ひと口にゲーマー向けゲーミングノートPCといっても、対象ユーザーによって最適解は異なる。ライトで持ち運び重視ならGTX 1050あたりを搭載した薄型モデルが最適だろうし、e-Sportsガチ勢なら高リフレッシュレート液晶を搭載したハイパワーモデルが良い。では、究極の映像美を堪能したいコアゲーマーは一体どんなゲーミングノートPCを選ぶべきか?
その答えのひとつがマウスコンピューターが先日発売したばかりのゲーミングノートPC「NEXTGEAR-NOTE i71120」シリーズだ。CPUはデスクトップ用の第7世代Core i7-7700K、グラフィックスにGeForce GTX 1080の2-Way SLI構成、さらに17インチ4K(3840×2160ドット)のG-SYNC液晶を備えた超弩級のスペックだ。型番によりメモリーやストレージ構成の違いはあるがCPU、GPU、液晶の仕様は共通となっている。最上位であるプラチナモデルは、税別71万9800円ととても高額ではあるが、NVMe対応のM.2接続の1TB SSDを3つ備え、かつ2TB HDD×2をRAID 0の4TBとして運用できる、価格に納得の超ド級のスペックとなっている。
今回はそのNEXTGEAR-NOTE i71120シリーズの中から、64GBものDDR4メモリーと、1TBのSSD(M.2 SATA)と2TB HDDを搭載したゴールドモデル「NEXTGEAR-NOTE i71120GA1」をレビューしたい。
ただ今回お借りした個体は試作機のため、ストレージ構成が1TB×2 M.2 SATA SSDで、HDDは非搭載となっている。ゲーミング性能は十分チェックできるが、ベンチマークの結果などは参考値と考えてもらいたい。直販価格は税別55万9800円と、決して万人にオススメできる価格ではないが、これがゲーマーにとってどんな世界を見せてくれるのかチェックしてみたい。
重厚なボディーに豊富なインターフェース
まずは外観や設計面からチェックしてみよう。本機は17インチ4K液晶を搭載した据え置き前提のデザインゆえに、本体のつくりも厚さ最大52.5ミリ、重量約5.5キロと極めて重厚だ。だがそれだけに搭載インターフェースもUSB3.0が5系統、USB Type-C(Tunderbolt3もしくはUSB3.1として動作)が2系統、さらに外部ディスプレー出力も3系統(HDMIが1基、ミニDisplayPortが2基)、さらに802.11ac(433Mbps)の無線LANとデュアル有線LANまで内蔵している。下手なデスクトップ機では太刀打ちできない豊富なインターフェースが本機の持ち味だ。
バッテリーは約2.3時間動作(公称)と謳っているが、これはあくまでゲームをしない場合の最大値。家やオフィスの中で短距離を移動する際に電源を切らなくて済む、程度の装備と考えるべきだろう。
本機の液晶はIPS方式、ノングレアの4K G-SYNC液晶であるため、ティアリングのない滑らかなゲーム画面が堪能できる。デスクトップの解像度は4KだがGUI倍率は250%なので情報量より視認性を重視した設定になっているが、4K未満で縦横比16:9の解像度でWQHDは選べず、4Kの下はフルHDとなる点に注意。その代わり2048×1536ドットや1920×1200ドットといった縦横比4:3や16:10の変則解像度が選択可能だがこれら変則解像度は画面の左右に黒帯が出るため、あえて選ぶメリットはない。この解像度設定はゲーム側でも共通なので、ゲームも4KかフルHDで選ぶことになるだろう。
この独特な仕様は本機特有のものではなく、SLIノートでは一般的に見られるものだ。ただゲームの描画が4Kでは重いがフルHDでは解像感が足りないという場合はGeForceドライバー側のDSRを有効にして擬似的にWQHD相当にする、というテクニックを使うことになる。
本機はパフォーマンスに全振りした設計を採用したぶん、本体サイズと重量が犠牲になっており、電源周りもかなり大がかりだ。全力を出すには出力330Wの大型ACアダプターを2基並列に接続して本体に供給する必要があるため、アダプターの置き場所(熱も出るので程々に風の通る場所に置きたい)に注意したい。とはいえ、GTX 1080をSLIで搭載し、4K液晶ディスプレーをこのスペースで実現しているのはスゴイ。
ただACアダプター1基でも(低負荷なら)充電できるし、ゲームも起動する。ただバッテリー動作時とACアダプター1基の時は強制的にパフォーマンスが落ちるようになっているため、フルパワーを出すには必ず両方のACアダプターから給電する必要があるのだ。
基本性能のチェック
