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Broadwell-EにCore i7-7700K、Ryzen 7と大激突

Core i9-7900X&Core i7-7800Xレビュー、全コア4.5GHz OCで見えた新世界

2017年07月13日 17時15分更新

ゲーミング性能においては多コアが活きるアプリ次第

 次に「3DMark」のスコアーを比較しよう。3DMarkの総合スコアーは基本的にGPUパワーで大勢が決まるが、CPUを利用した物理演算も若干加味される。ここではFire StrikeとTime Spyを実行し、スコアー算定の元になった細かいテストごとのスコアーとあわせて比較する。

「3DMark」Fire Strikeのスコアー。

「3DMark」Time Spyのスコアー。

 FireStrikeではCPUを全力で回すPhysicsテストでCore i9-7900Xが飛び抜けているが、総合スコアーで見ると今ひとつ精彩を欠いている。むしろ、Core i7-7700Kや同じコアを使ったCore i7-7740Xの方が総合スコアーは優秀だ。Skylake-XがFire Stikeで伸び悩む原因はCombinedテストのスコアーが低いことだ。同じ10コアでもSkylake-XよりもBroadwell-Eのほうが良い結果を出しているということは、変化したキャッシュ構成が影響している可能性がある。

 プログラム側の最適化度がSkylake-Xに合わないという考えもできるが、CINEBENCH R15のように常に速いとは言えないようだ。しかし、DirectX12ベースのTime Spyで傾向は逆になる。同じグラフィック系ベンチマークであっても、プログラムの設計次第で優劣は簡単に変わる、という例として考えるとよいだろう。

 実際のPCゲームの中でもマルチスレッドの使い方が非常に優れている「Watch Dogs 2」でのパフォーマンスも比較しよう。画質は“最大”と“高”の2通りとし、解像度はフルHDに固定した。「Fraps」を利用してフィールド上の一定コースを移動した際のフレームレートを比較する。

「Watch Dogs 2」画質“最大”時のフレームレート。

「Watch Dogs 2」画質“高”時のフレームレート。

 今回使ったGPUはGeForce GTX 1080 FEだが、画質をプリセットで一番重い“最大”にするとGPUの処理がボトルネックになってしまう。そのため画質“最大”ではCPUの性能差は非常に小さくなってしまう。

 Core Xシリーズの性能差がよくわかるのは“高”に設定した時だ。シングル性能が奮わないRyzen X 1800Xはフレ―ムレートが伸びきらず、Core i7-6900K以上の多コアCPUではフレームレートがCore i7-7700Kよりも全体に高い。Core i7-7800Xは定格ではCore i7-7700Kとほぼ同等だが、全コア4.5GHzにOCすることでコア数の多さが活きてくる。TBM3.0の存在はSkylake-Xの性能を語る上で重要なポイントであることが再確認できた。

 最後に「SiSoft Sandra」の“キャッシュとメモリー”テストを実施し、キャッシュの帯域を比較してみた。このテストでは各CPUの定格状態でのみ比較する。

「SiSoft Sandra」によるキャッシュ&メモリーテストの結果。

 前述の通り、Skylake-XはL2キャッシュを大幅に増やす代わりにL3キャッシュを減らした。Broadwell-Eから比べるとL3キャッシュは半分近くに縮小されてしまったが、キャッシュの帯域はむしろSkylake-Xのほうが速い。L2キャッシュの約4分の1となる256KBあたりを境に効率がストンと落ちてしまうものの、小さなデータをキャッシュから拾ってくる処理は従来のCPUよりはるかに効率的になっていることがわかる。

OC時に荒ぶる消費電力と発熱

 以上のようにSkylake-Xは既存のKaby Lake-Sに対しマルチスレッド性能では圧倒的な差を見せつけた。TBM3.0非対応のCore i7-7800Xは定格だと今ひとつだが、少しOCするだけでハイエンドクラスにふさわしい動作をするようになった。

 だがOC後の消費電力や発熱はどうなるのだろうか? ラトックシステム「REX-BTWATTCH1」を使用し、システム起動10分後のアイドル時におけるシステム全体の消費電力と、「OCCT Perestroika 4.5.0」のCPU Linpackテスト(64ビット、全論理コア、AVX使用)を30分実行した際のピーク値を測定した。また、同時に各CPUのCPUパッケージ温度を「HWiNFO64」で追跡している。

