時計メーカーとしてのこだわり。カシオ計算機が2016年3月に発売した、同社初のスマートウオッチ「WSD-F10」から約1年。第2弾の「WSD-F20」は、同社のアウトドアギアのブランド「PRO TREK(プロ トレック)」を冠して登場した。2層式液晶(カラー+モノクロ)の採用は従来と変わらないが、OSはAndroid Wear 2.0にバージョンアップ。そして今回の最大の特徴は、GPS機能を内蔵したことだ。スマートフォンと連携して情報を取得し表示するスマートウオッチなら、GPS情報ももちろん利用可能。しかし、苦労してでもGPSを搭載することにこだわったのは、「アウトドアウオッチ」としてのカシオの思いが詰まったものだった。オフラインで地図表示にも対応させたF20について、開発にあたった3名の方にお話を伺い、カシオが目指す真のスマートウオッチの姿が垣間見えた。
時計メーカーとしてのスマートウオッチのありかた
昨年第1弾のスマートウオッチWSD-F10を開発するにあたり、市場の概況や全体を検討して「アウトドア」というひとつの着眼点にたどり着いたという。
「当時のスマートウオッチを取り巻く市場は、『それってスマホでいいよね』という時期だったと思います。何でもできそうでも、何に使ったらいいのか良くわからない。そのような市場状況の中、カシオとしてスマートウオッチを出すのであれば、目的や用途がしっかりしたものとして出したい。そこで考えたのが、スマートフォンでは見たくても見られない、使いづらいというシーンでした。その着眼点でたどり着いた、1つの切り口としてアウトドアがあると。スマートフォンで地図を見たり情報を見たり、SNSをやったり。アウトドアだと、水辺で落としてしまったり濡れてしまったりするところでは、なかなかスマートフォンは取り出せません。登山やサイクリング、スキーなどでグローブをはめている時には、タッチ操作もできない。そのような、スマートフォンを見たくても見にくいという環境の中で、スマートフォンはリュックやザックの中に入れておいて、手元で欲しい情報をサッと見る 。そういった使い方がスマートウオッチの用途提案になるのではないかと考えました。そこで開発に着手したのがF10になります」(坂田氏)。
開発にあたっては、腕時計メーカーとして譲れない部分があったそうだ。「スマートウオッチは“時計”の形をしていますが、時刻が常時表示されない製品が結構あったんですね。もちろん、載せているハードウェアやシステムの都合で常時表示させてしまうと電池がなくなってしまうため、見たい時だけ時刻を表示するという手段を取っている商品もあるでしょう。でも我々時計メーカーから見ると、それって“時計”としてどうなのよ、という思いがありました。やっぱり時計って見たい時に見られるのはもちろん、ちら見とか、ふっと目を配したときでも、常に時刻がわかるという、それは100年ぐらいある腕時計の歴史で不変の価値として提供されてきましたが、その基本価値がスマートになったから失われるのはありえないと。そこも我々として考えるスマートという切り口のひとつになりました」(坂田氏)。
最近は時刻をスマートフォンで確認する人も増えてきているが、腕時計の市場的には横ばいで、新たなスマートウオッチの到来により、むしろ市場は膨らんでいるという。「いろんなメーカーさんが参入することで、切磋琢磨していくことは非常に歓迎すべきことです。その中で、カシオとしてはしっかり価値を提供できると思っています」(水野氏)。
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