実ゲームでのパフォーマンスを検証する前に、まずは一般的なベンチマークによるパフォーマンスをチェックしてみよう。CPUにデスクトップ用のCore i7-7700Kを搭載していることが本機の売りではあるが、それ以上に2基搭載されているGTX 1080は定格よりも若干OCされたものである、という点に多いに期待が高まる。空冷なので性能がどこまで伸びるかが見ものだが、ノートPCとしては最高レベルのハードで固めているといえるだろう。
なお、本機に同梱されるツールを使えばCPUやGPUのOCもできる(もちろん自己責任)が、今回は全て定格動作で運用している。さらに前述の通り、今回テストした固体は本来の仕様とストレージ構成が異なる。具体的にはNVMeがSATAになっているため、本来の製品版よりも若干スコアーが低く出ている可能性に留意頂きたい。
まずはCPUのパフォーマンスを「CINEBENCH R15」でチェックしよう。最大4.5GHz、4コア8スレッドのCPUなので高スコアーが期待できそうだ。
ノートPCで、マルチCPUで957ポイント、シングルで189ポイントというスコアーは単純に凄い。もちろん今デスクトップPC界隈で注目の物理8コアや10コアCPUならもっとスコアーは出せるが、ノート型という設計上の制約の中で性能を狙うのであれば、本機は十分驚くに値するパフォーマンスを備えている。
続いては「3DMark」でGPUの描画性能をチェックしよう。本機は出荷時点でSLIが有効になっているが、このテストではあえてSLIを解除し、GTX 1080を片肺運転させた状態とも比較する。SLIがどの程度の効果があるかわかるはずだ。
実施したテストはフルHDを想定した“Fire Strike”、4Kを想定した“Fire Strike Ultra”、DX12ベースの“Time Spy”の3つ。SLIの方がしっかりスコアーが伸びているが、2倍とまでは行かないのはマルチGPU技術の宿命といえる。ただFire StrikeのスコアーがSLI時で2万ポイントを超えているのは単純に驚いてよい結果だ。
基本性能最後のテストとして、先日リリースされたばかりの「PCMark10」の結果も掲載しておく。出たばかりなのでスコアーの優劣が分かりにくいと思うが、いずれ様々な記事でも使われていくであろうテストなので参考までにスコアーを掲載しておきたい。テストは全部のテストを実行する“Extended”を実施した。
GTX 1080のSLI構成が効いているのか、Gamingのスコアーが極めて高い。Gamingテストは3DMarkのFire Strikeをほぼそのまま使用しているが、散々システムをフル稼働させた最後のテストであることと、画面表示条件(こちらはウインドーモード、3DMarkはフルスクリーン)などが違うため若干スコアーが落ちている。それでも18000ポイント以上は十分高い。その他のスコアーについてもCore i7-7700Kの性能のおかげで十分に高い。一言で言うなら“ゲームでも仕事でも速い”結果になっている。
さまざまな人気ゲームで性能をチェック
それではゲーム中心のベンチマークといこう。最初は「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチを使用する。画質は一番高い“最高品質”を使用した。本機のスペックだとスコアーだけでは凄さが伝わりにくいため、ベンチ中の平均fpsでも比較する。解像度はフルHDまたは4K(以降同様)とした。
さすがハイパワーパーツを厳選したマシンだけあって、4K&最高品質でもスコアーは1万ポイントを軽く超える。平均fpsを見ても4Kで76fps以上。途中F.A.T.Eのシーンでは少々重くなる瞬間もみられたが、キャラの多い街中のシーンでもフレームレートは安定していた。今回テストする関係で垂直同期もG-SYNCも無効にしていしるが、どちらも有効にすればカクつき感のない極上のゲーム環境になるだろう。
続いては「Overwatch」で検証してみたい。テストは「Fraps」を用い、“King's Row”におけるBotマッチ中のフレームレートを計測した。画質は一番高い“エピック”、レンダー・スケールは100%に固定している。
比較的軽めのゲームであることと、さらにSLIへの最適化が非常に良いタイトルなので、一番重い画質設定であっても画面描画は全く支障が無い。それどころか4Kであっても本機搭載液晶のリフレッシュレート以上のパフォーマンスが出せるのはまさに驚きだ。e-Sportsガチ勢なら本機に高リフレッシュレート液晶を外付けするのもアリかもしれない(リフレッシュレートより画質という本機のコンセプトからは外れるが……)。
もうひとつ対戦志向の強いアクションゲームとして「For Honor」も試してみた。画質は一番高い“超高”と、その1段下の“高”設定とし、ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測した。
