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音楽を丸裸にする「ルビーのイヤフォン」

始めと終わりで“運命”は変わる―― ナガオカ「R1」レビュー

2017年08月12日 17時00分更新

ハウジングに刻まれたナナメのスリットから美しい紅色が覗くナガオカ「R1」。現代のレコード文化を支えるメーカーが放つ、渾身の一本

“ルビーのイヤフォン”はレコード針由来

 7月に開催された秋葉原のポタフェスで音を聴いた時、そのあまりに広帯域で自然な音に僕は完全に虜になった。このイヤフォン、ハッキリ言ってスゴい。

 デジタルオーディオ世代にとってナガオカというメーカーはあまり耳馴染みがないものだろうか。高品質なレコード針を作り続けて数十年、今ではアナログオーディオを支える世界でも数少ない技術屋集団だ。レコードはビニールの円盤に刻まれた微細な振幅の溝を針でなぞり、そのわずかな動きをカートリッジのコイルで電気信号に変換するという、文字通り“アナログ”な方法で音を鳴らしている。
 ほんのささいな振動も出音に影響するため、カートリッジの方式からプレーヤーの台座、トーンアームの素材に至るまで、昔から正確な振動が得られるよう様々な試行錯誤が繰り返されてきた。針の素材もそのひとつで、金属はもちろん、より硬いダイヤモンドなどの鉱物が素材として採用された。
 イヤフォンの話題にレコードの技術を語ったのには訳がある。今回取り上げる「R1」最大の特徴は低音増強用の音響フィルターに人工ルビーを使ったことで、これがレコード針の生産加工技術に由来するものだ。硬度だけならばダイヤモンドの方が一段上だが、ナガオカによるとルビー材はパーツの共振を抑える効果があるという。それに鮮やかな紅色は見た目にも美しく、イヤフォンのアイコンとしてこの上ない素材だ。

秋葉原の「ポタフェス」で展示された人工ルビー塊と音響フィルター。見た目の美しさだけでなく、音を調整する機能が備わっている

 ドライバーは1磁極型シングルBAユニットで、再生周波数帯域は4~90kHz。かなり広い帯域を上から下までワンドライバーでまかなう点は見事だ。ハウジングはアルミのしっかりしたつくりで、カラーはシルバーとブラックの2色。ご丁寧にも音響フィルターが外から見えるようにスリットが入っているが、光にかざさないとルビーらしい紅色は出ず、あまり光のない場所では暗く見えるのが少し残念なところ。
 ケーブルは銀メッキされた4N銅と気合の入ったものだが、固定式のアンバランスで断線のリスクが高い上に、バランス駆動にも対応できない。価格がほぼ5万円というイマドキの高級イヤフォンなので、特別な理由がない限りはリケーブルに対応してもらいたかった。

充分な光の下では鮮やかな紅色を見せるルビーだが、R1に搭載された音響フィルターは頑張って光を当てないと黒ずんで見えるのが少々残念

ケーブルは銀メッキ仕様の4N線材という、なかなか気合の入ったもの。被覆もファブリックで、タッチノイズ低下も考えられたつくりだが、この価格帯ならば頑張ってリケーブルに対応してもらいたかった

 その他パッケージには、シリコンイヤーピースが2サイズとコンプライ製のLサイズフォームイヤーピースが1セット、耳垢フィルター交換キット、国産牛革のオリジナルポーチが付属する。化粧箱のつくりと相まって、実に高級な雰囲気を醸し出している。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色だ。

なかなか豪華なパッケージの外箱には、隅っこにハイレゾマーク。国産牛革のポーチはフラップやボタンなどは付いていないが、柔らかい手触りで高級感が漂う

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