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SKE48の松村香織さん登場で大盛り上がり! シャープの8Kイベントを開催

2017年09月28日 10時00分更新

「AQUOS 8K体験&トークショー」の出演者のみなさん

「AQUOS 8K体験&トークショー」の出演者のみなさん

 4Kとの比較では4倍、フルハイビジョンとは実に16倍の情報量を持つ「8K技術」(7680×4320ドット)。12月発売予定の新モデルを使って、その魅力をいち早く体験できるイベント「AQUOS 8K体験&トークショー」が9月15日に開催された。主催は株式会社KADOKAWA。共催はシャープ株式会社。

 イベントには、シャープの8K対応液晶テレビ関係者に加え、8K/HDRで制作したショートフィルム作品「LUNA」の制作に携わった、株式会社ピクスの池田一真監督、株式会社ロボットの諸石治之プロデューサーが登壇。アシスタント役を務める松村香織さん(SKE48)とともに、すぐそこに迫った8K時代とその映像の可能性についてトークを繰り広げた。

8K普及は予想以上にすぐそこ! 2018年の実用放送を待たずに進む

 イベントではシャープが12月から販売する8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K(LC-70X500)」を中心に、2018年12月に迫った4K/8Kの実用放送など8K映像の世界について紹介。LC-70X500はシャープがいちはやく一般コンシューマー向けに製品化する8K対応液晶テレビで、予想実売価格100万円前後という挑戦的な価格で販売する。

 発売前の製品でネイティブ8K制作の作品をいち早くみられる貴重な機会ということで、70名を超える来場者が参加した。

「AQUOS 8K LC-70X500」

「AQUOS 8K LC-70X500」

8K再生プレーヤー

8K再生用のプレーヤー(三友製)。4K×4画面分の映像をシンクロさせてHDMIケーブル×4本で出力。8Kの映像として再生する

 イベントに登壇したシャープ TVシステム事業本部 国内事業部 8K推進部 部長の高吉秀一氏は、8Kについて「先の話というわけではなく、もう1年しかない」とコメント。未来の技術と思われがちな、8Kだが家庭に普及するのは想像以上に早いと指摘した。

 8K放送は現在試験段階だが、すでに全国のNHK放送局でパブリックビューイングが実施されており、2018年の年末には実用放送が始まる予定だ。しかしそれを待たずに、8K解像度のゲームが発表されたり、8Kを超える(静止画)撮影が可能なデジカメが登場しており、家庭でも「想定より早いスピード」で8Kを楽しめる環境が整いつつあるとした。

8Kの普及は想像以上に早いと語る高吉秀一氏

8Kの普及は想像以上に早いと語る高吉秀一氏

4K/8K放送のスケジュール

4K/8K放送のスケジュール

 シャープが考える8Kコンテンツの魅力は、目の前に自然が広がるような「臨場感」と、映像が実物のように見える「実物感」だという。NHK放送技術研究所の実験では、人間の目では8K解像度(100cpd以上)では実物と映像がほぼ見分けられないという結果がでている。実物感については「8Kの解像度があれば実物とほぼ一緒」であり、リアリティーの追求という観点では「8Kがゴール」であるというわけだ。

4Kコンテンツも8K対応液晶テレビではずっときれいに見られると語る高倉英一氏

4Kコンテンツも8K対応液晶テレビではずっときれいに見られると語る高倉英一氏

 同じくシャープのTVシステム事業本部 栃木開発センター 第2開発部長の高倉英一氏も「どこまでもリアルなんです」と8Kの実物感を強調。また、4KのBlu-rayを8K対応液晶テレビで見ると「普通の4Kテレビよりもずっときれいに見える」とアドバンテージを強調した。

 業務用8Kモニターが数年前に登場した際は、1600万円近くしていた価格も100万円と個人でもなんとか手に入れられる価格にまで落ちてきた。これは高価なFPGA(プログラム可能な集積回路)をワンチップ化するといった開発陣の努力と量産効果によるものだ。現在は外付けのチューナーも近い将来は本体に内蔵される見込みで、この1年で8K対応液晶テレビは今までにないほど身近な存在になるはずだ!

