の色の見分けにくさをディスプレー上で再現して作業できる。大画面のPA322UHDでは、画面を4分割して4種類の見え方を一覧表示して作業することも可能。作業効率が上げられる。

ユニバーサルデザインの支援ツールとしても使える

 SpectraViewエンジンは機能追加を続けており、現在第4世代。2014年以降、更新がないが開発中の第5世代では、使い勝手、管理性、検証機能、パブリックディスプレー向けの機能などを盛り込んだ機能強化が進む見込みだ。

ロードマップ

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