2017年のIFAでは、ソニーやパナソニックをはじめとしたAV機器メーカーがこぞってAIスピーカーを発表し、イベントを象徴する中心的なトピックのひとつになった。基本はGoogle アシスタント、Amazon Alexaのプラットフォームに則って開発するという、いわばスマホのような市場スタイルが形成されている。
海外ではグーグルとアマゾンからがそれぞれ「Google Home」「Amazon Echo」というプロパーのブランドでAIスピーカーを発売している中で、あえてAVブランドがこの市場に参入する意味は何だろうか。各社の製品を一斉に眺めることで、その違いが見えてきた。
自社の多彩な製品との連携をテーマにしたソニー
たとえば、Google アシスタントを採用したソニー「LF-S50G」の場合、先行してグーグルプラットフォームに対応しているAndroid TVとの連携という、ブランド内の大きなベネフィットがある。機器の操作にリモコンやスマホなどを取り出すというワンアクションを「OK, Google」で置き換えてしまおうという作戦だ。
同機はキャスト機能にも対応しており、サウンドバーやAVアンプといったオーディオ製品とも連携が可能。会場では「KD-XE9405」を使ったデモルームが用意され、スピーカーとしての音楽再生はもちろん、YouTubeのオンラインビデオを音声検索によって呼び出したり、あるいは天気やルートを検索したりといった、スマホ的な使い方を音声によって実現していた。
近年のソニーは「One Sony」「Last one inch」「Kando(感動)」といったスローガンを相次いで発表し、自社のブランドイメージ向上に心血を注いでいる。ソニーファンを増やすという、会社としての大きな方向性の中で、AIスピーカーを位置づけた時に、カメラやオーディオやテレビといったバラバラの「Last one inch」を音声操作によって統合しようとしているわけだ。
多ジャンルを持っているが故の悩みを、多ジャンルによって広がる「感動」に転換する。かつてさまざまなエンターテイメントを統合していたVAIOのような「One Sony」のアンカー役となるキーアイテムが、もしかしたらAIスピーカーという製品なのかもしれない。
だが、この戦略には大きな問題がふたつある。それは「家の中がソニーブランドで統一されているとは限らない」ことと「中核となるAIがグーグルの技術」ということだ。熱心なソニーファンや、引っ越しなどでこれから家電をそろえるならばまだしも、基本的に家の中にはさまざまなメーカーの家電であふれかえっている。
パナソニックのテレビとヤマハのサウンドバーとパイオニアのミニコンポを、AIスピーカーによるOne Sonyの世界を体験するために、全部ソニーブランドへ変えるというのはなかなか非現実的だ。
さらに、AI技術が自社開発ではないというのも問題だ。グーグルの胸先三寸で規格が変えられてしまっては、せっかくの発想も簡単にひっくり返ってしまい、One Sonyの世界観があっという間に崩壊してしまうなどということもないとは言えない。
たとえば、AI開発におけるアライアンスを組むなどしないことには、特定のプレーヤーが状況を一転させられるようなリスクは常に孕むことになる。
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