始まりは1冊のムックだった
ある日、アスキー 編集部へ来ると、デスクの上にこんなものが置かれていた。
『ゆるゆるハンドスピナーライフ』というムックである。この編集部はITを中心としたメディアである。あるいはグルメや、アニメといったサブ・カルチャーを扱うメディアである。ハンドスピナーは関係ないといえば関係ない。流行り物という意味では、関係なくもないのだが。
とにかく、このような業務に関係ないものをデスクに置かれるなんて、俺はみんなからなめられているに違いないと思い、帰ろうとしたが、帰る前にちょっとだけ覗いてみようと思った。
すると、ムックにはこんなことが書かれていた。
ハンドスピナーは、フロリダに住む発明家キャサリンヘッティンガーさんが若いころ、イスラエルに住む姉妹を訪ねたときに「少年たちが警察や人々に石を投げている」と聞き、遊ぶことで気持ちが落ち着くような、平和な玩具を考え始めたそうです。
1997年には特許を取得し、以後メーカーに掛け合ってハンドスピナーの商品かを進められるも断られて商品化には至らず、2005年の特許更新のタイミングで更新料の400ドルを払えず、特許は消滅となりました。以後、ハンドスピナーを作る企業が現れ(以下はムックで!)
なるほど、凄まじい勢いでネット上を席巻している玩具「ハンドスピナー」にはこのような歴史があったのか。関心した俺は取り憑かれたようにそのムックを読み進めた。
いつの間にか俺はハンドスピナーに詳しくなっていた
『ゆるゆるハンドスピナーライフ』には、実にさまざまなことが書いてあった。「そもそも、ハンドスピナーとは何か」「ハンドスピナーの部位名称」「持ち方」「回し方」そして「ハンドスピナーを回すべき場面」など。
そう、少年時代にゲームの攻略本や玩具の解説本を夢中で読みふけり、いつの間にかゲームや玩具に対して異常に詳しくなっているような、あの忘れられた高揚感、まさにそういった喜びである。いつのまにか俺はムックの隅々まで目を通し、もはやハンドスピナーに関して知らないことはないほど詳しくなっていた。
持ってなくても大丈夫。付いてくるから
しかし残念なことに、俺はハンドスピナーに異様に詳しくなったのにもかかわらず、ハンドスピナーを持っていなかった。これは非常に悲しいことだ。たとえば、欲しい車があるが、家族に気を遣って買えない。情報だけは、雑誌や友人の話で随分きいているので、異様に詳しい。しかしやはり購入には至れない。実際に乗ったことはないのに、詳しくなるばかりで、欲しい気持ちはどんどん募る、そんなバブル景気に見られたかもしれない、車が欲しくてたまらない人物の心境に似ているかもしれない。
「ハンドスピナーを回してみたい」その思いに駆られた俺の目に飛び込んできたのは、ひとつの黒い箱だった。その箱にはこう書いてあった。
『ゆるゆるハンドスピナーライフ付録 オリジナルハンドスピナー(1個)』
まさか、夢にまで見たハンドスピナーが付属していたというのか! なかば取り憑かれたように箱を開け、中を覗くと……。
何も入っていない! くそう、ぬか喜びさせやがって。
と思ったが、よく見るとこの箱は上下が分かれるようになっている。下の部位を開けてみると、そこには虹色に輝く、見たこともないような形状の美しいハンドスピナーが入っていた。興奮しすぎていたために箱が上下に分かれていることに気づかなかったのだ。単にムックのサイズに合わせるために箱がこういう形状になっていただけだった。
ハンドスピナーの達人になろう!
それからというもの、俺は寝ても覚めてもこの美しいハンドスピナーを回し続けた。このハンドスピナーは、本体外周にパチンコ玉が仕込まれていて、強い力で回すと重心が外側に寄り、勢いよく回転する仕組みになっている。
いつの間にか、俺はハンドスピナーの達人になっていた。ジャンピングキャッチ(回転しているハンドスピナーを投げ、空中でもう一度キャッチする技)も思いのままだ。いや、ハンドスピナーの達人になっていたというのは正しくない。このムックが俺をハンドスピナーの達人にしてくれたのだ。
このムックを読破してキミもハンドスピナー界の頂点を目指してみないか? 『ゆるゆるハンドスピナーライフ』はオリジナルのハンドスピナー付きで1296円! 全国の書店やネット書店で販売中だ!
Image from Amazon.co.jp |
ゆるゆるハンドスピナーライフ (エンターブレインムック) |
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