次に「3DMark」のスコアーを比較してみよう。テストは“Fire Strike”および“Time Spy”を選択した。
CPUのマルチスレッド性能が総合スコアーに加算されるベンチマークだが、スコアーの出方が異なっている。まずDirectX11(DX11)ベースのFire Strikeではコア数の多いRyzen ThreadripperがPhysicsテストで高いスコアーを稼いでいる一方、CombinedでRyzen 7同様にコア数の割にはスコアーが稼げていない(CombinedはCore i7-7700Kがスコアー効率が非常に良い)。DistributedとLocalは勝ち負けが入り乱れており、どちらが優れているか結論は出せない感じではある。
一方、DirectX12(DX12)ベースのTime Spyになると、これまでのテストで引き離していたCore i9-7900Xに一気に詰め寄られているどころか、CPUテストで抜かれてしまう。Localモードにすると一気にCPUスコアーが下がるあたりは、このテストではレイテンシーよりもメモリーの帯域が重要であることが読み取れる。
今度はマルチスレッドが性能に響くゲームとして「Watch Dogs 2」を試してみた。解像度はフルHDに固定し、画質“最大”と“高”の2種類をテスト。前者はGPUのボトルネックが発生するが、後者は発生しない条件になっている。
テストは「Fraps」を用いて一定のコースを移動した時のフレームレートを計測した。
元々高クロックかつコア数が多いCPUで有利なゲームであるため、Core i7/i9が安定して強い、という点は変わっていないがフレームレートの出方を見る限り、Ryzen 7よりもRyzen Threadripperの方が若干改善されている(価格が倍くらい違うのでそうでなくては困るのだが)。
ただこのゲームではGamingモードがプラスの要素ではなくなっている点に注目したい。特にGPUのボトルネックがない画質“高”設定ではGamingモードでコア数を絞るとRyzen 7に近づいていってしまう。LocalモードもDistributedモードに比べて微妙にフレームレートが出ない……などがあるので、ゲームだからといって無条件にGameモードやメモリーをLocalモードにするのは止めた方がよいだろう。
最後に「Sandra 2017」を使用してメモリー周りの特性を眺めてみる。ここでは時間の都合上1950Xのみの計測となる点をご容赦頂きたい。まずはメモリーのレイテンシーの差を計測したのが下のグラフだ。
DistributedでもLocalでもデータサイズが小さいうちはレイテンシーに差は出ないが、8MBを過ぎると急激に差がつき始める。16MB以降はほぼ横ばいとなり、Distributedモードでおよそ83.3ナノ秒、Localモードでおよそ62ナノ秒となった。
次にメモリー帯域をそれぞれのモードで計測したのが下のグラフだ。
Sandraのメモリー帯域テストの結果では、レイテンシーの小さいLocalモードの方が帯域が若干太くなっている。ただメモリーコントローラーをまたぐようなアクセスの場合は、このSandraでは計測しきれていないようだ。
最後のグラフはキャッシュとメモリーの帯域を比較したものだ。
Core i9-7900Xのキャッシュ周りの帯域は256kBまでは非常に高いものの、それ以降は急激に失速。1950XはCore i7-7700Kとi9-7900Xのほぼ中間的なポジションを維持しながらも、1MB以上の領域では優位に立っている。
また、DistributedとLocalモードでは帯域に大きな差は見られないこと、GameモードではほぼRyzen 7 1800Xに近い特性を示すが、メモリーチャンネルの違いからか微妙に性能が良くなっていることがわかる。
Ryzen ThreadripperはRyzenの持ち味をほぼそのままマルチチップ構成にしたCPUである、ということがこれまでのテストでわかったはずだ。
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