透明なのに紅茶の味がする! ふしぎ!
筆者は大学生時代は文学部におりまして、しかし文学青年だったかと言われるとそうでもなく、非常に不真面目で、古書店と中古レコード店に足繁く通っては単位を落としそうになりつつ、どうにかこうにかという、あまりよろしくない学生でした。
一方、周りには小説を書いて同人誌をせっせと作っている作家志望の人たちもそれなりにおりました。そんな友人の小説の推敲を頼まれ、読んでみたら書き出しが「自分は透明な存在である」みたいな一文。ところが読み進めても特にその部分が活きてくることはまったくなく、何だかよくわかわらない尻切れトンボで終わって困惑した記憶があります。透明な存在とはなんだったのでしょうか。
今回は透明な存在ではなく、透明な紅茶です。サントリー食品インターナショナルの「サントリー天然水 PREMIUM MORNING TEA ミルク」を飲みます。9月26日から発売で、価格は150円前後。え!! 透明なのにミルクティーを!? 出来らあっ!
「サントリー天然水」ブランドからは、今年4月に「サントリー天然水 PREMIUM MORNING TEA レモン」が発売されています(関連記事)。一般的なレモンティー飲料より甘さ控えめですっきり飲める、なかなか面白い一品でした。
今回はミルクティーということで、茶葉はミルクティーと相性が良いアッサム。そして牛乳由来の素材を使用。透明でありながらしっかりした「ミルクティーのコクと香り」を実現したといいます。本当でしょうか。さっそく飲んでみましょう。
ミルクティーっぽいけれど、ミルクティーではない
……なんでしょう。この味は。説明が難しいです。ミルクティーに近いのですけれど、どうしてもミルクティーではない味がします。透明だからでしょうか。でも、目をつぶって飲んでも、印象は変わりません。
こう書くと「ははーん、マズイんだな?」と思われるかもしれませんが、そういうわけでもない。致命的に味が崩壊しているのではない。ただ、その……ミルクティーの味ではない。何だか「ミルクティーっぽい味」です。ミルクティーそのものではない。透明なことも手伝ってか、「バイオなティー飲料」感がある。
原材料の表示を見ると、「ミントエキス」とある。なぜ入れたのでしょうか。これが不思議な味の原因になっているんじゃないかと思います。後味がちょっと違うんですよね。うーん。
ただ、透明なのにミルクティーっぽい味がする、という点では凄まじくSFテイストのある飲料です。ものすごくしけったクッキーと一緒に食べて「文明が崩壊する前には、茶葉から淹れた紅茶とサクサクのクッキーを食べるティータイムがあったらしいぜ……」とポストアポカリプスごっこをするにはピッタリ。
何よりも、ビジュアル的にはかなりのインパクトがあることは間違いないでしょう。YouTubeなどで「飲んでみた」系の動画もそれなりにアップされそうな気がします。以下のようなサムネイルで。
確かにミルクティーっぽい味ですし、サントリーが改良を加えていけば、もっともっとミルクティーに近い味になることでしょう。現時点でも、「透明だけれどミルクティーみたい!」という驚きはあります。でも、ミルクティーではないのです。
美術館で精巧に描かれた静物画などを見た人が「本物そっくりねえ」と感想を述べることがあります。でも、「本物そっくり」ということは、裏を返せば「本物ではない」と言っているわけです。「本物みたい!」と感動すれば感動するほど、「本物ではない」ことに心が動かされていることになります。
正直なところ「どうしてミルクティーに近づけるのか?」という疑問があります。普通のミルクティーを飲めばいいのではないか。あっさり路線にしたいなら、あっさり味のミルクティーを世に問えばいいのではないか。あえて透明にしてこの味に仕上げる理由はどこに?
透明なのにミルクティーそっくりが理想なのか。それともミルクティーではあり得ない風味を求めていくのか。現時点では、そこが曖昧な味だな、と思いました。今後に期待したいです。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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