クアルコムは8月24日、同社のSoCであるSnapdragonを搭載したIoT製品開発促進の取り組みに対する記者説明会を開催した。説明会にはクアルコムCDMAテクノロジーズ副社長の須永 順子氏と、スマート端末向けOSやプラットフォームなどを提供するサンダーソフトジャパン代表取締役社長の今井 正徳氏が登壇した。
最初に登壇したクアルコムの須永氏は「モバイル業界とIoT業界には大きな違いがある」とコメント。Snapdragonが広く普及しているスマートフォンは端末ごとの販売数量が多いが、市場のIoTデバイスの数はスマートフォンより圧倒的に多く、かつデバイスごとの販売数量が少ない。さらに製品のライフサイクルもスマホの倍以上長いと須永氏がその違いを説明した。
須永氏は、クアルコムがこの市場の違いに対応するために販売体制を強化していると語る。「IoTデバイスには、スマホなどスマートデバイスの開発経験がない企業が多数参入している。これらの企業にSnaodragonを使ってもらいたい」(須永氏)。
クアルコムは各社と協業してドローンやカメラデバイス向けSoM(System on Module)を販売しており、その数は現在25以上とのこと。サンダーソフトのVR HMD SoM「TurboX VR SOM 288」はクアルコムの最新SoC、Snapdragon 835を搭載する。これらのSoMを製造メーカーとコンテンツメーカーに提供することで、早期開発の促進や製品発売前のコンテンツ開発の下地を整える体制。
続いて登壇したサンダーソフトジャパンの今井氏は同社のIoT市場への取り組みを解説した。今井氏は「爆発的に増えるIoTデバイスのデータを、すべてクラウドコンピューティングで処理することは不可能。エッジデバイス(端末)側である程度データ処理してクラウドにアップするニーズが高まってきている」と語る。
例として挙げたのは飛行機と自動運転車のデータなどだ。飛行機は飛行中に毎秒5GBのデータを生成する。自動運転車は毎秒1GBのデータを生成するほか、毎秒1GBのデータのリアルタイム処理も必要となる。デバイス数に関しても、Ciscoが2020年にIoTデバイス数が500億個に達すると予想するなど、トラフィックデータの急増とデバイス数の増加により、端末側でのデータ処理能力に関するニーズが高まっていると語る。
今井氏は「'80年代は集中処理、'90年はクライアントサーバーによる分散処理になってきた。2000年から2020年まではクラウドとIoT機器で処理する流れになってきている。そして数十億デバイスがつながる2020年以降は、クラウド+クラウドと連携するエッジコンピューティングの時代になる」とコメント。
「このような時代にSnapdragonの可能性は非常に高い。すべての機能がすぐ手に入る形で提供されている。エッジコンピューティングの時代では、CPUの処理性能だけでなくあらゆる処理性能が重要で、特にGPU性能が鍵になる」(今井氏)。
また、今井氏はIoTデバイス開発における課題にも言及した。「これまでの蓄積があるモバイル機器メーカーではなく、IoTの時代では家電メーカーなどが今までの製品とはまったく異なるシステムアーキテクチャーを開発しなければいけない。カメラなどの周辺機器をどう接続するのか、消費電力や温度はどう処理するのか、画像認識や音声認識などの分野をこれまで取り組んだことがないメーカーがどう開発していくかが課題」
さらに「IoTデバイスは画像処理や音声認識、モデムや各種プロトコルなどさまざまな技術の組み合わせで開発する必要がある」(今井氏)として、サンダーソフト社が提供するSnapdragonシリーズを活用したIoT向けSoM+ソフトウェアソリューション「TurboX」プラットフォームの意義を語る。IoTデバイスはそれぞれの製品が独自仕様となるため、製造メーカーは最初にサンダーソフト社のSoMをベースに試作機を開発し、サンダーソフト社は製品のハードウェアカスタマイズやソフトウェア開発を、試作版から量産製品立ち上げまでサポートする。
質疑応答でクアルコムの須永氏は「クアルコムはIoTで、モバイルコンピューティングとオートモーティブコンピューティング以外のすべての分野を狙う」とコメント。IoT分野へのSnapdragonの普及に意欲を見せた。
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