1チップ化した新世代DDFAは音質面でもメリットあり
PMA-60が搭載する、DDFAモジュールは最新世代の「CSRA6620」となる。DDFAはDirect Digital Feedback Amplifierという言葉が示すように、アナログ信号に変換せずデジタル信号のまま入力できるD級アンプであり、かつクローズループで(出力した信号をフィードバックして、入力する信号自体を補正することで)特性を改善できるのが特徴だ。
前世代のDDFAは、信号の増幅に使う「PWMモジュレーター」と、出力段の信号と理想的な信号の間の差分を取り、A/D変換してPWMモジュレーターに戻す「アナログフィードバック」(CSRA6600+CSRA6601)を別々のチップで構成していたが、CSRA6620ではこれを1チップ化した。
デジタル信号とアナログ信号を扱う回路を混載するのは難しいとのことだが、信号経路がシンプルとなるため、音質面でも有利になるそうだ。同時にデノンのようなセットメーカーは、基板設計に関わる開発工数を減らせ、パーツの吟味など別の部分にリソースを集中できる。以上が1チップ化によるメリットだ。
駆動力の高さを感じる
サウンドマネージャーのの山内慎一氏は、「PMA-50は初のDDFA搭載モデルであり、開発陣にとっても思い入れが深い製品だった」と話す。市場でも好評を博したが、「PMA-60はその後継機種だから、より一層力を入れた製品になっている」とする。加えて「PMA-50もできが良かったが、さらなる可能性や改善の余地はあると認識しており、それをPMA-60に反映させたいと考えた」と説明した。
PMA-50のあとに「DRA-100」や「DA-310」といったDDFA搭載機の開発が続いたこともあり、そこでもノウハウを蓄積している。さらにHi-Fiの2500シリーズ、1600シリーズの流れも取り入れ、コンデンサーや抵抗に同等のカスタム品を使っているそうだ(シャーシの制約があるため、部品は小型化している)。
山内氏によると、「仕上がった音は、PMA-50よりも分解能が出て、細かい音も聞こえ、よりクリアーになった」とのこと。繊細さや切れの良さを十分に実現できたことに加え、「空間表現なども洗練されている」と自信を示した。
ライブハウスで開催した説明会では、B&Wの804 D3を使ったデモが実施された。再生楽曲は、ボーカル主体でもビートがハッキリと出るものや、電子楽器を使った音楽が中心となった。特にPMA-60では、低域の再現性が十分にあり、ずしんと音が前に出てくる駆動力の高さを見せた。表現はスピーカーの傾向もあり、付き刺さるぐらいにシャープだった。同じ曲で比べることはできなかったが、弟機のPMA-30もブリッジ接続したD級アンプを使用することもあって駆動力が高く、ポテンシャルの高さを垣間見せた。
デノンでPMA-60/30のマーケティングを担当する志田氏は、再生環境の変化について指摘。PCでダウンロードしたハイレゾ音源の再生、Spotifyに代表されるインターネット経由の定額ストリーミング配信サービスなどが主流となってくる中、「Hi-Fiオーディオも柔軟なスタイルに応えるように変わってきている」とした。デザインシリーズは、コンパクトでどこにでも置きやすい製品を従来のスピーカーにつないでいくコンセプトで開発しているが、こうした流れに応えるものだ。
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