Overwatchよりも描画負荷が高いため、4K&超高設定だと60fpsの維持は難しい。だが画質を高設定に落とすことで60fpsキープが可能になった。SLIのパワーを画質に全振りし、ゲームを超高画質で遊びたいゲーマーにとっては、本機は極めて満足度の高い製品といえるだろう。
最後につい最近SLI対応を果たしたPUBGこと「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」も試してみた。画質は“ウルトラ”とし、プレイヤーが集合する島(ロビー)でのフレームレートを「Fraps」で測定した。3回計測し平均fpsが一番高かった回の結果を採用しているが、PUBGプレイヤーならご存じの通りこのゲームは最適化が粗いため、ここで示したフレームレートが絶対出るという保証をするものではない。参考程度にこのような結果が出た時があった、という感じでご覧頂きたい。
PUBGは開発中ゲームである、ということを承知の上で書けば、このゲームは解像度を欲張らずにフルHD&ウルトラ設定で楽しむのが良さそうだ。
NEXTGEAR-NOTE i71120PA1ならVRも快適に遊べそうだ……ということでVR関連のテストも実施てみたい。まずは「VRMark」のスコアーを計測してみた。テストはOrangeとBlueの両方を実施する。
現行VRシステムへの適合性を見るのはOrange Roomのスコアーだが、1万ポイント以上と言われてもピンと来ないはず。そこで平均fpsもグラフに入れておいたが、Orange RoomならVRMarkの目標fps(110fps)の2倍近いフレームレートが出ている。これは大抵のVRゲームなら全く問題なくプレイできることを示しているのだ。
VRMarkのスコアーだけでは物足らないので、HTCのVIVE環境で実際のVRゲームを遊んだ時のパフォーマンスを見てみよう。まずはAtariの古典ゲームをVRでリブートさせた「BattleZone」だ。敵が1~3体出てくるシーンにおけるフレームタイムをVIVE内蔵の機能でモニタリングしたのが下のグラフ。特に下のグラフの青い領域が縦軸の11(単位ミリ秒)を超えなければ、これはVIVEが要求する90fpsを余裕でクリアーしていることを意味する。
画質を一番高く設定したためGPUのフレームタイムは目測で9~10ミリ秒あたりとやや長めだが、VIVEの要求仕様は見事クリアーしている。VRに挑戦したいが大型デスクトップ機は導入したくないと考えているなら、本機はちょうどよい選択肢ではなかろうか。
熱や騒音はどの程度か?
NEXTGEAR-NOTE i71120GA1のパワーは素晴らしいが、ハイパワーノートPCは熱や騒音が気になるところ。そこで「For Honor」を30分プレイ状態で放置した時のCPUパッケージ温度およびGPU温度を「HWiNFO64」で追跡したほか、液晶の正面から30センチの場所に騒音計「AR814」のマイクを置いて計測してみた。グラフ中“アイドル時”とはシステム起動10分後、“高負荷時”とはFor Honorプレイ開始から30分後の値である。室温は28℃、暗騒音は約35.7dBAである。
ハイパワーなGPUをOCして運用しているだけあって、ゲーム中のGPU温度は80℃を超える。だがこの温度ならGTX 1080のFounders Editionと大差ないレベルだ。肉厚とはいえノートPCの限られたボディーの中でここまで安定させている点はまさに驚き。CPUも75℃を中心に上下している印象だが、これまた実用上は問題ない。ただ酷暑のシーズンに備え冷却台はあった方がよいかもしれない。
ただひとつ気になったのはファンノイズの大きさだ。アイドル時はファンの音が小さく聞こえる程度だが、SLI状態でフル回転させるとかなり大きな音を立てる。この状態でもしっかりゲームサウンドを聞くには、ヘッドセットの使用をオススメしたい。特にPUBGのようなゲームでは、本機内蔵スピーカーでは足音がかき消されてしまうだろう。
まとめ:重量級ゲームでもVRでも怖くない
以上でNEXTGEAR-NOTE i71120GA1のレビューは終了だ。据え置きノートはちょっと……と思っていた人も、ゲームの快適さを目の当たりにすれば、思わず納得させられてしまう程のパフォーマンスを見せてくれるだろう。特に4K G-SYNC液晶をフルに使ったゲーム画面は非常に美しい。税別56万円弱という値段なので誰にでもお勧めできる訳ではないが、金に糸目をつけず最高のゲーミング環境をノートPCで整えたいなら、まずこの製品を検討してみてはどうだろうか。
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