トーンモバイルが7月25日に発表した新端末「TONE m17」では、「小学生までは夜10時以降スマホを使えなくする」機能など、メッセージ性の強さが見どころになっています。
MVNOも社会的責任を問われる時代に
「夜10時」制限が有効になると、スマホがロックされ、緊急通報しかできなくなります。アプリの利用時間を制限する機能はすでに存在するものの、トーンモバイルでは申し込み時の年齢と連動して設定するなど、「仕組み化」していることに特徴があります。
他にも子ども向けの機能として、GPSを利用した行動記録や、Web閲覧のフィルターでブロックした回数を親にレポートする機能も搭載。企業が従業員に配る会社スマホに勝るとも劣らない監視機能が盛り込まれています。
ただし、どこまで監視するかを決めるのはトーンモバイルではなく、あくまで家庭内で話し合うというスタンスは変わっていません。
実際のところ、ITリテラシーが高い家庭であれば、ファミリーアカウントやペアレンタルコントロールの機能を使いこなし、子どもと一緒にデジタル機器を楽しんでいることでしょう。
一方で、親世代であってもIT機器を使いこなせるとは限らないのが実情です。飲み込みが早い子どもはどんどん詳しくなっていくのに対し、親から見ると子どもが何をしているのか分からないという不安があります。
家庭内でスマホの使い方を話し合うといっても、親のリテラシーが不足していれば現実的ではありません。そこで仕組み化が効いてきます。アプリの利用時間を決める際には、専用の用紙に手書きで記入。それをカメラで読み取ると、スマホ内の設定に反映されるというのです。
こうした機能は、アイデア出しの段階では出やすいものの、実際のアプリとして落とし込むにはなかなか骨が折れるもの。どの家庭でも使いこなせる「ツール」を提供したいという、トーンモバイルの本気度が伝わってきます。
スマホの会社なのに、スマホを使えなくする機能を作るというのも興味深い点です。発表会で石田氏は、企業の社会的責任(CSR)に言及しています。子どもを対象としたCSR活動として、大手キャリアのスマホ教室などがありますが、今後はMVNOにも、社会と共存し事業を持続可能なものにしていく活動が期待されそうです。
スマホから逃れる「口実」が必要な時代に
こうした監視や機能制限がてんこ盛りのスマホを見ていると、「果たして子どもたちは、こんなスマホを使いたいのだろうか」という疑問も生まれてきます。もし筆者が小学生なら、制限を回避するためにあらゆる手を尽くしていたはずです。
ところが、実は子ども自身が制限を望んでいるというケースもあるようです。最近、学校生活でのコミュニケーションにはLINEが欠かせないものの、深夜までメッセージのやりとりが続き、スルーしたら仲間外れにされるため、子どもたちもうんざりしている場合があるとのこと。
しかし、スマホの利用を親や先生に禁止されているなど何らかの「口実」があれば、反応が遅れても深刻な事態にはならないようです。
まるで勤務時間外に電話に出ない口実を探す会社員のようですが、トーンモバイルの見守り機能は東京都推奨に認定されるなど、行政からも評価を得ています。
この機能が教育現場で注目されれば、今後はクラスや学校単位で「夜10時以降は使わない」といったルール作りを進めやすくなるはず。子どものスマホ利用を完全に禁止するのではなく、適切な付き合い方を学ばせる方向に進んでほしいと願います。
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