8K制作のショートフィルム「LUNA」の制作舞台裏

 それではいま存在する8Kコンテンツにはどんなものがあるのだろうか?

ロボットの諸石治之氏

ロボットの諸石治之氏。8K映像の制作には、NHKエンタープライズ時代の愛・地球博から関わっている。

 会場では世界初の8K/HDRショートフィルム「LUNA」が上映された。今のところスポーツやドキュメンタリーが主流の8K制作コンテンツとしては珍しいドラマ作品。8K再生ができる表示デバイスがあまりない現状を考えると、なかなか上映する場所もない貴重なコンテンツだ。

 その内容は“現代版かぐや姫”。主人公の男子高校生が少女と天体観測や文化祭の準備を通じて心を通わせるが、少女には秘密があり……というストーリーだ。CGを組み合わせ、8Kの緻密な解像度で描かれた星空や月、そしてリアルな人物の描写。8Kということで、その解像感や空気感はすばらしく、たとえば冒頭の少女の顔のアップでは、目の中の毛細血管までハッキリと見えるほどだ。

 すさまじい現実感が味わえるとともに、少し充血した少女の目が作品の後半の展開を象徴する……といった形で、8Kだからできる作品作りの可能性も垣間見させる。

司会を務めたSKE48の松村香織さんと編集部のスピーディー末岡

 アシスタントを務めた松村香織さんは、最初はアイドルとして撮られる立場から「8Kのテレビなんて出てほしくないですけど……」と語っていたが、8Kショートフィルムの映像を見て「非現実感が全然なかった」と感動。「自分が教室にいる視点で見えるので物語に入っていける」と没入感の凄さを実感した様子だった。

 LUNAの諸石プロデューサーは、8K番組はドキュメンタリーなどのノンフィクション作品が多い中、LUNAについては「フィクションとしてクリエイティブが生かされた作品を作りたい」とドラマを制作を決意。以前から8Kコンテンツの制作を共に行なってきた池田氏とプロジェクトを開始した。

 またLUNAの制作と前後して、8Kのポストプロダクションに対応したイマジカの新施設(渋谷公園通りスタジオ)がオープンしたことも大きい。現像処理などは、この新施設で行なった。

LUNAの制作スケジュール。合成やグレーディング処理にかなり時間がかかった

LUNAの制作スケジュール。合成やグレーディング処理にかなり時間がかかった

 LUNAの制作では「主語は物語」「8K HDRを生かす」「CGとの合成を多用する」という3つのミッションを課したという。現代版かぐや姫というストーリーの性質上、舞台照明のような光の表現を目指したが、そこに8K HDRならではの高精細・広色域さが加わり、映像的な奥行き感が表現できたとする。

 美しい夜空の表現も重要だった。そのためにCGで制作した空と実写の合成が必要となった。ここにも苦労があった。例えば、屋上で人物が夜空を見上げるシーンでは、スタジオ内で撮影した実写を合成すると、空の光と人物にあたる光とが異なるため違和感が出てしまう。そこで、撮影は屋上に合成用のグリーンバックのセットを組み、自然な夜空の下で撮影を行なった。撮影過程からのリアルさが問われる、8K映像制作ならではのエピソードと言えそうだ。

撮影に使用した2台のカメラ

撮影に使用した2台のカメラ

 使用したカメラはソニーの「F65RS」とVision Researchの「Phantom Flex」。前者が8K、後者が4Kハイスピード撮影用のカメラとなる。廊下を走るシーンやプールの水の水滴がはねる表現などはハイスピード撮影を実施。250fpsの高速撮影を行なっている。さらにタイムラプス(定点)撮影も駆使するなど、さまざまな表現方法が盛り込まれている。現場確認用モニターもHDR用とSDR用の2つを持ち込んで確認した。

