SIMを2枚同時待受可能な「DSDS」(Dual SIM Dual Standby)端末が増えています。片側のSIMは3G接続となってしまうため、VoLTEや高速な4Gデータ通信が利用できないのが残念なところですが、MNO+MVNOなんて組み合わせで2枚のSIMが利用できるのは便利です。
ところが、間もなく「4G+4G」の同時待受が可能な端末が登場します。
「DSDS」に変わる「DSDV」ではVoLTEの同時待受ができる
4Gを2回線同時待受できる端末は「DSDV」機と呼ばれます。DSDVはDual SIM Dual VoLTEの略で、2枚のSIMどちらの回線でも4Gのデータ通信とVoLTEによる音声通話をサポートします。
従来のDSDS機だと「どちらのSIMを3Gにするか」と悩む必要がありましたが、4G+4Gの2回線待受となることで、SIMや回線の組み合わせが自由自在になります。
DSDVのデモは2017年6月に上海で開催されたMWC上海2017で見てきました。展示されていた端末は、クアルコムとMediaTekのリファレンス機。それぞれSoCはSnapdargon 835とHelio X30を搭載していました。
クアルコムは最新のX20モデムからDSDVに対応していますが、現行のSnapdragon 835は一世代前のX16モデムを搭載。そのため現在発売されている「OnePlus 5」などのSnapdragon 835搭載スマートフォンは、DSDVには対応していません。
DSDVのメリットは高速な4Gが2回線同時待受ができることですが、高音質なVoLTEをどちらのSIMでも使えることも大きな利点になります。
既存のDSDS機では、3G側に入れたSIMでの通話は3Gの低品質な音声でしか利用できず、4G回線やVoLTEを使うには設定メニューからSIMを切り替える必要があるため面倒です。
農村などでの音声通話需要に応えるため、中国最大キャリアが急ピッチで準備
では、DSDV対応のスマートフォンはいつ、どの国で発売になるのでしょうか。実は、DSDV端末をメーカーに要求しているのは中国最大キャリア、中国移動(チャイナモバイル)なのです。
中国では、DSDS機は10年以上前から利用されています。4G+3Gだけではなく4G+2G機がいまでも現役ですが、片側のSIMは通話専用SIMを入れて使うユーザーも多くいます。それらを4G+4GのDSDV機に置き換えようと中国移動は考えているのです。
中国移動は2Gから3Gへ移行する際、独自のTD-SCDMA方式を採用しました。しかし、W-CDMA方式のように世界中には採用は広がらず、通信速度の高速化などの面で劣っていました。
その反省もあり、現在はTD-LTE方式での4Gの全国展開を急ピッチで進めています。4Gは高速通信向けだけではなく、地方や農村なども利用され、それらエリアでは音声通話しかしないようなユーザーであっても4G回線を利用することになります。その結果、VoLTEの全国展開も急ピッチで進んでいるのです。
DSDV機が普及すれば、2枚のSIMどちらも4G契約を利用してもらえます。また、たとえ片側のSIMがライバルの中国聯通(チャイナユニコム)や中国電信(チャイナテレコム)のものであっても、中国移動のSIMでも4G回線を使ってもらえ、データ通信収益を確保できるわけです。
ただし、DSDVはDSDA(Dual SIM Dual Active)ではないため、片側でVoLTE通話中には、もう片側の回線は一時的に停止状態となります。
SMSのIP化「RCS」の普及も進む可能性
そして、VoLTEの先にはRCS(Rich Communication Service)の展開も中国移動は視野に入れています。VoLTEがIPベースの音声通話なら、RCSはSMSなどのIP化と言えます。
システム標準でグループチャットや写真・動画の送受信など、SNSのようなことが利用できるのです。DSDVになれば2枚のSIMどちらも高速な4Gデータ通信が利用できますから、RSCの普及にもメリットは大きいでしょう。
MWC上海2017の中国移動ブースの説明員によると、DSDV対応スマートフォンは今年の第4四半期に登場予定とのこと。
どのメーカーから出てくるかはまだ不明ですが、クアルコムとMediaTekの最上位SoCを搭載した端末が対応することから、シャオミなど中国の新興メーカーの対応が早いかもしれません。また、サムスンもシェア奪回のために、対応機を出してくる可能性もあるでしょう。
一方、いまやイケイケのOPPO(オッポ)やVivo(ビボ)はSnapdragon 600系など、ミッド・ハイレンジのSoCを採用しています。このSoCにX20モデムが搭載されれば、両者からDSDV機が出てくるかもしれません。あるいは、DSDVに対応したHelio X30を搭載した「OPPO Vシリーズ」なんて製品が出てくる可能性もあるかもしれません。
日本へのDSDVの投入は、SIMフリー機として販売するメリットが現時点では少なく、キャリア側の導入も慎重になるでしょう。しかし、4G回線を同時待受できる利便性は高いので、SIMフリー機としての投入を願いたいものです。
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