8月1日、ソニーから独立して7月で3周年を迎えたVAIOが記者会見を開き、新たに社長に就任した吉田秀俊氏が経営方針を語りました。
海外営業畑を歩んできたという吉田氏は、プロの経営者であると同時に、自作PCを12台も組み立てるなどPCマニアである一面をのぞかせる場面もありました。
法人需要に応えるビジネスPC路線を行くVAIO
VAIOがソニーから独立後、3年間で大きく変わったのが法人向けの販売体制です。それまでVAIOといえば個人向けが中心で、仕事に使う場合も個人で買って持ち込んでいるイメージでした。しかしVAIOは保守やキッティングサービスを充実させ、本格的に法人市場に参入しています。
これは業界のトレンドを先取りした賢明な判断といえます。個人向けPCはスマホやタブレットの普及により買い替えサイクルが伸び、市場は縮小してきたのに対し、法人市場は堅調に推移しています。
製品ラインアップも大きく絞り込みました。ソニー時代には「VAIO Duo」シリーズなど斬新なデザインの2-in-1が印象的でしたが、Windows 8の失敗も逆風となり、なにかと時代を先取りしすぎた感がありました。
これに対して開発リソースが限られているVAIOは、選択と集中によりビジネス向けPCを中心に据え、2年目には黒字を達成しました。
製品づくりの方向性として吉田氏は、「機能を削って軽さを追求するよりも、有線LANなど法人が求めるものを搭載する」と例を挙げます。一方、赤羽氏は「顧客の希望で当面はクラムシェルが軸になるが、2-in-1が必要という声も聞いている」と補足しています。
一方で、スマートフォンについては現行のVAIO Phone Biz、VAIO Phone Aの販売を継続するとの説明にとどまり、積極的な事業展開への言及がなかったのは残念なところです。
フェーズ2に入ったVAIO、次の一手とは
今後の戦略として吉田社長が打ち出したのは、「VAIOブランドの価値を高めていく」というもの。ソニー時代からの技術や信頼に裏打ちされたブランドが最大の強みであるVAIOにとって、まさに正攻法といえます。
一方で、VAIOはいかにして今日のようなブランドを築き上げたのか、という視点も重要です。かつてのVAIOには、他のメーカーにはない斬新なフォームファクターや、一線を画したデザインを実現し、PCの境界線をどんどん押し広げていった時代がありました。
そこで気になるのは、PC事業の黒字化に成功したVAIOによる次の一手です。ヒントになるのは、6月のCOMPUTEXで発表された「Always Connected PC」のパートナーとして、VAIOの名前が挙がっていることです。
すでにVAIOはLTEを搭載した「S11」を発売しており、モバイルノートへのLTE通信機能の搭載について実績があるだけに、次世代の常時接続PCの開発にも期待したいところです。
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