システム全体の消費電力。

 前回ES版を使ったレビューでCore i9-7900Xの消費電力は大きいとしたが、製品版でも同じ傾向であることが確認できた。ただし、Broadwell-Eと比較すると、Skylake-Xはアイドル時の消費電力は低下している。マザーボードが違うのでこう言い切ってよいものか悩みどころだが……。

 だがそれ以上に驚くのはほんのわずかなOCでも消費電力が激増する点だ。今回コア電圧はAutoのままでテストしたが、Core i9-7900Xを全コア45倍動作にしただけでも消費電力は倍近くに激増している。これがSkylake-Xの設計上の宿命なのか、発売を前倒しにしたため調整不足なのかは不明だが、OC時のワットパフォーマンスに関して、Skylake-Xは非常に悪いと言わざるを得ない。しかしながら、このクラスになると、OC時のワットパフォーマンスがうんぬんという世界でもなく、ハイエンド&OC大好き諸氏にとってはノープロブレムな事象かもしれない。

CPUのパッケージ温度を追跡したもの。グラフ横軸は時間で、約25分間ぶんを追跡している。

 消費電力以上にショッキングなのはOC時のCPU温度だ。線が8本なので非常に見づらいが、ピーク時60℃あたりがBroadwell-E世代、70℃あたりがSkylake-X、80~85℃がKaby Lake-S及びKaby Lake-Xと綺麗に分かれている。クロックを上げたことで性能も獲得したが、発熱も10℃(定格使用時)前後上昇してしまっている。

 だが注目したいのはSkylake-XをOCするとCPUパッケージ温度は100℃を軽く超えてくるという点だ。ヒートスプレッダー中央温度なのでダイ温度はそれよりも微妙に低いが、Core i7-7800Xの場合最大104℃まで確認できた。HWiNFO64によるとSkylake-XのTjmaxは105℃らしいので限界温度まで1℃を残してサーマルスロットリングがかかっている状態だが、この温度上昇っぷりは凄まじい。Skylake-XをOCして使うには、水冷化はほぼ必須。ファンの回転数などもキッチリチューニングする必要があると言える。

 ちなみに、OCCTのCPU LinpackテストでAVXを使わなければ消費電力も温度もここまで高くならない。AVXを使うアプリがまだ少ない現状を考えれば、このテストはワーストケースにおける一例と捉えたほうがよさそうだ。ちなみに今回試した環境では、Skylake-XでAVXを使わないCPU Linpackテストを実行しようとしてもエラーで停止してしまった。

Core i7-7800Xを全コア4.5GHzにプチOCしOCCTのCPU Linpackテストを実行させたときの温度。Core #0と#5を除き100℃を超えているため、サーマルスロットリングのフラグも立っている。パッケージ温度はそれよりも数℃高くなるため、110℃という異常な高温を示している。

まとめ:自作erの腕試しとして楽しい新ハイエンドCPU

 以上でSkylake-Xを中心にした新Core Xシリーズの再レビューは終了だ。TBM3.0のある・なしでシングルスレッド性能が結構違ってくることが判明したが、Core Xはこれまでのインテル製エンスージアスト向けCPUが抱えていたマルチスレッド性能を重視するとシングルが疎かになるというジレンマをしっかりと解決してくれた。その点は多いに評価できる。

 しかし、OC時の発熱と温度についてはもう少し煮詰めるべきだったのではないか、と改めて考える。ピーキーなCPUをいかに飼い慣らすか、使い手の腕が試される製品だが、経験の浅いPCユーザーにはオススメしたくない。もちろん、定格で使うぶんには消費電力もCPU温度も何ら問題ないが、X299搭載マザーボードは最安でも3.5万円のハイエンドソリューションなのだから、がっちり水冷で冷やしながらプチOCして最強のPC環境として運用したいところ。つまり、結論としては金に糸目をつけず最高のものが欲しい上級者向けのCPUが新Core Xシリーズではないだろうか。

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