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医療材料の在庫管理・発注業務とはもうサヨウナラ?

2017年07月24日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報をお届けします。

第19回テーマ:電子カルテ x サプライチェーン

 日々消耗されていく医療材料の調達は、ほとんどの医療機関にとって運営のなかで⽋かせない業務だが、医療分野に応じてそれぞれ固有の医薬品、医療材料、医療機器などがあるため、その業務範囲は多岐にわたる。

 煩雑になりがちな物品管理に、クラウド型電子カルテによる医療データ活用が一役買いそうだが、具体的にどのような効果をもたらすのだろうか。

 ここからはクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


医療材料の使用データを開示することで効率的な経営を実現

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 医療機関で処方される薬剤は、メーカーごとの違いまで考慮すると、およそ2万種類あります。また、保険で償還が認められている医療材料は約30万種類ほどあり、保険償還の認められていない物を含めた医療機器・医療材料の種類は100万を超えるとされています。

 もちろん、1つの医療機関が扱っている薬剤や医療材料の数はこれよりもだいぶ少なくなりますが、膨大な数の薬剤と医療材料を毎日管理し続けなければならない状況にあることに変わりはありません。毎日の使用量を数え、定期的に在庫を確認し、発注する個数を計算し、卸業者などに発注をかけることになります。

 第17回で「電子カルテのデータをマネジメントに活用する」という記事を書きましたが、薬剤や医療材料のサプライチェーン管理においても、電子カルテのデータが活躍するようになると考えています。

 まず、発注業務について考えてみます。保険で償還される薬剤や材料は、電子カルテのデータから「実使用量」をカウントすることができます。ガーゼなどの保険で償還されない材料については、疾患別患者数などの標準的な使用量(例:創傷処置にはイソジン◯ml、ガーゼ◯枚など)を設定することにより、使用量を「推定」することができます。

 ここから導き出されたデータに基づいて、薬剤や医療材料の「使用量」を計算し、あらかじめ設定した定数から引き算をした「理論在庫数」が一定の値を下回った場合は発注をかける仕組みを構築することで、人力による在庫確認の作業が大幅に削減されます。

 そして、クラウド時代のクリニックの在庫管理は、さらに進んだ形になることが予想されます。薬剤や医療材料の使用データや在庫データを卸業者に開示することで、医療機関側が発注をかけなくても、卸会社が足りないぶんを自動的に補充してくれるようになるでしょう。在庫管理業務そのものを外注してしまうイメージです。

 臨床検査会社とのやり取りにおいても、同様の仕組みが適用可能です。検査のオーダー状況をリアルタイムで検査会社に開示することで、検査会社はクリニックごとの検体本数を常時把握できるようになります。検体本数やその内容(至急か否かなど)をあらかじめ確認した上で検体回収にまわることができるため、検査会社の業務も効率化されます。将来的には、クリニックが公開した検査オーダーを複数の検査会社が取り合うなどということも可能になるかもしれません。

 卸会社や検査会社など、院外のステークホルダーにもデータを積極的に開示することによって、より効率的な経営を実現できるようになってきています。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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