第216回
Broadwell-EにCore i7-7700K、Ryzen 7と大激突
Core i9-7900X&Core i7-7800Xレビュー、全コア4.5GHz OCで見えた新世界
インテルの新しいエンスージアスト向けCPU「Core X」シリーズの第1弾である「Core i9-7900X」、「Core i7-7820X」、「Core i7-7800X」の販売が7月14日から始まる。この3製品は開発コード“Skylake-X”と呼ばれていたもので、今年初頭の段階ではSkylake-Xの投入はもう少し先と予想されていたが発売が前倒しになった。この前倒しの理由は安価でもコア数が多くマルチスレッド性能が高いことで話題となった、AMDの放った黒船こと「Ryzen 7」シリーズの登場が影響していることは想像に難くない。
前回の記事は最上位であるCore i9-7900Xと、後日発売予定のKaby Lake-Xこと「Core i7-7740X」をテストしたが、Core i9-7900Xは初期に製造されたエンジニアリングサンプル(ES)版ということで、BIOS上の表記(Core i7と認識される)が間違っていた。
しかし、今回は製品版のCore i9-7900Xを入手。さらにES版ではあるが一番安い6コア/12スレッドモデルである「Core i7-7800X」も触る機会ができた。目下のライバルであるRyzen 7 1800X(真のライバルはThreadripperなのだが……)との比較を含め、もう一度Core Xシリーズの評価をしてみたい。
Broadwell-Eから何が変わったかまずはおさらい
では改めて今回登場したCore Xシリーズのスペックを眺めてみよう。比較用として前世代、つまりBroadwell-E世代のCore Xシリーズと、メインストリームを担うKaby Lake-S世代である第7世代CoreシリーズのK付きモデルのスペックも掲載した。なお、新しいCore XシリーズはCPUソケットにLGA2066を採用しているため、旧世代のBroadwell-E(LGA2011-v3)とは物理レベルで互換性がない。ちなみに価格は新Core Xシリーズの予約価格、旧世代CPUに関しては初値を掲載している。
7月14日に発売となるSkylake-X世代の3製品における一番の見どころは、1世代前の製品に比べ、価格が約半額近くまで下がっていることだろう。特に(現時点での)最上位であるCore i9-7900XとCore i7-6950Xの価格差が凄まじい。
スペック面では今回発売されたSkylake-Xの3モデルすべてについてターボブースト発動時の最大クロックは4GHzを超えていること、さらに最下位のCore i7-7800X以外は“改良版”TBM3.0(Intel Turbo Boost Max Technology 3.0)に対応しており、「最大2コア」が4.5GHzにブーストされる。これまで消費電力などの関係でコア数が増えてもクロックが低い製品が多かったが、今回はかなりギリギリを攻めている。メモリーもCore i7-7800X以外はDDR4-2666までのサポートになっている点からも、物理8コア以上の製品のパフォーマンスアップにかなり注力していることがわかる。
そしてもうひとつ注視したいのはL3キャッシュの搭載量が大きく減っていることだ。Broadwell-Eではコアあたり2.5MBだったものが、Skylake-Xでは1.375MBになってしまった。だがそのぶんL2キャッシュを従来(256KB/コア)の4倍である1MB/コアに増やしている。従来のCore XシリーズとメインストリームのCoreプロセッサーにおけるCPUの基本構成はほぼ共通でコア数でスケールしたものというのがこれまでの常識だったが、Skylake-Xでは大きく変化させたことになる。
Skylake-XではCPUの内部構造レベルで変更が施された一方、Kaby Lake-XはKaby Lake-SをそのままLGA2066に移し替えたような製品となっている。動作クロックが微増したこととCPU内蔵GPUが省かれていること、TDPが91Wから112Wに増えたという違いはあるが、キャッシュ構造やPCI Expressのレーン数はKaby Lake-Sとまったく同じだ。まさにオーバークロック(以下、OC)することを前提にしたCPUと言えるだろう。
今更だが新Core Xシリーズに合わせてリリースされた、Intel X299チップセット(PCH)についても軽くまとめておきたい。1世代前であるX99から一気に(X199を飛び越えて)X299までジャンプアップしたわけだが、内容的にはインテル200シリーズとほぼ同じと言ってよい。CPUとPCH間の接続バスがPCI Express 3.0相当のDMI3.0(従来はPCI Express 2.0ベースのDMI2.0)にグレードアップ。さらにPCH側から引き出されるPCI Expressバスも3.0仕様(従来は2.0止まり)、最大24レーンぶん引き出せる。
ストレージまわりもZ270よろしく、OptaneメモリーやNVMeを使ったRAIDアレイの構築(Intel Rapid Storage Technology for PCI Express Storage)にも対応する。Core Xシリーズ向けチップセットはメインストリームよりもやや遅れ気味であることが多かったが、今回のX299でメインストリームに追いついたわけだ。あるいは、VROCこと“Virtual RAID On CPU”機能があるぶん、微妙に抜いたとも言える。
Skylake-Xはクアッドチャンネルメモリー&PCI Express×28レーン以上なのに対し、Kaby Lake-Xはデュアルチャンネルメモリー&PCI Express×16レーンのみという仕様の違いを吸収するため、X299搭載マザーボードは組み合わせるCPUによって使えるメモリースロットやPCI Expressスロットの帯域が変わる。PCI Expressスロットの帯域についてはマザーボードの設計も絡むので割愛するが、メモリースロットに関してはSkylake-X装着時はCPUの両側にある合計8本のスロットが使えるが、Kaby Lake-X装着時は片側4本しか使えないようになる。
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