 収録形式はどちらもRAWデータで、その容量はF65RSが20分で512GB、Phantom Flexが1分(1000fps)で1TBとなっている。LUNAはこれを最終的に17分の尺に収めているが、それでも約5TBの容量になるそうだ。

制作の全体図。グレーディングとオンライン編集を経てHDRとSDRで出力された

制作の全体図。グレーディングとオンライン編集を経てHDRとSDRで出力された

 制作で最も時間を要したのは合成処理やグレーディング処理とのこと。高精細ゆえに細かな切り抜きの精度が求められるといった苦労があった。撮影は3日半で終わったが、これらの処理に1.5ヵ月を要したという。

ピクスの池田一真氏

ピクスの池田一真氏。8K作品の制作に多数関わるほか、欅坂46のプロモーション映像制作など、MV、CM制作でも活躍している。

 作品をディレクションした池田監督も、画像が鮮明でボケず、HDRにより色のレンジも広がるため「クロマキーが抜けない」と合成の難しさを語り、1フレームずつ手作業で処理したのこと。

 また暗いシーンの多い作品ならではの苦労もあった。8Kでは高精細がゆえに暗部のノイズが目立ってしまうが、ノイズを消す=映像をぼかして目立たなくすることであり、あまり処理しすぎると8Kならではの解像感が甘くなってしまう。そのバランス調整が難しかったと振り返る。ただしこういった苦労も、ノウハウを積み重ね、機材や編集ソフトも進化することでどんどん軽減していくのではないかと話していた。

映像制作者にとっての8Kの魅力は「空気感」

 そんな8Kの魅力は何か? 池田氏と諸石氏は、4Kと比べて「空気感が描けるようになったのが最大の差」であると指摘する。

 そのうえで「これからは様々なクリエイターが8Kに挑戦していくのが当たり前になるだろう。(8K時代の)モーショングラフィックスとかアニメーションとはすごいことになる」(池田氏)と期待をにじませた。

 「8Kはキャンバスが格段に大きくなる。クリエイターにとってはできることが増えて面白い。8Kのリアリティある映像が、家族全員をもう一度リビングに集めることになるのかもしれない」(諸石氏)と話した。

 一方8K対応液晶テレビを開発し、提供していく立場にあるシャープの高吉氏・高倉氏は「2Kの延長というイメージだった4Kに対して、8Kは新しい発見・活用につながる別の価値を持っている。LC-70X500を使い、ぜひそれを見つけてほしい」(高吉氏)、「8Kを体験できる環境も、少しずつ整ってきた。イベントのデモは8K/SDRだったが、今後はぜひ多くの人々に8K/HDR映像の魅力に触れ、その世界を体験してもらいたい」(高倉氏)とコメントした。

会場は超満員で来場者は真剣に8Kの話を聞いていた

おかげさまで会場は満員御礼。来場者は真剣に8Kの話を聞いていた

 8Kの世界は遠い未来のことと思われがちだが、実際にはあと1年ちょっとで我々の手の届くところに来る。これまで、そのことを肌身で感じられる機会はなかなかなかったわけだが、今回のイベントでは実際に8Kのドラマ映像を見て、8Kの世界で開発者に携わる方々の話を聞くことで、かなり身近に感じられた。その意味で貴重なイベントと言えるだろう。

シャープによる「AQUOS 8K」技術解説はこちら!

 フルハイビジョンの16倍もの情報を持つ8K。だが、それは高精細というだけでは終わらない。シャープの特設サイト「8K beyond the reality 人間の目と同じ、感動がそこにある。8K 究極のリアリズム」では、「技術」「可能性」「放送」の3つのストーリーで8Kの世界の魅力を紹介している。8Kに興味のある方は本記事と合わせて参考にしてほしい。

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